上 下
123 / 136
第四章

34.「キスにドキドキする」*真奈

しおりを挟む



 鞄の近くに置いたパソコンを袋から出して、手に取る。
 ……これも。オレのためにすぐ、用意してくれたんだ。と。
 じっと見つめてしまう。

 ……さっき。俊輔はキス、しようとした。

 別に無理矢理じゃなくて。
 引き寄せ方は、優しくて。オレは別に嫌がることもできた程度の力で。

 ……でもオレ。めちゃくちゃドキドキして。
 あれ、あのままキスされてたら。
 普通に。キス、受けてたと思う。……しかも、ドキドキ、しながら。


 ……唇に手の甲を押し当てて、ごし、と一度、擦る。

 最初の頃は、確か、キスはしなかった。
 慣らして、つながるだけ。オレの反応が良くなるからなのか、体の色々にさわるのはあったけど、キスはしなかった。いつからかキスするようになって……多分気持ちよくて分かんなくなってきてから、いつからかキスしてて。気付いたら、キスは、よくするようになってて。
 ……オレも、気持ち悪いとかそういうのは無くて、つか、気持ちよすぎて嫌だなとは思ってたけど。……えーと。だからつまり。

 いっぱいキスしてきたし。
 こないだここに帰ってきてから久しぶりに触られた日も、キスはした。俊輔が最後までしなかっただけで。
 俊輔とのキスは、かなりたくさん。経験あり。
 …………なのに。オレの、今更の、この意識の仕方は……。


「――――……」

 さっき、西条さんが入ってこなくて、キスをしてたら。
 どうなってたんだろう。あそこでキス、して……すぐ離して、終わりだったかな。それとも。……続いた、かな。

 俊輔が言う、オレの嫌がることをしないっていうのに、オレを抱くってことが多分、一番に入ってるんだろうな……。
 ……まあ、それは、そうなんだけど。
 …………いや、でも。あの時みたいに怖くないなら……別に、嫌、じゃないような……。


「…………」

 いや、ちょっと待てオレ。
 せっかく俊輔が、オレに気を使ってくれてるのに。


 ……あー……分かんない。

 キスは別に。……別にっていうか、多分、オレ、キスは嫌ではない。……でも、抱かれるのはどうなんだろう?
 オレは、オメガじゃなくて、普通のベータの男なのにって。ずっと、思いながら、俊輔に抱かれてた。

 ……てことは、だから、やっぱり、嫌、なのかな。
 俊輔が譲歩してくれたこと。ありがたく思うべきなのかな。

 ……いつまでもここでうずくまってる訳にはいかないので、パソコンを抱きかかえて、そのまま俊輔の側に戻ることにした。ソファに座ってる俊輔に、テーブルでパソコン開くねと伝えて、西条さんが紅茶をいれてくれている横に腰かけた。するとすぐに西条さんが気づいた。

「新しいパソコンですか?」
「あ、はい。俊輔がくれて……」
「ああ、良かったです。真奈さんが壊れたと言ってらしたので、用意しようと思っていたので」

 電源を入れると、すごく早く立ち上がる。
 ……なんかすごく良い機能のパソコンぽい。

「どんな感じ?」
 俊輔が隣に座って、肘を軽くついた姿勢で覗き込んでくる。

「んーと。……画面綺麗……速い感じ?」

 西条さんの淹れてくれた紅茶を飲みながら、覗き込んでくる。
 近づくので、ふ、と俊輔の唇が目に入る。
 
 ……キス。とか。
 …………抱かれる、こととか。


 数えられないくらいしてきたのに。
 ……唇見るだけで、ドキドキするって。


 ……何なんだろう、オレ。どうしたらいいんだろう。


 ……いっそ。

 してしまえば。
 意識しなくなるのかな。







(2024/7/7)


🎋二人が早く素直になりますように……🌟


とか…お祈りしてみる(笑)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

三十路のΩ

BL
三十路でΩだと判明した伊織は、騎士団でも屈強な男。Ω的な要素は何一つ無かった。しかし、国の政策で直ぐにでも結婚相手を見つけなければならない。そこで名乗りを上げたのは上司の美形なα団長巴であった。しかし、伊織は断ってしまい

魔導書の守護者は悪役王子を護りたい

Shizukuru
BL
前世、面倒くさがりの姉に無理やり手伝わされて、はまってしまった……BL異世界ゲームアプリ。 召喚された神子(主人公)と協力して世界を護る。その為に必要なのは魔導書(グリモワール)。 この世界のチートアイテムだ。 魔導書との相性が魔法のレベルに影響するため、相性の良い魔導書を皆探し求める。 セラフィーレが僕の名前。メインキャラでも、モブでもない。事故に巻き込まれ、ぼろぼろの魔導書に転生した。 ストーリーで言えば、召喚された神子の秘密のアイテムになるはずだった。 ひょんな事から推しの第二王子が所有者になるとか何のご褒美!? 推しを守って、悪役になんてさせない。好きな人の役に立ちたい。ハッピーエンドにする為に絶対にあきらめない! と、思っていたら……あれ?魔導書から抜けた身体が認識され始めた? 僕……皆に狙われてない? 悪役になるはずの第二王子×魔導書の守護者 ※BLゲームの世界は、女性が少なめの世界です。

風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!

