上 下
99 / 138
第四章

10.「久々の」*真奈

しおりを挟む



「――――……」
 
 目が覚めると、部屋は暗かった。俊輔は、隣には居なかった。

 ……寝ちゃってたんだ、オレ……。まだ喋ってるのかな……。

 歯を磨いた後、俊輔と凌馬さんに寝ていいと言われて、ベッドに来た。
 ずっと二人の声がなんとなく聞こえていた。ドアが閉まっているから、話してる内容までは分からないけど、たまに笑い声が聞こえたりして、仲、良いんだなあと思いながら……いつのまにか寝てたんだっけ……。

 なんかオレ。
 凌馬さんとは話せるって、変なの……。

 あの人も、ほんとなら、オレが関わる感じの相手じゃないと思うんだけど。
 めちゃくちゃ強そうだし、パッと見はすごく怖そうだし、なんか住む世界が違う感じ……。
 でも、こないだ助けてくれた時の、頼れる感じがもう、心の中にすとんと残ってて。

 ……ちょっと好きなのかもしれない。

 あの人が、今の、族のリーダー……。てことは。
 ……オレ、ほんとなら、あの人に会いに行ったんだよね、あの時。

 あの人はきっと、オレをこんな風に、自分のとこには置かなかっただろうから。あの日、もう少し遅く行って、俊輔に会わず、凌馬さんと話せてたら、オレはここには居ないんだろうなあ。普通に生きてたかなぁ……。

 ………………そこまで考えて、ため息を、ついた。

 でもオレ。
 その凌馬さんに、逃がしてやるって、言われたのに。

 ……ここに戻るって、決めたんだ。

 ………………あれって、何でなんだっけ……??

「…………」

 逃がしてくれるって、言ったのに、戻ってきたんだから、あの逃げる前に、ほぼ無理無理連れてこられた時とは、少し話が違くなってるってことも、分かってる。

 ……自分の意志で、ここに、戻った。

 …………あのまま、俊輔と、別れたくなかった、から……?

 何でかなあ、オレ。
 ……わりと、ひどいことしか、されてなかったような気もするのに。

 自分が謎すぎて、よく分からない。


 その時、部屋のドアが開く音がして、俊輔が入ってきた。
 
「……あ」
 腕をついて起きあがると、俊輔がこちらに目を向けた。

「起きてたのか?」 
「今、目が覚めて……凌馬さんは……?」
「少し前に帰った」
「そっか……」
「帰る時覗いてたけど、お前寝てたから、声かけないで帰った」
「うん……」

 頷いて、時計を見上げたら、二十三時過ぎ。
 俊輔が、ベッドの端に腰かける。
  
「……お前、凌馬の事好きか?」
「……え?」
 
 聞かれた言葉に思い切り首を傾げながら、俊輔を見上げると。
 じっと、見つめられた。
  
「……好き? って……助けてくれたし……好きといえば好きだけど……」

 好きだけど……なんだろう? その質問。

「……俊輔……?」
「また、呼ぶから」
「……うん……」

 ……それは別に、いいけど。
 ……俊輔が呼ぶなら、それでも良いし…… 良いんだけど……??
 なんだか変な感じの質問に、少し眉を顰めつつ、俊輔を見つめ返していると。
 隣に入ってきた俊輔に、額に触れられる。

「熱はないな……今、具合、悪いか?」
「……? 大丈夫」
「……少し、付き合え」
「え。……あ」

 肩を抱かれて引き寄せられる。久々のシチュエーションに一瞬固まったけど。
 そのまま、ゆっくりと、唇が、重なってきて。


 オレは、ふ、と。
 瞳を、伏せていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

4年の距離

しゅく
BL
どうしても自分を見てほしくて、好きになってほしかった。 ちょっと重めな美形と平凡の話。

風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!

白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿) 絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ アルファ専用風俗店で働くオメガの優。 働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。 それでも、アルファは番たいらしい なぜ、ここまでアルファは番たいのか…… ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです ※長編になるか短編になるかは未定です

溺愛オメガバース

暁 紅蓮
BL
Ωである呉羽皐月(クレハサツキ)と‪α‬である新垣翔(アラガキショウ)の運命の番の出会い物語。 高校1年入学式の時に運命の番である翔と目が合い、発情してしまう。それから番となり、‪α‬である翔はΩの皐月を溺愛していく。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

愛しいアルファが擬態をやめたら。

フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」 「その言い方ヤメロ」  黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。 ◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。 ◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。

全寮制の学園に行ったら運命の番に溺愛された話♡

白井由紀
BL
【BL作品】 絶対に溺愛&番たいα×絶対に平穏な日々を過ごしたいΩ 田舎育ちのオメガ、白雪ゆず。東京に憧れを持っており、全寮制私立〇〇学園に入学するために、やっとの思いで上京。しかし、私立〇〇学園にはカースト制度があり、ゆずは一般家庭で育ったため最下位。ただでさえ、いじめられるのに、カースト1位の人が運命の番だなんて…。ゆずは会いたくないのに、運命の番に出会ってしまう…。やはり運命は変えられないのか! 学園生活で繰り広げられる身分差溺愛ストーリー♡ ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承ください🙇‍♂️ ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

処理中です...