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第四章
22.「仲良く?」*真奈
しおりを挟む「じゃあまたな」
俊輔が凌馬さんにそう言って、立ち上がったので、オレも続けて立ち上がった。宗がやってきて、「またなー?」とオレに言ってくる。会うかな?と思いながらも、うん、と頷く。
「またな、真奈ちゃん」
ニヤ、と笑う凌馬さん。
……なんか凌馬さんには、しょっちゅう会ってるような気がしてくるので、また会うかも、と思うことがまず不思議。なんて思いながら、はい、と頷いた。
別れてから店の外に出て、バイクにまたがる俊輔の後ろに乗ると、オレを振り返りながらヘルメットを渡してくる。
「体調は平気か? 疲れたか?」
そう聞かれて、少し、と頷いた。
……今までなら、大丈夫って言ったかも。でもなんとなく、今は、俊輔の心配は本当なんだろうと、思えて。言ってみてもいいかなと思ったから。
「分かった。まっすぐ帰るから。ちゃんとつかまってろよ」
ん、と頷いて、ヘルメットをかぶると、俊輔の腰に手を回す。
抱き付いてる、みたい。
……って、そのまんまか。みたいじゃなくて、抱き付いてるのか。
「――――」
こんな外見良くて、すっごいお金持ちで。暴走族とかやっちゃってカリスマっぽいし。
望めば、特に女の子なんか、すぐに喜んで俊輔のところにいくだろうなって思う。多分、それが客観的な、俊輔の外側。
……でも、俊輔は、今それをしてない。
オレと会ってからは、オレを俊輔の部屋に置いてる。
ふと思ったんだけど。
嫌ってたり、嫌な相手だったら、自分の部屋にはおかないんじゃないかって。
オレが倒れて西条さんに寝かされた部屋には鍵がかかるし、ああいうとこにオレを閉じ込めておいて、シたい時だけする、みたいなことだって、できたんだろうなって思って……。
俊輔が寝るところに、オレを寝かせてたこの数か月。
……嫌ってるとかは、最初から、無かったのかな……と。
オレが逃げ出した一連のことがなければ、オレは、こんなことを考えることは出来なかったかもしれないけど。
ぎゅ、と俊輔にしがみつく。信号で止まってた俊輔は、ふ、と後ろを振り返ったけど、オレの顔は見えないまま、また前を向いた。
……少し。
…………ほんの少しだけど。
もう少し、俊輔と。
仲良くって言ったらなんか、良く分からないけど……でも、もう少し、普通に話せるようになりたい気がする。
多分……俊輔も少しは、そう思ってくれてるような気がするから。
流れていく、車のライトが綺麗に見える。
俊輔と居る時に、こんな風な穏やかな気持ちになれるとか、ほんの少し前は思わなかった。
そのまま、何も話すことなく、俊輔の屋敷に戻った。
西条さんが出迎えてくれて、俊輔と少し話した後、オレの方を見てにっこり笑った。
「急にあちこち出て、お疲れではないですか?」
西条さんの言葉にオレが答える前に、「聞きながら移動したっつの」と、俊輔が言った。そのセリフに、西条さんは苦笑いを浮かべた。
「若に聞かれたら真奈さんは無理されると思うんですよ。ちゃんと、優しく聞きましたか?」
「……聞いた」
「本当ですか?」
くす、と笑って、オレを見つめてくる西条さんに、オレは聞かれた時のことを思い出しながら、頷いて見せた。
「ほらな」
なんだか偉そうな俊輔とオレを見比べて、西条さんは、ふ、と微笑む。
「とりあえず先にシャワー浴びる」
言って、俊輔が部屋のドアを開ける。はい、と頷いて、西条さんは離れていった。オレも俊輔に続いて部屋に入ると、ぐい、と腕を引かれた。
「お前も来い」
そんなにひどくひっぱられてる訳じゃないけど、振り解けずに、オレは、俊輔の後をついて、脱衣所に入った。
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