白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿) 絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ アルファ専用風俗店で働くオメガの優。 働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。 それでも、アルファは番たいらしい なぜ、ここまでアルファは番たいのか…… ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです ※長編になるか短編になるかは未定です

【完結】糸と会う〜異世界転移したら獣人に溺愛された俺のお話

匠野ワカ
BL
日本画家を目指していた清野優希はある冬の日、海に身を投じた。 目覚めた時は見知らぬ砂漠。――異世界だった。 獣人、魔法使い、魔人、精霊、あらゆる種類の生き物がアーキュス神の慈悲のもと暮らすオアシス。 年間10人ほどの地球人がこぼれ落ちてくるらしい。 親切な獣人に助けられ、連れて行かれた地球人保護施設で渡されたのは、いまいち使えない魔法の本で――!? 言葉の通じない異世界で、本と赤ペンを握りしめ、二度目の人生を始めます。 入水自殺スタートですが、異世界で大切にされて愛されて、いっぱい幸せになるお話です。 胸キュン、ちょっと泣けて、ハッピーエンド。 本編、完結しました!! 小話番外編を投稿しました!

あなたの運命の番になれますか?

あんにん
BL
愛されずに育ったΩの男の子が溺愛されるお話

愛され奴隷の幸福論

東雲
BL
両親の死により、伯父一家に当主の座を奪われ、妹と共に屋敷を追い出されてしまったダニエル。 伯爵家の跡継ぎとして、懸命に勉学に励み、やがて貴族学園を卒業する日を間近に迎えるも、妹を守る為にダニエルは借金を背負い、奴隷となってしまう──…… ◇◇◇◇◇ *本編完結済みです* 筋肉男前が美形元同級生に性奴隷として買われて溺愛されるお話です(ざっくり) 無表情でツンツンしているけれど、内心は受けちゃん大好きで過保護溺愛する美形攻め×純粋培養された健気素直故に苦労もするけれど、皆から愛される筋肉男前受け。 体が大っきくて優しくて素直で真面目で健気で妹想いで男前だけど可愛いという受けちゃんを、不器用ながらもひたすらに愛して甘やかして溺愛する攻めくんという作者が大好きな作風となっております!

「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

悠里
BL
Ωの凛太。オレには夢がある。その為に勉強しなきゃ。お金が必要。でもムカつく父のお金はできるだけ使いたくない。そういう店もありだろうか。父の金を使うより、どんな方法だろうと自分で稼いだ方がマシ、と悩んでいたΩ凛太の前に、何やらめちゃくちゃイケメンなαが現れた。 凛太は自らを欠陥と呼ぶレベルで、Ωの要素がない。ヒートたまにあるけど、不定期だし、三日こもればなんとかなる。αのフェロモンも感じない。 なんだろこの人と思っていたら、何やら話している間に、変な話になってきた。 契約結婚? 期間三年。その間は好きに勉強していい。その後も、生活の面倒は見る。デメリットは、戸籍にバツイチがつくこと。え、全然いいかも。お願いします! トリプルエスランク、紫の瞳を持つスーパーαのエリートの瑛士さんの、超高級マンション。最上階の隣の部屋を貰う。もし番になりたい人が居たら一緒に暮らしてもいいよとか言ってくる。良いです、勉強したいんで! 恋とか分からないしと断る。たまに一緒にパーティーに出たり、表に夫夫アピールはするけど、それ以外は絡む必要もない。はずだったのに、なぜか瑛士さんは、オレの部屋を訪ねてくる。そんな豪華でもない普通のご飯を一緒に食べるようになる。勉強してる横で、瑛士さんも仕事してる。「何でここに居るんですか?」「さあ……居心地よくない?」「まあいいですけど」そんな日々が続く。ある時、久しぶりにヒート。三日間こもるんで来ないでください。この期間だけは一応Ωなんで、と言ったオレに、一緒に居る、と、意味の分からない瑛士さん。一応抑制剤はお互い打つけど、さすがにヒートは、無理。出てってと言ったら、一人でそんな辛そうにさせてたくない、という。もうヒートも相まって、血が上って、頭、良く分からなくなる。まあ二人とも、微かな理性で頑張って、本番まではいかなかったんだけど。――ヒートを乗り越えてから、瑛士さん、なんかやたら、距離が近い。何なのその目。そんな風に見つめるの、なんかよくないと思いますけど。というと、おかしそうに笑われる。そんな時、瑛士さんのツテで、参加した講義の先生と話す機会があり、薬を作る話で盛り上がる。先生のところで、Ωの対応や被験をするようになる。夢に少しずつ近づくような。けれどそんな中、今まである抑制剤の治験の闇やΩたちへの許されない行為を耳にする。少しずつ証拠をそろえていくと、それを良く思わない連中が居て――。瑛士さんは、契約結婚をしてでも身辺に煩わしいことをなくしたかったはずなのに、なぜかオレに関わってくる。仕事も忙しいのに、時間を見つけては、側に居る。なんだか初の感覚。とオレ、勉強しなきゃいけないんだけど! という、オレがαに翻弄されまくる話です。ぜひ読んでねー✨ 第12回BL大賞にエントリーしています。 応援頂けたら嬉しいです…✨

処理中です...