「Promise」-α×β-溺愛にかわるまでのお話です♡

悠里

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第四章

31.「前のスマホ」*真奈

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 俊輔は真面目な顔をして、本を読んでる。
 ……正直、俊輔と図書館で勉強する日が来るなんて。
 しかも、オレの課題に、俊輔が、付き合ってくれるなんて、ほんと、想像もしなかった。
 そんなことを考えながらも、頑張って集中して、本を読んでいると。

「なあ真奈」
「……?」
「これ、パソコンで打つよな?」
「うん。図書館にパソコンあるから、もうちょっとデータ揃ったら打ってこうと思ってて」
「ノート持ってねえの?」
「あ、うん。……壊れて買いに行かなきゃって思ってた時に……」
「オレんとこ来た?」

 うん、と頷くと。俊輔はふぅん、と頷いた。時計を見ながら、立ち上がる。

「ちょっと電話してくる。そろそろ帰ろうぜ。準備して、出てこい。あと、この本は借りて来いよ」
「うん」

 俊輔が付箋を挟んでくれた本を受け取ると、俊輔は離れていった。その後ろ姿を見送ってから時計を見ると、二十一時半を回ってる。こんな時間まで、俊輔もずっと、静かに付き合ってくれてたのかぁ……。

 借りない本は片付けて、荷物をまとめてカウンターで本を借りた。
 ……この時間になると、ほとんど人は居ないみたい。初めてこんな時間まで残ったけど。
 友達がここに居て、俊輔のこと見たら、何て言ったかなとふと思う。

 オレと俊輔って、友達に見えるのかな??
 俊輔って、……どうなんだろう、知らない人から見たら、怖いのかな。
 オレは死ぬほど怖かったけど、でもあれは出会い方に問題があった気がするし。

 普通に学生同士とかで会ってたら、怖くないのかなぁ。むしろ、カッコよくて人気者だったりするのかな??
 ……ていうか、俊輔って、大学で、友達居るのかな……。

 そんなこと聞いたら怒られるだろうから聞かないけど。

 借りた本を手に、図書館を出ると、俊輔がちょうど電話を切って、こっちを向いたところだった。俊輔に駆け寄ると、じっとオレを見下ろしてくる。

「……なに?」

 たまに、俊輔って、黙ってオレを見るけど。
 ……何を思っているのかは、まったく、分かんない……。

 なんとなく見つめ返していると、「車、駐車場にとめてある」と言われる。
 歩き出した俊輔の隣に並んで、人もまばらな構内を進む。

 挨拶した時も黙ってたけど、あいさつは言って良いってことは、それが嫌だったわけじゃないみたいだし。

 ……慣れてないから固まるって言ってたなぁ……。あ。あれ、固まってたのか……。
 慣れてないから? ……んん? なんかちょっと、可愛い……ような?? って可愛くはないか。絶対怒られる……。なんて考えていたオレは。


「この時間だともう人はほとんど居ないんだな」

 静かな声でそう言われて、内心ビクついたまま、「あ、うん」と頷く。


「逆に今居る人って、ゼミとか卒論の勉強してる人なのかな? 同学年は見かけなかったよ?」

 そう言うと、俊輔はオレを見つめる。

「二日もたてば、大分元通りになったか?」
「え?」
「突然消えて戻ったら、周りがうるさかったろ」

「あ。うん。そだね。仲の良い友達には、すごい騒がれたかも……」

 皆の顔と騒ぎを思い出すと、ふふ、と笑ってしまう。

「行方不明とか、心配されてたみたいだけど……でも、病気が治ったってことにしたから。皆、病気については、気を使って聞いてこないし……もう、大丈夫だと思う」

 俊輔は、ん、と頷いた。


「あ。そう、だ。あの……」

 ふと、昨日と今日、困ってたことを、思い出した。
 ……聞くのが怖くて、聞けないでいたんだけど……。

「何だよ?」
「……あの、スマホ、なんだけどね……壊れたから、連絡できなかったことにしてあって……」
「ああ」

「……今持ってるスマホ……今は俊輔と、和義さんだけが登録されてるんだけど」
 ちょっとドキドキしながら、俊輔を見上げる。

「友達、繋がってもいい? ……昨日から聞かれてるんだけど、あとでいい?って保留にしてて」

 …………ダメかな。俊輔専用じゃないと。

 「オレのやったスマホに他の奴入れるな」とか。言うかな……。うう。普通言わないと思うんだけど、なんか俊輔、言いそうな気もするんだもん……。





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