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第四章
34.「キスにドキドキする」*真奈
しおりを挟む鞄の近くに置いたパソコンを袋から出して、手に取る。
……これも。オレのためにすぐ、用意してくれたんだ。と。
じっと見つめてしまう。
……さっき。俊輔はキス、しようとした。
別に無理矢理じゃなくて。
引き寄せ方は、優しくて。オレは別に嫌がることもできた程度の力で。
……でもオレ。めちゃくちゃドキドキして。
あれ、あのままキスされてたら。
普通に。キス、受けてたと思う。……しかも、ドキドキ、しながら。
……唇に手の甲を押し当てて、ごし、と一度、擦る。
最初の頃は、確か、キスはしなかった。
慣らして、つながるだけ。オレの反応が良くなるからなのか、体の色々にさわるのはあったけど、キスはしなかった。いつからかキスするようになって……多分気持ちよくて分かんなくなってきてから、いつからかキスしてて。気付いたら、キスは、よくするようになってて。
……オレも、気持ち悪いとかそういうのは無くて、つか、気持ちよすぎて嫌だなとは思ってたけど。……えーと。だからつまり。
いっぱいキスしてきたし。
こないだここに帰ってきてから久しぶりに触られた日も、キスはした。俊輔が最後までしなかっただけで。
俊輔とのキスは、かなりたくさん。経験あり。
…………なのに。オレの、今更の、この意識の仕方は……。
「――――……」
さっき、西条さんが入ってこなくて、キスをしてたら。
どうなってたんだろう。あそこでキス、して……すぐ離して、終わりだったかな。それとも。……続いた、かな。
俊輔が言う、オレの嫌がることをしないっていうのに、オレを抱くってことが多分、一番に入ってるんだろうな……。
……まあ、それは、そうなんだけど。
…………いや、でも。あの時みたいに怖くないなら……別に、嫌、じゃないような……。
「…………」
いや、ちょっと待てオレ。
せっかく俊輔が、オレに気を使ってくれてるのに。
……あー……分かんない。
キスは別に。……別にっていうか、多分、オレ、キスは嫌ではない。……でも、抱かれるのはどうなんだろう?
オレは、オメガじゃなくて、普通のベータの男なのにって。ずっと、思いながら、俊輔に抱かれてた。
……てことは、だから、やっぱり、嫌、なのかな。
俊輔が譲歩してくれたこと。ありがたく思うべきなのかな。
……いつまでもここでうずくまってる訳にはいかないので、パソコンを抱きかかえて、そのまま俊輔の側に戻ることにした。ソファに座ってる俊輔に、テーブルでパソコン開くねと伝えて、西条さんが紅茶をいれてくれている横に腰かけた。するとすぐに西条さんが気づいた。
「新しいパソコンですか?」
「あ、はい。俊輔がくれて……」
「ああ、良かったです。真奈さんが壊れたと言ってらしたので、用意しようと思っていたので」
電源を入れると、すごく早く立ち上がる。
……なんかすごく良い機能のパソコンぽい。
「どんな感じ?」
俊輔が隣に座って、肘を軽くついた姿勢で覗き込んでくる。
「んーと。……画面綺麗……速い感じ?」
西条さんの淹れてくれた紅茶を飲みながら、覗き込んでくる。
近づくので、ふ、と俊輔の唇が目に入る。
……キス。とか。
…………抱かれる、こととか。
数えられないくらいしてきたのに。
……唇見るだけで、ドキドキするって。
……何なんだろう、オレ。どうしたらいいんだろう。
……いっそ。
してしまえば。
意識しなくなるのかな。
(2024/7/7)
🎋二人が早く素直になりますように……🌟
とか…お祈りしてみる(笑)
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