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第一章
28.「凌馬さん」*真奈
しおりを挟むとにかく誰にでも譲ってあげる、あの部屋で暮らすの。
祈るような気持ちで、心の中でそう言ってると。
「だから、真奈ちゃんも、居たくて居るんじゃねえかって、勘違いしちまう」
その言葉に、オレは、思わず正直にブルブルと首を横に振った。はっと気付いて、首を止めるがもう遅い。
一瞬焦ったオレを見て、彼は笑う。
「ああ、俊輔も言ってた」
「……え?」
「オレが無理矢理つないでるだけ、みたいなこと」
「……」
――――……俊輔が、そう、言ってたんだ……。
何と言っていいか分からずに黙っていると。
「何がそんなに気に入ったんかな、真奈ちゃんの」
クス、と笑って、オレをまっすぐに見つめた。
「可愛い顔はしてっけど……やっぱ真奈ちゃん、どっから見ても男だもんな……」
「……」
当たり前……。というかなぜ、「真奈ちゃん」??
思わず、じろ、と見かけたけれど、周囲の連中が何を話しているのかと興味深そうにずっとこちらを伺っているので、それはやめておいた。
睨んだ瞬間に、命の危機にさらされそうな気が、する。
「俊輔、男なんて初めてだぜ、絶対」
「――――……」
こく、とオレは頷いた。
「男なんかやるのは初めてだ」と、最初に言ってた。
男を抱いてる奴に抱かれた事ないから分かんないけど、でも俊輔が慣れてなかった事は、最初の頃を思い出せばすぐ納得できる。
薬は使われたけれど、それでも……。慣れた今とは、全然違う。
……あれ。
――――……ていうか…… 今この人……。
ふっと、その言葉の意味に気づき、振り仰ぐ。
「ん? なんだ?」
「あの……」
「凌馬でいーけど?」
言って、クスクス笑った。
「……凌馬、さんは……オレと俊輔が、どんな関係で居るのか、知ってるんですか」
「どんな関係って……そういう関係なんだよな?」
けろっとして聞いてくる凌馬さんに、オレは逆に目を丸くした。
「…… 俊輔、一体なんて……」
「俊輔?……ああ…… 男、抱きたいと思った事あるかって聞かれたから」
「……」
「無いって答えた。そんで、お前はあんのかって聞いた」
「……」
「そん時、聞いた」
俊輔らしいというのだろうか。らしくない、と言うのだろうか。
絶対に、誰にも言ってはいないのだろうと、思っていたのに。
友達に。それもかなり仲の良さそうな友達に、そんな事言える所に、改めて驚いて黙っていると。
「凌馬! おっせーぞ」
俊輔がファミレスから出てきて、声をあげた。
「うわ……機嫌悪ぃな……」
苦笑いしつつ言って、ちらっとオレを見てから、凌馬さんはまたおかしそうに笑った。
「真奈ちゃん構ってたから、ヤキモチ妬いてんのかね」
「……それは絶対ないと思いますけど」
オレが真顔で言うと、凌馬さんはまた笑った。
「――――……中で待ってるっつったの、お前だろうが」
近づいてきた俊輔のこの上なく不機嫌な声。
「悪りー悪りー」
軽く答える凌馬さんに、俊輔は大きなため息をついた。
――――……俊輔と、ほんとに、仲、良いんだろーな……。
こんな機嫌の悪い俊輔に、軽く笑顔で答える凌馬さんを、オレは何となく見つめてしまう。
「中で今日のルート話してたぞ、とっとと行け」
「へーへー。お前は行かないのか?」
「先行ってろよ」
「……はいはい」
面白そうにニヤリと笑い、凌馬さんは歩いていった。その凌馬さんの後を取り巻きのような連中がついていくのを、なんとなく見送る。
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