61 / 136
第二章
30.「今までは」*真奈 ※
しおりを挟む「……っや……」
下着ごとズボンが剥ぎ取られて、きつく瞳を閉じた瞬間。
俊輔が、チッと舌打ちをした。
「……お前の顔、見たくねえ」
言った俊輔に、体を反転させられて、顔を枕に突っ伏した。
そのまま腰を引かれて上げさせられて、強張る。
「……や……!」
パチン、と何かの蓋の開く音がして、オレの後ろに何かが無理矢理押し込まれた。突然の異物を拒むそこを無理矢理開かれ、その何かが、中で液体を出したみたいで。中に冷たいものが流れ込んでくる。
ものすごい悪寒に、鳥肌が立った。声すら、満足に出てこない。
「……っ…… ん……!」
最初何だったか分からなかったけど。
ぞわ、と奥から湧き上がってくる感覚と、かぁっと異様に熱くなる体。ぐらりと目眩がして、息が上がる。
飲まされたものも、後ろのも、そういう薬だと、体で思い知る。
「……あ……や、だ…… しゅ…………」
「……黙ってろ」
括られた中で、指をぎゅ、と縮ませる。
変な感覚で、後ろが疼く、みたいな……気持ち悪い。
悪寒が背筋をめぐって、体が勝手にびくりと震える。
「……ん…… っ ……ん……」
すぐに後ろから俊輔があてがわれて、いきなり深く貫かれた。
「……っ…… っ……ゅんすけ……や……」
「……黙ってろって言ってンだろーが」
なんだか、チカチカする眼前にきつく瞳を伏せて、思わず名を呼んだ時、低い声が聞こえて。
「――――……っ? ……やだ、や……ンン、ぅ!」
後ろから何かが口に回されて、そのまま頭の後ろできつく縛られた。
くぐもった悲鳴以外、何も発せられない状態に――――……怖くてたまらなくなる。
「……んっ……ぅン……!」
深く突き上げられて、ぶる、と頭を小刻みに揺らす。
変な薬は使われてるけど、全然慣らされてもいないから、されてる痛みに、体が強張る。
頭の後ろで縛られた布のようなモノが俯いた顔の横に垂れてきて、それが俊輔のしていたネクタイだった事に気付いた。それのせいで、叫ぼうにも、許しを請おうにも、声が、出せない。
……声が出ても、許してくれるとは思えないけれど。
「――――……っ……ンん!……ん……!」
何度も、ただ深く抉るだけ。
快感なんかかけらもなかった。
「……逃がすと、思ってんのかよ?」
「――――……っん……っ……ぅッ……」
縛られた手首ごと体をすこし引き上げられて、近づいたオレの耳元で囁いた。
「どうしてもここから出てぇっつうなら……男好きの変態にでも売り渡してやろうか……」
「……っ ……」
「それとも、族の奴らとヤレるように、どこかに繋ぐか? お前みたいなやつ好きなのも、 居るだろ……」
「…………ッ……」
囁かれる冷たい声と内容に、寒気がする。
けれど同時に。
俊輔じゃない奴となんか、絶対嫌だ。
それがぱっと頭に浮かんだ自分に驚いて、愕然と、した。
意味も分からないまま、涙がこぼれ落ちて、俯いた。
「……っ……ん、ぅ……!」
ベッドにまた頭を押しつけられて、後ろから激しくされて、揺らされるたびに、涙がこぼれ落ちていく。
「……ん……ん、……ぅ……ン……!」
……痛い。
――――……いつもみたいな快感なんか、微塵もなくて。
俊輔が動くたびに、ヒドイ痛みが走る。
手首も、痛い。
「……っ……ンゥ……」
この感覚が酔いなのか薬のせいなのか、とにかく色々麻痺してる。ぼんやりしてて、きっと話せても、呂律が回らないかもしれない。
気持ちよくなる類の薬なのかなと思うのだけどでも、なんだか、全然快感は無くて。
痛みの感覚だけが強烈に、はっきりとしていて。
どんなに堪えても、喉の奥から悲鳴が漏れる。
こんな風に抱かれて初めて気付いたのは。
今までは、しがみつける体勢で、俊輔は抱いててくれたんだということ。
それから……極力痛くないように、やっててくれたんだということ。
ただ犯そうと思うのならばこんな風に、無理矢理でも出来る。
傷つけようと思えば。痛めつけようと思えば、こんな風にいくらでも出来るのに。
――――……そうはしていなかったんだと、いうこと。
優しかったその行為に――――…… 今更、気付いた。
「――――……ッん、ぅ……ッ……」
痛みと酔いで何度か気が遠くなって。すると、酷く貫かれて無理矢理意識を戻させられて。
どれくらい、続くのかと、最初は終わりを待っていたのだけれど。
後の方はもう、諦めていた。
本当に、もう、殺されるのかなと、思った。
それだけ。……怒らせたんだと。
だから。
翌朝、目覚めた時は、不思議だった。
――――……ああ、生きてるんだなあ……と、驚いた。
99
お気に入りに追加
1,287
あなたにおすすめの小説
モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています
奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。
生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』
ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。
顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…?
自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。
※エロは後半です
※ムーンライトノベルにも掲載しています
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
真実の愛ならこれくらいできますわよね?
かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの
でもそれは裏切られてしまったわ・・・
夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。
ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?
白紙にする約束だった婚約を破棄されました
あお
恋愛
幼い頃に王族の婚約者となり、人生を捧げされていたアマーリエは、白紙にすると約束されていた婚約が、婚姻予定の半年前になっても白紙にならないことに焦りを覚えていた。
その矢先、学園の卒業パーティで婚約者である第一王子から婚約破棄を宣言される。
破棄だの解消だの白紙だのは後の話し合いでどうにでもなる。まずは婚約がなくなることが先だと婚約破棄を了承したら、王子の浮気相手を虐めた罪で捕まりそうになるところを華麗に躱すアマーリエ。
恩を仇で返した第一王子には、自分の立場をよおく分かって貰わないといけないわね。
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる