45 / 140
第二章
14.「ルーク」*真奈
しおりを挟む「だー……もー無理!」
散々ルークと駆け回った後、オレは芝生に座り込んだ。
「ルーク、おいでー」
ボールをくわえて戻ってきたルークを座らせて、その顔をじっと見つめる。
ハッハッと忙しく息をしながら、じっと見つめ返してくるルークに、自然と笑みが漏れた。
「……お前、ほんっと可愛いな~」
ぎゅう、と首に腕を回して抱き付くけれど、嫌がりもせずにそのままオレの為すがまま、大人しく座ってくれている。
「何でお前はこんなに素直なんだろ?」
少し離れて、その頭をナデナデしながら話しかける。
「お前のご主人様は素直じゃないっつーか、意味わかんないっつーか……あんななのに、何でお前はこんなに可愛いんだろうなぁ? 良かったな~、飼い主に似なくて」
笑いながら話しているオレをじっと見つめていたルークが、不意に動いたと思うと、オレにのしかかってきた。
「ぅわ!」
何やらものすごい勢いで顔を舐められる。
「くすぐっ…… こら、るー…… ちょ…… もー、お前、何キロあんだよー」
退けようとしても重くてなかなか動かない。
舐めてくるのは可愛いので手加減してるのもあるけれど、しばしの攻防の後、芝生の上に押し倒されてしまった。
オレの上で、わん、と軽く吠えたルークに、オレは笑い出した。
「……わん、じゃないよ……」
――――……はー…… 疲れた……。すごい走った。
つか、風呂、はいろ……。
何だかいっぱい舐められるし、いっぱい泥はついてるし、こんなんで部屋に居たら、絶対俊輔に怒られる……。
と、そこまで考えて。
――――……俊輔の悪口言ったから怒ったのかなあ?
ルークのつぶらな瞳に、オレはちょっと首を傾げつつ、また、クスクス笑った。
まっすぐ自分を見つめてるルークが可愛い。
「はー。すげー、疲れた……」
どれ位、走ってたかな……。
見上げる空はもう真っ暗で。隣にお座りしてるルークの背を撫でながら、ふう、と息をついた。
「――――……ルークもエサの時間だよな?」
言うと、またタイミング良く、「わん!」と吠える。
「……やっぱお前って、言葉の意味分かってるのかなぁ?」
クスクス笑いながら、むく、と起き上がった瞬間。
ルークがぴく、と反応して駆け出して、同時にオレも人の気配を感じて振り返った。
「え」
西条さんだと思ったその足音の主は、俊輔だった。
「あ」
……つか、何か言いながら来てくんないかな。
さっきの、飼い主に似なくて、とか、聞かれてないよね……?
……た、たぶん、大丈夫なはず。あの時はまだ近くには居なかった、と思うんだけど……。
ルークも気づいてなかったもんな、平気だよね。
「ワン!」
嬉しそうにしっぽを振って、ルークが俊輔にまとわりついている。
それを俊輔が頭を撫でながら、あやしている。
――――……こんな、愛想のないご主人様でも、やっぱり嬉しいんだなぁ……
ルークの喜び方が可愛くて、ふ、と笑ってしまう。
142
★読んでくださってありがとうございます(^^)
★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
お気に入りに追加
1,378
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
王は約束の香りを娶る 〜偽りのアルファが俺の運命の番だった件〜
東院さち
BL
オメガであるレフィは母が亡くなった後、フロレシア国の王である義父の命令で神殿に住むことになった。可愛がってくれた義兄エルネストと引き離されて寂しく思いながらも、『迎えに行く』と言ってくれたエルネストの言葉を信じて待っていた。
義父が亡くなったと報されて、その後でやってきた遣いはエルネストの迎えでなく、レフィと亡くなった母を憎む侯爵の手先だった。怪我を負わされ視力を失ったレフィはオークションにかけられる。
オークションで売られてしまったのか、連れてこられた場所でレフィはアルファであるローレルの番にさせられてしまった。身体はアルファであるローレルを受け入れても心は千々に乱れる。そんなレフィにローレルは優しく愛を注ぎ続けるが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる