130 / 141
第四章
41.これから一週間*真奈
しおりを挟む
41.これから一週間*真奈
それからどうなったかというと。
俊輔の部屋じゃなくて、広い部屋で、大きなテーブルを囲んで三人で食事をすることになってしまったのだった。
オレだけは俊輔の部屋で良いのにと思ったんだけど、なんか、瀬戸さんが一緒でいいよと、強く勧めたらしい。……なぜ?
オレを呼びに来た時の、西条さんは、なんだかとっても、お気の毒に、と思ってるような雰囲気で。オレは、話を聞く前から、一緒に食べることになるんだろうなと、察した。
で、今。すごく重そうな木のテーブルで、オレと俊輔が隣、瀬戸さんが向かいに座ってる。隣と言っても、一メートル位は離れてるけど。西条さんが、前菜を、運んで目の前に置いてくれる。
……コースみたい……すごくゆっくり食べることになるんだろうかと、かなりうんざりで。もう、流し込むように食べて、課題をやりにいくと、言いたいけど。次の料理がなかなか出て来なそうだ……。
「いただきます」
手を合わせて、前菜を一口。……いつもどおり、おいしい、ここの料理を作ってくれてる人は、おいしくて、すごい。今日も、おいしいんだけど。息がつまりそう。
瀬戸さんは、食事をしながら、目の前に並んでいるオレと俊輔をじっと見てるし。どうしていたらいいのかもう、ほんと……。
この部屋に来るまでの途中て、西条さんが『色々若が答えると思うので、真奈さんは、それに合わせてくれたらいいと思いますよ」と言ってくれて、それを、ただひたすら、信じてるのだけど。
「なあ、真奈くん?」
「はい?」
……いきなり話しかけられたけど。……泣きたい。
「俊輔の部屋で暮らしてるっていうのは、今俊輔に聞いた。自分の意志だって、俊輔は言ってるけど、本当?」
「…………」
オレは、すぐ、頷いた。
……少し前は違ったけど、今ここにいるのは、オレが、選んだ、から。
オレが頷くのを見て、ああ、よかった、と瀬戸さんが笑う。よかった?と首を傾げたら、瀬戸さんはクスクス笑い出した。
「意志じゃ無かったら、犯罪かと思うとこだったから」
良い笑顔で言われたセリフに、曖昧に首を振る。
……帰りたい。俊輔の部屋に。うう。
「知り合って色々あって、今は、真奈も了承して住んでるって言ったろ」
俊輔の言葉に、瀬戸さんは、まあそれはよかった、と笑う。
「ここから大学も通ってるの?」
「はい」
余計なことは言わないように。即答してく。
「家族は?」
「母が亡くなって、一人暮らしだったので」
「真奈くんて、ベータだよね?」
「あ、はい」
……来た。……オメガじゃないか確認されたんだよな。
まあ、絶対違うのは見た感じで分かると思うから、これは良かったかな。
変な関係だとは思われなくて、済むかも。
「色々あってって、何?」
瀬戸さんは、その質問を俊輔に向けた。俊輔は瀬戸さんを見つめ返して「それは本当に色々だから、言わない」とバッサリ。答える気は無いみたい。
「ふうん……?」
面白そうに笑った瀬戸さんは、オレに視線を戻してきて、じっと見つめてくる。
「何があった、っていうのも知りたいけど、それよりもさ。俊輔が、誰かを自分の部屋に置いてるっていうのが……ちょっと信じがたいんだよね」
「――……」
「そういうの、絶対嫌な奴だから。オレ、お前は、結婚しても絶対別々に寝るタイプだと思ってたし」
……どんなタイプ……。なんか一瞬、可笑しく思えたけど。
とても、笑える雰囲気ではなかった。
早くここから、出たい……と思った瞬間。
瀬戸さんが、ぱっと俊輔に視線を向けた。
「あ、そうだ。俊輔。一週間、泊めてもらっていい?」
「は? 何で」
俊輔の声は明らかに嫌そうで。食事を置いてくれていた西条さんも、ちらっと瀬戸さんを見たし。で、オレは、なんだか何も考えられなってる。
「今、マンションの隣で工事しててさ、一週間ちょい、かかるそうなんだけど、うるさくてさ。工事が終わったら、すぐ帰るから」
「塾に近いホテルとかに泊まればいいだろ」
「こんな機会ないんだし、一週間くらい、いとこ同士、仲良くやるのもいいだろ?」
「――――……」
「たまには酒なんかも飲みたいし」
俊輔が眉を顰めた感じで、でもそれ以上何も言わないし、西条さんも、普通の顔で、配膳を始めたし。
……これは、決まったんだろうなぁ。と、ぼんやりと考える。
良く分かんないけど。仲は、悪くはなさそうだし。結構俊輔のこと、分かってそうな感じはする人だし。絶対帰れ、と言わないんだから、そういうことだよね。
……まあ、オレは来週もきっと、レポートやってるし。
関係ないかな、と。思いながら。
でもなんとなく。
……俊輔とオレの、出会い方とか、そういうのを、何も言ってはいないので、知られない方がいいんだよなあと思うと。
ちょっと憂鬱になってしまう。だって、この人。
……なんか、頭良さそうで。勘が鋭そうで。怖いし。
よく分かんないけど。とにかく、頑張るしかない。
そもそも今の関係だけなら……ただの居候……? だしなぁ。知られて困ることは、ないのかな。と思い、つい首を傾げてしまう。
(2024/9/6)
それからどうなったかというと。
俊輔の部屋じゃなくて、広い部屋で、大きなテーブルを囲んで三人で食事をすることになってしまったのだった。
オレだけは俊輔の部屋で良いのにと思ったんだけど、なんか、瀬戸さんが一緒でいいよと、強く勧めたらしい。……なぜ?
オレを呼びに来た時の、西条さんは、なんだかとっても、お気の毒に、と思ってるような雰囲気で。オレは、話を聞く前から、一緒に食べることになるんだろうなと、察した。
で、今。すごく重そうな木のテーブルで、オレと俊輔が隣、瀬戸さんが向かいに座ってる。隣と言っても、一メートル位は離れてるけど。西条さんが、前菜を、運んで目の前に置いてくれる。
……コースみたい……すごくゆっくり食べることになるんだろうかと、かなりうんざりで。もう、流し込むように食べて、課題をやりにいくと、言いたいけど。次の料理がなかなか出て来なそうだ……。
「いただきます」
手を合わせて、前菜を一口。……いつもどおり、おいしい、ここの料理を作ってくれてる人は、おいしくて、すごい。今日も、おいしいんだけど。息がつまりそう。
瀬戸さんは、食事をしながら、目の前に並んでいるオレと俊輔をじっと見てるし。どうしていたらいいのかもう、ほんと……。
この部屋に来るまでの途中て、西条さんが『色々若が答えると思うので、真奈さんは、それに合わせてくれたらいいと思いますよ」と言ってくれて、それを、ただひたすら、信じてるのだけど。
「なあ、真奈くん?」
「はい?」
……いきなり話しかけられたけど。……泣きたい。
「俊輔の部屋で暮らしてるっていうのは、今俊輔に聞いた。自分の意志だって、俊輔は言ってるけど、本当?」
「…………」
オレは、すぐ、頷いた。
……少し前は違ったけど、今ここにいるのは、オレが、選んだ、から。
オレが頷くのを見て、ああ、よかった、と瀬戸さんが笑う。よかった?と首を傾げたら、瀬戸さんはクスクス笑い出した。
「意志じゃ無かったら、犯罪かと思うとこだったから」
良い笑顔で言われたセリフに、曖昧に首を振る。
……帰りたい。俊輔の部屋に。うう。
「知り合って色々あって、今は、真奈も了承して住んでるって言ったろ」
俊輔の言葉に、瀬戸さんは、まあそれはよかった、と笑う。
「ここから大学も通ってるの?」
「はい」
余計なことは言わないように。即答してく。
「家族は?」
「母が亡くなって、一人暮らしだったので」
「真奈くんて、ベータだよね?」
「あ、はい」
……来た。……オメガじゃないか確認されたんだよな。
まあ、絶対違うのは見た感じで分かると思うから、これは良かったかな。
変な関係だとは思われなくて、済むかも。
「色々あってって、何?」
瀬戸さんは、その質問を俊輔に向けた。俊輔は瀬戸さんを見つめ返して「それは本当に色々だから、言わない」とバッサリ。答える気は無いみたい。
「ふうん……?」
面白そうに笑った瀬戸さんは、オレに視線を戻してきて、じっと見つめてくる。
