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第二章

1.「救われない」*真奈

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 やっと屋敷に帰り着いた。バイクを降りて歩いてる間もずっとずっと黙ったままの俊輔。
 出迎えた西条さんだけには軽く答えて、また部屋に入ると無言だった。

 俊輔に続いて洗面台で手を洗って戻ると、俊輔は、凌馬さんから受け取ったナイフを棚の上に置いてから、オレを振り返った。ものすごく重くて気まずい雰囲気をどうにかしたくて、せめて声を出そうと思って話しかけた。

「俊輔、先にシャワー浴びる?」
「……後で良い」
「……じゃ先にオレ入っていい? なんか汗かいて……」
「お前も後だ」

 ぐい、と引き寄せられて、オレは俊輔を振り仰いだ。

「……俊輔……?」

 顔を改めて見てますます困惑する。なんかすごく、怒ってる、ように見える。
 どうしてそんなに怒っているのか、本気で全然分からない。

 オレ、さっき、助けに入ったのに。
 ……こんなに怒られるって、ある?? ひどくないかな……。
 思わず、眉を顰めた瞬間。
 
「……ッ……ん?」

 荒々しく塞がれた唇。抵抗する気もしなくて、オレは瞳を伏せた。
 熱っぽくて激しいキス。俊輔はそうしながら、オレのズボンのベルトに手をかけた。

 このまま、やんの……?
 逆らっても無駄だろうとは分かっていたけれど、オレはちょっとだけ俊輔の身体を押し返した。

「シャワー……浴び」

 やっぱり最後まで言わせてもらえなかった。途中で唇が重なってきて、舌が奪われる。
 器用にベルトがはずされて、ジッパーが下ろされた。

「……しゅ……ん、ん……っ」

 巧みに触れてくる俊輔の指に、身体が勝手に反応する。

「――――や……ッ……」

 いいように弄られて、あっという間にイかされてしまったオレは、上がった息を必死に潜めながら、俊輔にしがみつく。そのまま軽く抱き上げられたと思ったら、寝室に連れて行かれて、すぐにベットに押し倒されて上に乗られる。

 ローションを手に取ると、下に押し込まれて、慣らされる。
 いきなり、それなんだと思うと。性急すぎて、怖くなる。

「待っ……」
「……あ?」

 一応返事はしてくれながらも、中をどんどん刺激されて、体温が上がる。

「……ッ……んん……ぁ…………っしゅんすけ……あ、の……」
「んだよ?」

 性急すぎると、すごく怖い。媚薬を使わずに、こんな風にされるのは初めてで。

「……ゆっくり、がいい……」

 言って、俊輔にしがみつく。
 俊輔がオレを至近距離から、見下ろした。

「何だ……怖ぇ?」

 俊輔の声に、オレはこく、と頷いた。

「……刺されるよりはマシだろうが」
「……え?」

 何を言いたくて言ってるのか分からなかった。俊輔を見上げると、俊輔は苛ついたように舌打ちをする。
 オレから手を離すと、オレを見下ろして睨みつけた。

「……お前、何であんな無茶した? 凌馬が居なかったら、刺されてたかもしれない。そっちのがよっぽど怖ぇんじゃねえのかよ」
「……そんなこと……言われても……」

 半端な愛撫に涙がにじむ目で、オレを見下ろす俊輔を見上げる。

 真正面から睨まれて、どうしても納得できない。
 何でこんなに、怒られてるんだろう、オレ。
 ……大体オレ、何したんだっけ?…… 確か一応助けようとしたはず。

 それとも、オレがあそこで動かなければ、俊輔はあいつに気付いて、問題なく倒したとでも言いたいのかな?
 オレが余計な事したって、言いたいのかな……。

 だとしたら、ほんとに救われないけど……。



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