33 / 138
第二章
2.「初めて」*真奈
しおりを挟む「……んなこと言っても、何だよ?」
「……怖いとか考えてなかったから……」
「考えなかった?」
「オレが刺されるとかそういうの……一瞬、何も考えずに出たから……あの時は怖くはなかった」
そう言ったら、俊輔がため息をついた。
「――――……お前、誰でもそうか」
「……?」
「……ここに来るきっかけになったのだって、他人の為だろ」
「……」
まあそう、だけど……。
でもオレがここに居なきゃいけなくなったのは、他人の為っていうよりは……。
……俊輔のせいっていうか……。確かに、あいつのかわりにどうなっても良いとは、言ったけど……。
「……オレの事も、助けるのか?……同じように……」
「……」
でも口に出せなかったのは。
俊輔の言い方が、態度が……何だか、どうも、よく分からない、というか……。
なんか、いつもと、違う感じがするから。
「オレが死んだ方が、いいんじゃねえの」
「……え……?」
オレは思わず眉を寄せて、俊輔を見つめた。
「オレが居なくなればお前は自由だろ」
「――――……」
自分をあざけるみたいな、変な笑い方。
なぜだかその言葉が――――…… すごく切なかった。
胸が痛くなるようなその感覚に、まっすぐに俊輔を見つめていたけど。
「……オレ……」
「――――……」
「……そんな風に……俊輔が居なくなればいいなんて……思ってないし」
確かに最初の頃は――――……殺してやりたいとか、少しは思ったけど……。
結局人を殺すという行為が出来るはずもなくて。しかも、自分がどうなっても良いと言った手前、自分を責める気持ちもあったし。
そんなこと、出来る訳ないってことで、考えなくなったって感じだったけど……。
だけど。 何だか今は。
できない、とかじゃなくて。そうじゃなくて……。
「……死んだ方がいいなんて、思ってない……」
それは素直に口に出た言葉だった。
別に、睨まれているからでもなければ、機嫌を取ろうとか、そういうのもなくて。
「……俊輔が危ないと思ったから。邪魔だったのかもしんないけど、一応助けに行ったつもりなんだけど……なんでそんなに怒んのか、全然分かんない……」
「――――……」
「……しゅんすけ……?」
答えない俊輔に引き寄せられて、また組み敷かれる。
「……」
真上の顔を見つめる。
ふっと今夜の集会での、周囲の俊輔を見る視線を思い出す。
ルックス良くて頭良さそうで……女にはモテるだろうし。男にも、憧れてる奴らはいっぱい居そうだったし。
半端じゃなくお金持ちで。何もかも持ってそうで。
……なのに、何でオレを、ここに置いて置くんだろう。
最初はオレの事がどうしても気に食わなくて、ただ苦しめる為にしてんのかと思ってたんだけど。なんか……。
「真奈」
「……?」
「……何で……」
「え?」
「――――……何でも、ねえ」
最後まで言わずに、俊輔は言葉を切る。
またキスされて――――……手が触れてくる。
「……っ……」
俊輔が、何で怒って、何を言いたいのか、本当に、全然分からない。
……どうすれば楽しそうに笑うのか、なんて事はもっと。全然、想像すらつかない。
俊輔って――――……どーなれば、楽しそうに、笑うのかな……。
「……ん……っ……」
段々何も考えられなくなっていく。
その日の俊輔は――――……結局、媚薬を使うことは無かった。それは、初めてで。
しかも、全然、離してくれなくて。
本当におかしくなりそうだった。
147
お気に入りに追加
1,312
あなたにおすすめの小説
風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!
白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿)
絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ
アルファ専用風俗店で働くオメガの優。
働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。
それでも、アルファは番たいらしい
なぜ、ここまでアルファは番たいのか……
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
※長編になるか短編になるかは未定です
溺愛オメガバース
暁 紅蓮
BL
Ωである呉羽皐月(クレハサツキ)とαである新垣翔(アラガキショウ)の運命の番の出会い物語。
高校1年入学式の時に運命の番である翔と目が合い、発情してしまう。それから番となり、αである翔はΩの皐月を溺愛していく。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
愛しいアルファが擬態をやめたら。
フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」
「その言い方ヤメロ」
黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。
◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。
◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。
1人のαと2人のΩ
ミヒロ
BL
αの筈の結月は保健室で休んでいた所を多数に襲われ妊娠してしまう。結月はΩに変異していた。僅か12歳で妊娠してしまった結月だったが。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
·.⟡┈┈┈┈┈︎ ✧┈┈┈┈┈⟡.·
BLを書くに辺り、ハッシュタグでオメガバースを知り、人気なんだな、とネットで調べて初めて書いたオメガバースものです。
反省点、多々。
楽しみながら精進します☆
全寮制の学園に行ったら運命の番に溺愛された話♡
白井由紀
BL
【BL作品】
絶対に溺愛&番たいα×絶対に平穏な日々を過ごしたいΩ
田舎育ちのオメガ、白雪ゆず。東京に憧れを持っており、全寮制私立〇〇学園に入学するために、やっとの思いで上京。しかし、私立〇〇学園にはカースト制度があり、ゆずは一般家庭で育ったため最下位。ただでさえ、いじめられるのに、カースト1位の人が運命の番だなんて…。ゆずは会いたくないのに、運命の番に出会ってしまう…。やはり運命は変えられないのか!
学園生活で繰り広げられる身分差溺愛ストーリー♡
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承ください🙇♂️
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる