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第二章

10.「もう無理」*真奈

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 もう、ほんと、無理……。
 
 散々抱かれて、最後はまた落ちたみたいだった。ふと目が覚めて時計を見ると、まだ二十二時前。今日は俊輔が返ってきたのが早かったからか……。

 俊輔は、今はシャワーを浴びてる音が聞こえる。側に居なくて、良かった。

「――――……」

 ため息が漏れてしまう。

 本当、こんなの、無理……。

 何で、どーして、あんな風に抱くんだろう。
 ……なんで、あんな風に、見つめんだよ。

 つーか…… 今までも、あんな感じだったんだろうか。
 俊輔はいつも、あんな風に抱いてたんだろうか。
 ……オレの反応も、ずっと、ああだったんだろうか。

 翻弄されて、声を抑えられなくて、俊輔のすることに、もう何もかも分からなくなって。

「~~~……ッ……」

 もう俊輔の顔なんか、見れない。そんな風に、思ってしまう程。恥ずかしいというのか何なのか。もともとそんなに素面で向かい合うなんて事はなかったけど、でも今、本当に無理。
 ため息をついた時。俊輔がバスルームから出てくる音がした。

 もうオレ、今日は寝たふりで過ごす。そう決めて、枕に突っ伏して、絶対動かないことを誓った。

 しばらくしてから、かさっという紙の音が聞こえる。俊輔が近づいてくるのが分かった。

 寝た振り寝た振り……。
 起きれない。顔なんか見れない。
 ましてもう一度、なんてなったら、それこそ、耐えられない。

 すると、ベッドに俊輔が座る気配がして。
 ――――……何を開けているのか、静かに紙を破るような音。その後、俊輔の動く気配がしない。

 何をしてるんだろう、と不思議に思いながらも、その疑問よりも、顔を合わせたくない気持ちの方が強かったので、ひたすら眠った振りを続けていると。

 枕を抱えるような感じで伸ばしていた左手首に、俊輔が触れた。

 ……何??

 何とか動かずに耐えられたのだけれど、何やら、ヒヤリとした冷たい感触が触れて。それが、手首に、する、と収まった。

 ……何? ……なんだろ、この感触 ???
 左手、何……?

 しばらく葛藤の末、好奇心に負けて、オレはゆっくりと寝返りを打った。

「……起きたのか」
 俊輔が穏やかに言う。

「……うん」

 何かを右手に持ったまま、俊輔がふ、とオレを見つめる。
 視線をあわせる事が出来ないまま、オレはゆっくりと起きあがって、いまだ手首にある冷たい感触に目を向ける。

「――――……?」

 手首に収まっているのは――――……何やら、綺麗なブルーの石の入ったバングルだった。

「……なに……??」
「――――……やる」

「え??」

 先程までの葛藤すらも忘れて、まっすぐ俊輔を見つめる。

「いいから、好きな時、つけてろ」
「……うん」

 何だろう、これ? とすごく思いながら、それでも頷く。

「水」
 また持ってきてくれてたらしいペットボトルを渡されて、喉を潤しながらも、手首のバングルが目に入る。

「……ちょうど良い。誕生日の祝いだ」
「え」

 俊輔から漏れた意外な言葉に、ただ呆けて、俊輔を見つめてしまった。
 すると、物凄く嫌そうな顔で俊輔がオレを睨む。

「……なんだよ」
「……え。……あ、いや……あり、がと……」

 これは……ありがと、でいいんだろうか。
 ……でも、さっきまで誕生日知らなかったんだから、誕生日プレゼントっていうの変だけど……。

 誕生日とか関係なく、もともと買ってきてくれてたってこと?

 ……何で??
 色んな不思議が沸いては、聞けずに消えていく。


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