「Promise」-α×β-溺愛にかわるまでのお話です♡

悠里

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第一章

27.「何で」*真奈

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 でも、格好が与える印象に比べると、ずいぶんと優しい瞳をしていて、オレは何と言っていいのか一瞬戸惑った。
 すると、周囲でまた声が上がる。

「凌馬さん!」

 俊輔が来た時と同様、場が一気に盛り上がった。ただでさえ雰囲気は物凄いものがあったのに、そこにますます熱気が満ちる。
 
 ……とりあえず今日だけは、俊輔の家でいいから、いますぐに帰りたい……。
 願うオレの隣に居る、凌馬なる人のところに、族の一人が駆け寄ってきた。

「俊輔さん、来てます、今、中に」
「あぁ。分かってる。このバイク、あいつしかいねーだろ。悪ぃ、呼んできてくんねえか」
「はい!」

 こういう類の連中の上下関係って、すごいよなあ……。
 決して押しつけがましい命令ではなかったけれど、言われた男は一目散にファミレスへと走っていった。命令してもらえた事を、喜んでいるような。そんな感じ。

「……俊輔のバイクの側にメット持って立ってるって事はさ……」
「……?」

「真奈、だろ?」
「え……」

 何でこんな見も知らない人の口から自分の名前が飛び出るのか不思議に思いながら見つめ返した。

「俊輔と暮らしてる子だろ?」
「……はい」

 オレが小さく頷くと、ふ、と笑う。
 
「オレ、凌馬。俊輔とは学年一緒なんだがドジって留年しちまったから、族、引き継ぐ羽目になっちまったけど……で、もう二年目。オレも大学も二年だから、そろそろ引き継いで離れようと思ってるとこな」

 誰なんだろうと思ってるのがバレバレだったのか、簡単な自己紹介をしてくれた。

 一個ダブっているとはいえ、同じ学年で大学生? 
 ……とても信じられない。

 どうやって生きてくればこんなに迫力ある人間に育つんだろう。
 ……この人も。多分。アルファなんだろうなぁ……。

 父親、俊輔、多分西条さんも、そしてこの人も。
 ……ここに来てから、アルファと思う人たちにすごく会うけど……。

 ベータやオメガとは、ほんとに全然違うんだなあ……。
 変なことに感心しながら凌馬を見ていると、凌馬はふ、と唇の端をあげて、笑った。
 
「……ふうん……真奈ちゃん、ね。 ふーん……」

「……?」

 面白そうに笑いながら見つめられて、何だろうと思うけれど。
 それとともに気になるのは、周囲からの視線。
 前族長の俊輔のバイクに乗ってきた見も知らないオレが……今度は現族長に話しかけられている。
 誰なのあいつ、的な視線を、嫌でも、感じる……。正直、結構怖い。
  
 ああ……でもやっぱり、こっちの人も気になる。

「あの……どうして、オレの事、知ってるんですか?」
「ん? 俊輔に聞いたからだけど?」

「……何て、言って……」

「ん? ああ……一人、自分の部屋に連れ込んでる……とかだったかな?」

 クックッと笑いながら、彼はそう言った。

「びっくりしたぜ、そんな事する奴じゃねえから」
「……そんなことって、拉致監禁ですか?」

「ンん?」

「あ、ちょっと違うかもですけど……」

 ……自分から乗り込んだもんね。ついてくことを、一応頷きはしたっけ……。
 繋がれてる訳でもないし……ちょっと違うのかな……。うーん。

「――――……」

 あー……と、口を開けていた彼は、その後おかしそうにクッと笑い出した。
 ひとしきり笑った後、煙草をくわえて火をつけて、煙を燻らせる。

「……違うって。一人にそんな執着するよーな奴じゃなかったからさ」

「…………」

 ……全然ありがたくないけど。

 心の中で言ったオレを、彼は、ひょいと覗いた。
 
「そうだよな……お前にとったら迷惑な話でしかねえもんな?」

「――――……」

「何か勘違いしちまうんだよな」

「……」

「俊輔、すげえモテるからさ。ここらの奴なら、アイツにどこでもついてくって奴ばっかだし。だから、俊輔が部屋に囲ってるなんて、ここの奴らにとったら、羨ましいことでしかねえだろうから……」

 ……譲ってあげるけどな、喜んで。
 オレの代わりに俊輔の部屋で暮らしてくれて、全然いいのに……。
 
 心の中で、そうつぶやきながら。

 ……そうなんだろうなとは、思ってたけど。
 やっぱりモテるのか、と、ふうん、と、頭の中で納得。


 じゃあますます何で、という疑問も同時に浮かぶけど。




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