122 / 136
第四章
33.「キスなんて」*真奈
しおりを挟む西条さんから、スマホを返してもらって、手の中にある。
……久しぶりに、触った。メッセージアプリを開くと、すごく懐かしく感じる、皆の名前。大学の人には結構会ったからもういいとして、それ以前の友達が……なんか結構な数の連絡が来ていて、ヤバいなぁこれ、と思いながらソファに座った。
うわー……。
開けば開くほど、眉が寄っていく。
「真奈、シャワー浴びるか?」
「あ。あの。先に浴びて? ……オレ、この、ヤバそうなやつだけ、返事先にしてもいい?」
じっと見つめられて、そう返すと。俊輔は頷いて、そのままバスルームに入っていった。
……良かった。
なんか。一緒に入るの……ドキドキしてしまいそうで。
…………まあスマホがヤバいのも本当なんだけど。
返事しろーっていってるのは、まあ、病気で入院しててスマホ壊れてて、っていう理由を言えば、許してくれそうかな。なんかこれ、オレが返事しないで関係絶ったって思ってる奴も居そうだなあ。と、どんよりな気分……。既読がついてないからまだマシかな……壊れてたっていう理由が通るかも?
キリがないので、説明を打って、コピペで送信していく。
入れた瞬間に返事が来るのもあるけど、とりあえずまずは、必要そうな友達に送信。それが終わってから、すぐ来た返事に、それぞれ対応していく。
……結構大変……。
うー、と必死でポチポチし続けていたら、いつの間にか出てきていた俊輔が、すぐ後ろに立って、オレの肩に触れた。見上げると。……なんだかお風呂上り、色っぽい感じがかなり増す、迷惑な感じの人が、オレを見つめた。
「入ってこい」
そう言われて、ん、と頷いて、スマホを下に置いた。置いた瞬間、ぶぶ、と震動。そのまま置いていこうかなと思ったけれど、またすぐ震える。これはうるさいな、と、オレは、マナーモードに切り替えてから、スマホを置いた。
「入ってくるね」
そう言って、着替えを持ってバスルームへ。
――――俊輔、あんまり連絡とってると、怒るかなあ。
そう思いながら、頭を洗う。
んーでもなあ。とりあえず今のやりとりはちゃんとしちゃいたいよな。また音信不通みたいになるのも変だし。
と、そこまで考えて、ふと、止まった。
オレが、誰かと連絡とってるのを、俊輔が怒るって。
あれ。……何でそう思うんだろう。
さっきも、貰ったスマホに、友達の連絡先入れたら怒るかなあって。
それって、何が理由で怒るって、思ってるのかな……。
……嫉妬……とか。
…………俊輔が嫉妬するってオレ、思ってるのかな。
………………それ言ったら、そっちですごい怒られそう。自意識過剰って、絶対怒られる……!
ていうか、もう、オレ、もう何言っても怒られそうな気がしてきた。
怒ったからって、何かするとか、そういうのは無いって思ってるから怖いとかじゃないけど。やっぱ、怒られるのはやだなぁ。
うーん、と考えながら、パジャマを着て、髪を乾かす。
「ただいま……」
西条さんは居なくて、俊輔と二人。そう言って、オレは、俊輔が座ってるソファの隣に腰を下ろした。
「飲むか?」
俊輔が飲んでたペットボトルの水を見せられる。うん、と頷いて受け取る。何の気もなく、一口飲んで、ふと。
……普通は、同じので、飲まないよね。とか。気になってしまった。
――――……ていうか。
普通は、一緒に暮らしてないか。
「ありがと……」
なんかオレ、考えすぎかも、と思いながら俊輔にペットボトルを返す。受け取った俊輔の手が、オレの手首をつかんだ。そのまま引き寄せられて、気付いたら、その腕の中に埋まっていた。
「――――……」
……えっと。
ベッドで寝る時以外で、こんな感じは、久しぶり、かも。
何だかドキドキしてしまって、動けない。
心臓の音が。……うるさい。何でこれ、こんな……。
「――――……」
至近距離で見つめられる。
少しも逸らすことができない位、まっすぐ。
俊輔の瞳が少し伏せて。
……キス、される時の。雰囲気。
ドキドキが、ますますひどくなって。
あと、少しで触れる、となった時。
ノックの音とともに、すぐに、ドアが開いた。
「若、紅茶などいかがです……」
言いかけた言葉を止めて、西条さんがこっちを見てるけど。
俊輔とオレは、びく! と震えて、咄嗟に離れた後だったけど。
座ってる俊輔と、そのそばで、赤くなって立ってるオレ。絶対何か思われてるだろうけど何も言えない。俊輔が、ちら、と西条さんを見た。
「……前から思ってたけど、お前のノック、何の意味も無いよな」
「今まであまり困ったことがなかったので。これからはノックの後、待ちましょうか?」
クスクス笑う西条さんに、俊輔は、もういい、とため息をついてる。
「パ、ソコン、持ってくるね……」
「ん……ああ」
何か言いたげだったけど、そのまま離れて、さっき鞄と一緒に置いてきたパソコンの所に逃げることにした。
……キスなんて。
死ぬほどしてたのに。
なんでこんなに、胸がヤバいんだろう。
445
お気に入りに追加
1,287
あなたにおすすめの小説
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
三十路のΩ
鱒
BL
三十路でΩだと判明した伊織は、騎士団でも屈強な男。Ω的な要素は何一つ無かった。しかし、国の政策で直ぐにでも結婚相手を見つけなければならない。そこで名乗りを上げたのは上司の美形なα団長巴であった。しかし、伊織は断ってしまい
魔導書の守護者は悪役王子を護りたい
Shizukuru
BL
前世、面倒くさがりの姉に無理やり手伝わされて、はまってしまった……BL異世界ゲームアプリ。
召喚された神子(主人公)と協力して世界を護る。その為に必要なのは魔導書(グリモワール)。
この世界のチートアイテムだ。
魔導書との相性が魔法のレベルに影響するため、相性の良い魔導書を皆探し求める。
セラフィーレが僕の名前。メインキャラでも、モブでもない。事故に巻き込まれ、ぼろぼろの魔導書に転生した。
ストーリーで言えば、召喚された神子の秘密のアイテムになるはずだった。
ひょんな事から推しの第二王子が所有者になるとか何のご褒美!?
推しを守って、悪役になんてさせない。好きな人の役に立ちたい。ハッピーエンドにする為に絶対にあきらめない!
と、思っていたら……あれ?魔導書から抜けた身体が認識され始めた?
僕……皆に狙われてない?
悪役になるはずの第二王子×魔導書の守護者
※BLゲームの世界は、女性が少なめの世界です。
風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!
白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿)
絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ
アルファ専用風俗店で働くオメガの優。
働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。
それでも、アルファは番たいらしい
なぜ、ここまでアルファは番たいのか……
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
※長編になるか短編になるかは未定です
【完結】糸と会う〜異世界転移したら獣人に溺愛された俺のお話
匠野ワカ
BL
日本画家を目指していた清野優希はある冬の日、海に身を投じた。
目覚めた時は見知らぬ砂漠。――異世界だった。
獣人、魔法使い、魔人、精霊、あらゆる種類の生き物がアーキュス神の慈悲のもと暮らすオアシス。
年間10人ほどの地球人がこぼれ落ちてくるらしい。
親切な獣人に助けられ、連れて行かれた地球人保護施設で渡されたのは、いまいち使えない魔法の本で――!?
言葉の通じない異世界で、本と赤ペンを握りしめ、二度目の人生を始めます。
入水自殺スタートですが、異世界で大切にされて愛されて、いっぱい幸せになるお話です。
胸キュン、ちょっと泣けて、ハッピーエンド。
本編、完結しました!!
小話番外編を投稿しました!
愛され奴隷の幸福論
東雲
BL
両親の死により、伯父一家に当主の座を奪われ、妹と共に屋敷を追い出されてしまったダニエル。
伯爵家の跡継ぎとして、懸命に勉学に励み、やがて貴族学園を卒業する日を間近に迎えるも、妹を守る為にダニエルは借金を背負い、奴隷となってしまう──……
◇◇◇◇◇
*本編完結済みです*
筋肉男前が美形元同級生に性奴隷として買われて溺愛されるお話です(ざっくり)
無表情でツンツンしているけれど、内心は受けちゃん大好きで過保護溺愛する美形攻め×純粋培養された健気素直故に苦労もするけれど、皆から愛される筋肉男前受け。
体が大っきくて優しくて素直で真面目で健気で妹想いで男前だけど可愛いという受けちゃんを、不器用ながらもひたすらに愛して甘やかして溺愛する攻めくんという作者が大好きな作風となっております!
「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」
悠里
BL
Ωの凛太。オレには夢がある。その為に勉強しなきゃ。お金が必要。でもムカつく父のお金はできるだけ使いたくない。そういう店もありだろうか。父の金を使うより、どんな方法だろうと自分で稼いだ方がマシ、と悩んでいたΩ凛太の前に、何やらめちゃくちゃイケメンなαが現れた。
凛太は自らを欠陥と呼ぶレベルで、Ωの要素がない。ヒートたまにあるけど、不定期だし、三日こもればなんとかなる。αのフェロモンも感じない。
なんだろこの人と思っていたら、何やら話している間に、変な話になってきた。
契約結婚? 期間三年。その間は好きに勉強していい。その後も、生活の面倒は見る。デメリットは、戸籍にバツイチがつくこと。え、全然いいかも。お願いします!
トリプルエスランク、紫の瞳を持つスーパーαのエリートの瑛士さんの、超高級マンション。最上階の隣の部屋を貰う。もし番になりたい人が居たら一緒に暮らしてもいいよとか言ってくる。良いです、勉強したいんで! 恋とか分からないしと断る。たまに一緒にパーティーに出たり、表に夫夫アピールはするけど、それ以外は絡む必要もない。はずだったのに、なぜか瑛士さんは、オレの部屋を訪ねてくる。そんな豪華でもない普通のご飯を一緒に食べるようになる。勉強してる横で、瑛士さんも仕事してる。「何でここに居るんですか?」「さあ……居心地よくない?」「まあいいですけど」そんな日々が続く。ある時、久しぶりにヒート。三日間こもるんで来ないでください。この期間だけは一応Ωなんで、と言ったオレに、一緒に居る、と、意味の分からない瑛士さん。一応抑制剤はお互い打つけど、さすがにヒートは、無理。出てってと言ったら、一人でそんな辛そうにさせてたくない、という。もうヒートも相まって、血が上って、頭、良く分からなくなる。まあ二人とも、微かな理性で頑張って、本番まではいかなかったんだけど。――ヒートを乗り越えてから、瑛士さん、なんかやたら、距離が近い。何なのその目。そんな風に見つめるの、なんかよくないと思いますけど。というと、おかしそうに笑われる。そんな時、瑛士さんのツテで、参加した講義の先生と話す機会があり、薬を作る話で盛り上がる。先生のところで、Ωの対応や被験をするようになる。夢に少しずつ近づくような。けれどそんな中、今まである抑制剤の治験の闇やΩたちへの許されない行為を耳にする。少しずつ証拠をそろえていくと、それを良く思わない連中が居て――。瑛士さんは、契約結婚をしてでも身辺に煩わしいことをなくしたかったはずなのに、なぜかオレに関わってくる。仕事も忙しいのに、時間を見つけては、側に居る。なんだか初の感覚。とオレ、勉強しなきゃいけないんだけど! という、オレがαに翻弄されまくる話です。ぜひ読んでねー✨
第12回BL大賞にエントリーしています。
応援頂けたら嬉しいです…✨
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる