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第四章

25.「久しぶりの大学」*真奈

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 そのまま涼しい部屋着に着替えたオレ達は、西条さんが運んできてくれた夕飯を食べ始めた。外で色々つまんでたことを話したのか、軽めの食事。
 この屋敷には料理人の人達がいるって前に聞いた。
 ……ていうか。俊輔の為だけに、居るんだよね。すごい。だって俊輔、普段あんまり居ないのに。それで、オレが朝昼晩いるから頑張って作ってくれてる、みたいなことを、西条さんが前に言ってて、オレの為に一生懸命作ってもらってもなぁ、なんてちょっと申し訳なく思ったりしたけど。

「若が家で食べるので喜んでますよ」
「……ふーん」

 そんなふうに返しながらも、俊輔が少しだけ口角を緩めた気がする。

「真奈、これうまい」
「うん」

 俊輔ってこのセリフよく言うなぁ。そんなにオレに食べさせたいのかな。なんて思いつつ、俊輔が指さした料理を、口に運ぶ。あ、おいしい。と口元が綻ぶ。

 ……おいしいものって幸せだなぁ。
 と思いながらも、ここで、食べ物をおいしいと思えるようになったのは、最近なような気がするけど。

 西条さんが、となりで、お茶を注いでくれながら、ふふ、と微笑んだ気がして、見上げると、やっぱり笑ってる西条さんと瞳が合う。

「あ、いえ。……真奈さん、学校はいつから行かれますか?」
「――――明日、からとか行けるんですか?」

 そう聞いてみると、西条さんは、そうですね、とオレを見つめた。

「体調がご自分で大丈夫でしたらどうぞ。しばらくは、車で送り迎えをしますよ」
「電車で通えると思うんですけど」

 車で大学まで送って貰うとか、なんか慣れなくてそう言ったのだけれど、すぐに俊輔がオレに視線を向けてきた。

「本調子になるまで、そうしろよ。最初は疲れるだろ」
「……うん」

 俊輔にも言われてしまったので、仕方なく頷く。
 大学の話を西条さんも込みで話してたので、今日の夕飯は割と、話が弾んで、そこまで気まずくならなかった。
 凌馬さんとか、西条さんとか、誰かが間に居てくれると、なんかいいのかも……。

 その夜も、俊輔と一緒にベッドに入ったけど。すごい近くで。腕枕みたいな感じで。
 ……オレ、このままこの先ずっと、俊輔とこうやって寝るのかな??疑問たくさんだったけど、今日は疲れたみたいで、割とすぐに眠りについていた。


 翌朝。俊輔に起こされて、早めに準備。
 朝ごはんを俊輔と食べた後、西条さんに大学の近くまで送られた。

 言われた通り、授業の後、教授のところに行くと、ぞれぞれ課題の提出を言われた。結構大変そう。まあ……休みすぎたよね。無理言ったのかな。あんまり事情を聞かれなかったけど、それも、そういうことになってるんだろうか。なんか触れない方が良い気がして、提出物の説明だけ色々聞いて退散した。
 そっちも大変だったけど、久しぶりに学校に行ったオレは、会う人会う人に、詰め寄られた。

 ちょっと病気で……と言うと、もう大丈夫なの? と聞かれて、もう元気。また通えるから、と言ったら、皆、よかったー、と受け入れてくれた。

 忘れられてなくて良かった。と思いながらも、なんかオレの方が、現実から離れすぎてて、まだ、完全に戻れてないけど。でも一緒にお昼を食べたりして、だんだん、友達と話す感覚が戻ってくる。そっか、オレ、結構長い間、俊輔と西条さん、たまに凌馬さん……くらいとしか話してなかったんだ。

 わー……特殊な環境すぎたなあ……。
 学食懐かしすぎる……と、久しぶりに友達と食事時間。普通に楽しい。なんて思いながら、食堂を出た時。

「真奈?」

 不意に大きな声で呼ばれた。今日何回かあったので、今度は誰だろ、と振り返ると少し離れた所に、びっくりした顔の。

「あ。そう

 一番、仲良かった友達の顔に、なんだかホッとして、笑顔になっていた。想は、何やらすごい勢いでゴー――ッと歩いてくる。止まるかと思ったら、全然止まらなくて、そのままぎゅーーー、と抱き締められた。

「……っっ」
「真奈……!」

 ぎゅー、と抱き締められて、周りは笑ってるし、オレは、すごくびっくりだし。

「何してたんだよ、全然連絡つかないしー!! ほんとにもー!」
「ごめん……連絡、できなくて」


 なんか少し泣きそうになりながら。
 ――――……なんか、戻ってきたんだなーと、少しだけ、実感できた。


 
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