「何があった、っていうのも知りたいけど、それよりもさ。俊輔が、誰かを自分の部屋に置いてるっていうのが……ちょっと信じがたいんだよね」
「――……」
「そういうの、絶対嫌な奴だから。オレ、お前は、結婚しても絶対別々に寝るタイプだと思ってたし」
……どんなタイプ……。なんか一瞬、可笑しく思えたけど。
とても、笑える雰囲気ではなかった。
早くここから、出たい……と思った瞬間。
瀬戸さんが、ぱっと俊輔に視線を向けた。
「あ、そうだ。俊輔。一週間、泊めてもらっていい?」
「は? 何で」
俊輔の声は明らかに嫌そうで。食事を置いてくれていた西条さんも、ちらっと瀬戸さんを見たし。で、オレは、なんだか何も考えられなってる。
「今、マンションの隣で工事しててさ、一週間ちょい、かかるそうなんだけど、うるさくてさ。工事が終わったら、すぐ帰るから」
「塾に近いホテルとかに泊まればいいだろ」
「こんな機会ないんだし、一週間くらい、いとこ同士、仲良くやるのもいいだろ?」
「――――……」
「たまには酒なんかも飲みたいし」
俊輔が眉を顰めた感じで、でもそれ以上何も言わないし、西条さんも、普通の顔で、配膳を始めたし。
……これは、決まったんだろうなぁ。と、ぼんやりと考える。
良く分かんないけど。仲は、悪くはなさそうだし。結構俊輔のこと、分かってそうな感じはする人だし。絶対帰れ、と言わないんだから、そういうことだよね。
……まあ、オレは来週もきっと、レポートやってるし。
関係ないかな、と。思いながら。
でもなんとなく。
……俊輔とオレの、出会い方とか、そういうのを、何も言ってはいないので、知られない方がいいんだよなあと思うと。
ちょっと憂鬱になってしまう。だって、この人。
……なんか、頭良さそうで。勘が鋭そうで。怖いし。
よく分かんないけど。とにかく、頑張るしかない。
そもそも今の関係だけなら……ただの居候……? だしなぁ。知られて困ることは、ないのかな。と思い、つい首を傾げてしまう。
(2024/9/6)
445
お気に入りに追加
1,401
あなたにおすすめの小説


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【完結】元勇者の俺に、死んだ使い魔が美少年になって帰ってきた話
ずー子
BL
1年前くらいに書いた、ほのぼの話です。
魔王討伐で疲れた勇者のスローライフにかつて自分を庇って死んだ使い魔くんが生まれ変わって遊びに来てくれました!だけどその姿は人間の美少年で…
明るいほのぼのラブコメです。銀狐の美少年くんが可愛く感じて貰えたらとっても嬉しいです!
攻→勇者エラン
受→使い魔ミウ
一旦完結しました!冒険編も思いついたら書きたいなと思っています。応援ありがとうございました!
頑張って番を見つけるから友達でいさせてね
貴志葵
BL
大学生の優斗は二十歳を迎えてもまだαでもβでもΩでもない「未分化」のままだった。
しかし、ある日突然Ωと診断されてしまう。
ショックを受けつつも、Ωが平穏な生活を送るにはαと番うのが良いという情報を頼りに、優斗は番を探すことにする。
──番、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは親友でαの霧矢だが、彼はΩが苦手で、好みのタイプは美人な女性α。うん、俺と真逆のタイプですね。
合コンや街コンなど色々試してみるが、男のΩには悲しいくらいに需要が無かった。しかも、長い間未分化だった優斗はΩ特有の儚げな可憐さもない……。
Ωになってしまった優斗を何かと気にかけてくれる霧矢と今まで通り『普通の友達』で居る為にも「早くαを探さなきゃ」と優斗は焦っていた。
【塩対応だけど受にはお砂糖多めのイケメンα大学生×ロマンチストで純情なそこそこ顔のΩ大学生】
※攻は過去に複数の女性と関係を持っています
※受が攻以外の男性と軽い性的接触をするシーンがあります(本番無し・合意)
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる