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第四章
10.「久々の」*真奈
しおりを挟む「――――……」
目が覚めると、部屋は暗かった。俊輔は、隣には居なかった。
……寝ちゃってたんだ、オレ……。まだ喋ってるのかな……。
歯を磨いた後、俊輔と凌馬さんに寝ていいと言われて、ベッドに来た。
ずっと二人の声がなんとなく聞こえていた。ドアが閉まっているから、話してる内容までは分からないけど、たまに笑い声が聞こえたりして、仲、良いんだなあと思いながら……いつのまにか寝てたんだっけ……。
なんかオレ。
凌馬さんとは話せるって、変なの……。
あの人も、ほんとなら、オレが関わる感じの相手じゃないと思うんだけど。
めちゃくちゃ強そうだし、パッと見はすごく怖そうだし、なんか住む世界が違う感じ……。
でも、こないだ助けてくれた時の、頼れる感じがもう、心の中にすとんと残ってて。
……ちょっと好きなのかもしれない。
あの人が、今の、族のリーダー……。てことは。
……オレ、ほんとなら、あの人に会いに行ったんだよね、あの時。
あの人はきっと、オレをこんな風に、自分のとこには置かなかっただろうから。あの日、もう少し遅く行って、俊輔に会わず、凌馬さんと話せてたら、オレはここには居ないんだろうなあ。普通に生きてたかなぁ……。
………………そこまで考えて、ため息を、ついた。
でもオレ。
その凌馬さんに、逃がしてやるって、言われたのに。
……ここに戻るって、決めたんだ。
………………あれって、何でなんだっけ……??
「…………」
逃がしてくれるって、言ったのに、戻ってきたんだから、あの逃げる前に、ほぼ無理無理連れてこられた時とは、少し話が違くなってるってことも、分かってる。
……自分の意志で、ここに、戻った。
…………あのまま、俊輔と、別れたくなかった、から……?
何でかなあ、オレ。
……わりと、ひどいことしか、されてなかったような気もするのに。
自分が謎すぎて、よく分からない。
その時、部屋のドアが開く音がして、俊輔が入ってきた。
「……あ」
腕をついて起きあがると、俊輔がこちらに目を向けた。
「起きてたのか?」
「今、目が覚めて……凌馬さんは……?」
「少し前に帰った」
「そっか……」
「帰る時覗いてたけど、お前寝てたから、声かけないで帰った」
「うん……」
頷いて、時計を見上げたら、二十三時過ぎ。
俊輔が、ベッドの端に腰かける。
「……お前、凌馬の事好きか?」
「……え?」
聞かれた言葉に思い切り首を傾げながら、俊輔を見上げると。
じっと、見つめられた。
「……好き? って……助けてくれたし……好きといえば好きだけど……」
好きだけど……なんだろう? その質問。
「……俊輔……?」
「また、呼ぶから」
「……うん……」
……それは別に、いいけど。
……俊輔が呼ぶなら、それでも良いし…… 良いんだけど……??
なんだか変な感じの質問に、少し眉を顰めつつ、俊輔を見つめ返していると。
隣に入ってきた俊輔に、額に触れられる。
「熱はないな……今、具合、悪いか?」
「……? 大丈夫」
「……少し、付き合え」
「え。……あ」
肩を抱かれて引き寄せられる。久々のシチュエーションに一瞬固まったけど。
そのまま、ゆっくりと、唇が、重なってきて。
オレは、ふ、と。
瞳を、伏せていた。
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