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第二章

12.「俊輔について」*真奈

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 酒多し。タバコ多し。……あ、でも、そういえば最近タバコは減ったかも。
 ……あれ? 全然吸ってるの見ないかも。

 夜更かしは当たり前。 ていうか、早い時間にほとんど家には居ない。

 そのくせ、朝はやたら早いし、何だか色々忙しそう。
 でも何で忙しいのかは、詳しい事は知らない。

 彼女が居るかは、不明。
 オレにあんなことしてる感じだと……居そうな気がしないけど。でも、居ない時間も長いし、分からない。
 なんか、一人に決めずに遊んでそうな気も、する。

 血液型不明。 ……聞いてないから。
 誕生日不明。なので星座も干支も不明。
 家族構成不明。でも、家族はこの屋敷にはいないと思う。
 趣味も不明。

 ……性格も、不明。というか、よくわかんない。

 好きな物、好きな事、好きな食べ物、及び、嫌いなそれらも、不明。
 とにかく、面倒なことは、嫌いそうな気がする。

 ……まあこの不明なものの内、何となく予測のつくもの、少しはあるけれど。
 車とかバイクとかは、好きだと思う。たまに、部屋にそういう雑誌がおいてある。
 家族は、とりあえず父親は居るらしい。多分兄弟は居ない。これは、西条さんの言葉の端々でなんとなく。

 まあ。
 ……総じて言えば、知らない事、ばかり、てこと。

 一緒に暮らして。
 二人きりでこんなに過ごして。毎日のように抱かれてるのに、何も知らない。

 まともに話した事も、ないし。楽しそうに笑った顔も、見たことないし。
 ……ていうか、俊輔って、笑うのかな??
 こないだ凌馬さんと話してた時、少しは笑ってた? 苦笑い?
 うーん。

 ……おかしい、よなあ、こんなの。こんなに知らない人と過ごしてるの。

 まあでも。……俊輔だって、オレの事、知らないけど。

 笑った顔とかも、ほとんど……というか、見せた事ないし。だって、俊輔の前で笑うのが難しいから。
 ――――……ちゃんと話そうとした事も、ないし。

 って、そもそも、普通に起きてる時間に俊輔が居るなんて、滅多にないけど。
 ……ていうか、昨日みたいに、早く帰ってこられたら、逆に困るし。

 昨日なんか、もう早く、ベッドに入った方が楽だと、一瞬脳裏を掠めたり。
 ……でもやっぱり、嫌だと思ったり。

 ……なんかもう…… 考えてるだけで 疲れる、なあ……。
 はー、と息をついた時。

 こんこん、とノック音がして、返事をすると、西条さんが入ってきた。
 

「真奈さん、ルークと走られるのなら、小屋から出して来ましょうか?」
「あ、後で自分で行きます」

 ルークと走り回って気分を晴らすのも良いかもしれない。うん。
 返事をしてから、俊輔の机周りで何かしている西条さんに目を向ける。

「……西条さん」
「はい?」

 振り返った西条さんのまっすぐな視線に一瞬気後れしながらも、オレは口を開いた。

「……俊輔の誕生日って、いつですか?」
「――――……」

 変な顔をされるかなとは思っていたけれど、思っていた以上の沈黙も一緒に返ってきて、思わず黙って見守っていると。
 西条さんは、苦笑いを浮かべた。

「……若にお聞きになれば良いのでは?」
「そうなんですけど……でも……」
「聞き難いですか?」
「……そう、ですね……」

 するとまた西条さんはクスッと笑った。
 こんな風に笑顔を見せてくれると、ちょっとホッと出来て、嬉しい。

 ――――……無表情だと何やらものすごい迫力があって、ある意味俊輔より怖い。

 

 
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