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第四章

28.「謎すぎる」*真奈

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 朝すごくすっきりと目覚めたら、もう俊輔は起きていた。

 ……かなりすやすや、寝ちゃったじゃん……。
 寝づらいとか思ってたくせに、あっという間に俊輔とくっついたまま。

 なんだかなぁと考えながら着替えて寝室を出ると、西条さんも居て朝食の準備をしてくれてるみたい。

「おはようございます。今起こしに行こうと思ってました。よく眠れましたか?」
「あ、はい。おはようございます」

 めちゃくちゃぐっすり寝ちゃいました……。
 思いながら頷いて、もうテーブルについて食べ始めていた俊輔の近くで立ち止まる。

「おはよ……」
 そう言うと、無言で、まっすぐ見つめられる。

「……おはよ」
 あ。返してくれた。
 ……ていうかなんか。…………言いながら目を逸らされたけど。

 ……照れてる?? 訳ないか。でもなんか、そんな風に見える、目の逸らし方。怒ってるんじゃなさそうなんだけど……。うーん……。
 やっぱりあんまり挨拶とか、言いたくないのかな。……ていうか、そんなことで毎度悩んでるオレもどうなんだと思いながら、そのまま離れて洗面台の前。自分の顔を見て、ちょっと顔色いいかも、と思う。

 早く寝たし、食べてるし。……夜中、起こされて色々、とかもないし。
 体調、良くなっては来たのかな。体力は、まだあんまりみたいで、昨日すごく疲れちゃったけど。

 テーブルに戻ると、俊輔はすぐ食べ終わっちゃって、立ち上がった。オレが、一人で食べてる間に、色々身支度を整えてきて、近くに立った。

「先に行く。迎えに行くの、また連絡する」
「うん。ありがと……行ってらっしゃい」
「――――ああ」

 じっとオレを見つめたまま頷いて、俊輔が出ていこうとしてる。ついていった方がいいのかなと思ったら、「食べててください」と西条さんに言われて、そのまま。

 ……分からない。
 挨拶とか。見送りとか。……オレはしなくていいものなのか。
 ……今まで全然起きれなかったし、起きる気力も無かったし。俊輔とそういう風に関わってこなかったから、もうここに来て随分経つのに、今更、初めて考えてる。

 普通は挨拶って普通だよねと思うから、普通の人相手なら悩むはずないんだけど……迷惑、かなと思わせる部分もあるから、言わない方がいいのかなとかも思ってしまったり。うーん……。

 悩みながら食事を終えた後、西条さんが大学の近くまで送ってくれた。昨日会わなかった友達にもまた会ったりして、また同じ会話を繰り返すし、授業が増えるたびに、課題が増えてく。
 一教科ごと、レポート用紙一、二枚とかだとしても、全部やるってやっぱり相当大変だなぁと、げんなりしてくる。でも、ほんとなら留年のところ、きっとなにか無理してくれたんだろうし……頑張るしかないよね。
 土日も図書館通った方がよさそう。俊輔に聞いてみよ……。

 五限が終わって、十八時過ぎから図書館に入った。
 俊輔には、終わる一時間位前にメッセージを入れるようにメッセージが来て、二十二時まで居てもいいって。

 しばらく集中して、ふ、と息をついた。

 明日も学校だし。俊輔には、ご飯も食べておいてって言ったけど、そんな遅いと悪いから早めに帰ろうかな……。車で送迎してくれるから、本重くても持って帰れるし。ただ、持ち出し禁止で借りられない本もあるからな。
 借りれるのは借りて、家でやって、借りれないのだけ、図書館でやるようにしようかな。

 ……でもオレあの部屋で、俊輔が居るのに、ずっとレポートとかやってられるのかなーとも思ったりもするし。
 やっぱり図書館がいいかな。とか、もうなんか色々考えてしまう。

 とにかく、もうそろそろ連絡、しとこうかなあ、と思って顔を上げた時。
 ふ、と影が出来て。何気なく見上げて、え、と固まってしまった。

「……俊、輔?」
「ん」

 驚きまくりのオレに、ふ、と笑った俊輔は、少し出よう、と言った。本と筆記用具だけ置いたまま、俊輔と図書館を出ると、外のベンチに腰かけた。

「どうしたの……?」

 帰ろう、じゃなくて、少し出よう、だったし。意味が分からなくて聞くオレの前で、俊輔が持っていた袋から出したものをオレに渡した。

「弁当」
「え」
「和義から」
「あ。……ありがと……え、食べていいの?」
「つか、食べずに、それどうする気だよ」

 俊輔が苦笑して言ったセリフに、確かに。そうなんだけど、とオレも苦笑い。

 俊輔がオレの大学に居て、こんなところでお弁当食べるっていうのが謎すぎて、とは言わず、オレは、お弁当の蓋を開けた。




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