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第二章

9.「勘弁してほしい」*真奈

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 そんなような、意味の分からない様々な事を延々考えながら日曜を過ごした。
 そしたらなんと。日曜は、抱かれなかった。起こされず、月曜の朝、超すっきり目覚めたけど、それでももう俊輔は居なかった。

 ……昨日は疲れてたのかな? 二か月居るけどしなかったのは用事で居なかった時位で、帰ってきてたっぽいのに、何もされなかったのは初めてかも。
 またまた引き続きモヤモヤした一日を過ごした。

 夕飯を軽く食べ終えて、付けたテレビをぼんやりと見ていた時だった。
 ドアが開いて――――…… 振り返ると、俊輔が居た。

 こんな時間に帰ってきた事はないのに、何でこんな悩んでる日に限って、と。タイミングの悪さに戸惑う。
 何だか気まずくて、コーヒーを淹れると言って逃げたら、俊輔はシャワーを浴びに行った。

 それで、戻ってきたと思ったら、急に誕生日を聞かれた。
 まさかオレの誕生日を聞かれるとは思ってなかったから、「誰の?」と聞いたら、とっても不愉快そうにされた。

 ……だって。
 他人の誕生日って、どういう意図がある時に聞くかっていうとさ。
 お祝いしてあげようかなとか……少なくともそういう気持ちが少しはある時に、普通は聞くものだと思う訳で。
 ……だから、聞かれるとは、思わなかった。

 でもって更に過ぎてたってことで、かなり言いづらくて小さく言うと。
 とっても睨まれた……。

 一応、何日か前に気づいて、あ、誕生日だなあとは思った。忘れてた訳じゃない。
 まあ当日は、集会が嫌すぎて、すっかり忘れていたんだけど。 

 絶対「関係ない」って言われると思ったから、覚えていた時も言わなかった。
 自分が傷つくと分かっている言葉を、敢えて言われることを好む趣味は、オレには、ないし。

 俊輔がオレの誕生日なんか、聞きたいと思うなんて、そんな事、ある訳ないし。
 ……そう思ったから、黙ってたんだけど……。

 ……何でこんなに睨むんだろう。
 何も言わずに黙っていると、しばらくして。

「分かった」
 と言って、少し離れて座った。 

 また何を怒ってるんだかよくわかんないな……。
 誕生日聞きたかったの? ……んなこともないだろうし? 

 戸惑いながらも、淹れ終えてたコーヒーを俊輔に渡して、オレもソファに座った。
 気まずいまま、コーヒーを飲む。
 ただぼんやりと、テレビを目に映していると、俊輔がやけに早くコーヒーを飲み終えて、立ち上がった。

 背後の方で、冷蔵庫を開けてる気配。
 ……コーヒーの後にお酒……。あんまり、飲む人居ないんじゃないかな……。おいしいのかな……?
 俊輔ってよくお酒飲むけど、これっぽっちも赤くならない。よっぽど強いのかなぁ……。

  ああ、それにしても。
 こんな時間に、ふたりで居るとか。こんなシチュエーション無かったから、かなり困る。

 ため息を付きながら、やっと飲み終えたコーヒーのマグカップをテーブルに置いて、これからどうしたらいいのか悩んでいた時だった。真後ろに不意に感じた気配。振り向く間もなく、後ろから顎に手が回ってきて、上向かせられた。

「え」 

 端正な顔が目の前にあって、驚いてる間に、唇が重なった。

 見つめ合ったままの、キス。
 目を閉じられなくて、困っていると。

「……何で目ぇ開けてんだよ?」

 と言われて。
 何て答えたらいいか困っていると、俊輔の手が、顎から首筋へと滑り降りた。
 瞬間、びくん、と体が反応した。
 怪訝そうに見られて、余計に焦った。

 昨日の自分、思い出して、しまった。
 顔が一気に熱くなっていったのが分かる。

 シャワーに逃げようとしたけど、すぐに引き戻されてしまう。

 何をどう思ってるのかは知らないけど、かなり不機嫌な俊輔。
 正直に言うしか無かった。咄嗟にウマイ嘘なんか、出てくる筈もなく。

 薬を使われなかったから、キツイって言ったのに。

 自分がどう抱かれてるかとか、俊輔が、どんな顔してるか、とか。
 ――――……どんな風に、触れられてるかとか。

 全部覚えてて、キツイって、言ったのに。
 唇がいきなり深く重なってきて、本格的なキスに、心底、焦る。

 薬を使わないのかと聞けば、使わないって言われるし。

 何で、使わなくなったんだろう。マジで勘弁してほしい。
 逃げてしまいたくて、たまらない。

「……そのままでも、感じるんだろ。ならその方が感覚はっきりしてて良い」

 そんな風に言われて、一瞬その意味を考えて、それから、一昨日の自分を思いだして。
 止めることも出来ず、顔がどうしようもなく、熱くなった。

 思わず本格的に逃げようと後ずさった腕を掴まれて、そのままベッドへと引きずるように連れられて。
 すぐに覆い被さってくる俊輔のキスに、きつく瞳を閉じるしか出来なかった。

 

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