27 / 139
第一章
27.「何で」*真奈
しおりを挟む
でも、格好が与える印象に比べると、ずいぶんと優しい瞳をしていて、オレは何と言っていいのか一瞬戸惑った。
すると、周囲でまた声が上がる。
「凌馬さん!」
俊輔が来た時と同様、場が一気に盛り上がった。ただでさえ雰囲気は物凄いものがあったのに、そこにますます熱気が満ちる。
……とりあえず今日だけは、俊輔の家でいいから、いますぐに帰りたい……。
願うオレの隣に居る、凌馬なる人のところに、族の一人が駆け寄ってきた。
「俊輔さん、来てます、今、中に」
「あぁ。分かってる。このバイク、あいつしかいねーだろ。悪ぃ、呼んできてくんねえか」
「はい!」
こういう類の連中の上下関係って、すごいよなあ……。
決して押しつけがましい命令ではなかったけれど、言われた男は一目散にファミレスへと走っていった。命令してもらえた事を、喜んでいるような。そんな感じ。
「……俊輔のバイクの側にメット持って立ってるって事はさ……」
「……?」
「真奈、だろ?」
「え……」
何でこんな見も知らない人の口から自分の名前が飛び出るのか不思議に思いながら見つめ返した。
「俊輔と暮らしてる子だろ?」
「……はい」
オレが小さく頷くと、ふ、と笑う。
「オレ、凌馬。俊輔とは学年一緒なんだがドジって留年しちまったから、族、引き継ぐ羽目になっちまったけど……で、もう二年目。オレも大学も二年だから、そろそろ引き継いで離れようと思ってるとこな」
誰なんだろうと思ってるのがバレバレだったのか、簡単な自己紹介をしてくれた。
一個ダブっているとはいえ、同じ学年で大学生?
……とても信じられない。
どうやって生きてくればこんなに迫力ある人間に育つんだろう。
……この人も。多分。アルファなんだろうなぁ……。
父親、俊輔、多分西条さんも、そしてこの人も。
……ここに来てから、アルファと思う人たちにすごく会うけど……。
ベータやオメガとは、ほんとに全然違うんだなあ……。
変なことに感心しながら凌馬を見ていると、凌馬はふ、と唇の端をあげて、笑った。
「……ふうん……真奈ちゃん、ね。 ふーん……」
「……?」
面白そうに笑いながら見つめられて、何だろうと思うけれど。
それとともに気になるのは、周囲からの視線。
前族長の俊輔のバイクに乗ってきた見も知らないオレが……今度は現族長に話しかけられている。
誰なのあいつ、的な視線を、嫌でも、感じる……。正直、結構怖い。
ああ……でもやっぱり、こっちの人も気になる。
「あの……どうして、オレの事、知ってるんですか?」
「ん? 俊輔に聞いたからだけど?」
「……何て、言って……」
「ん? ああ……一人、自分の部屋に連れ込んでる……とかだったかな?」
クックッと笑いながら、彼はそう言った。
「びっくりしたぜ、そんな事する奴じゃねえから」
「……そんなことって、拉致監禁ですか?」
「ンん?」
「あ、ちょっと違うかもですけど……」
……自分から乗り込んだもんね。ついてくことを、一応頷きはしたっけ……。
繋がれてる訳でもないし……ちょっと違うのかな……。うーん。
「――――……」
あー……と、口を開けていた彼は、その後おかしそうにクッと笑い出した。
ひとしきり笑った後、煙草をくわえて火をつけて、煙を燻らせる。
「……違うって。一人にそんな執着するよーな奴じゃなかったからさ」
「…………」
……全然ありがたくないけど。
心の中で言ったオレを、彼は、ひょいと覗いた。
「そうだよな……お前にとったら迷惑な話でしかねえもんな?」
「――――……」
「何か勘違いしちまうんだよな」
「……」
「俊輔、すげえモテるからさ。ここらの奴なら、アイツにどこでもついてくって奴ばっかだし。だから、俊輔が部屋に囲ってるなんて、ここの奴らにとったら、羨ましいことでしかねえだろうから……」
……譲ってあげるけどな、喜んで。
オレの代わりに俊輔の部屋で暮らしてくれて、全然いいのに……。
心の中で、そうつぶやきながら。
……そうなんだろうなとは、思ってたけど。
やっぱりモテるのか、と、ふうん、と、頭の中で納得。
じゃあますます何で、という疑問も同時に浮かぶけど。
すると、周囲でまた声が上がる。
「凌馬さん!」
俊輔が来た時と同様、場が一気に盛り上がった。ただでさえ雰囲気は物凄いものがあったのに、そこにますます熱気が満ちる。
……とりあえず今日だけは、俊輔の家でいいから、いますぐに帰りたい……。
願うオレの隣に居る、凌馬なる人のところに、族の一人が駆け寄ってきた。
「俊輔さん、来てます、今、中に」
「あぁ。分かってる。このバイク、あいつしかいねーだろ。悪ぃ、呼んできてくんねえか」
「はい!」
こういう類の連中の上下関係って、すごいよなあ……。
決して押しつけがましい命令ではなかったけれど、言われた男は一目散にファミレスへと走っていった。命令してもらえた事を、喜んでいるような。そんな感じ。
「……俊輔のバイクの側にメット持って立ってるって事はさ……」
「……?」
「真奈、だろ?」
「え……」
何でこんな見も知らない人の口から自分の名前が飛び出るのか不思議に思いながら見つめ返した。
「俊輔と暮らしてる子だろ?」
「……はい」
オレが小さく頷くと、ふ、と笑う。
「オレ、凌馬。俊輔とは学年一緒なんだがドジって留年しちまったから、族、引き継ぐ羽目になっちまったけど……で、もう二年目。オレも大学も二年だから、そろそろ引き継いで離れようと思ってるとこな」
誰なんだろうと思ってるのがバレバレだったのか、簡単な自己紹介をしてくれた。
一個ダブっているとはいえ、同じ学年で大学生?
……とても信じられない。
どうやって生きてくればこんなに迫力ある人間に育つんだろう。
……この人も。多分。アルファなんだろうなぁ……。
父親、俊輔、多分西条さんも、そしてこの人も。
……ここに来てから、アルファと思う人たちにすごく会うけど……。
ベータやオメガとは、ほんとに全然違うんだなあ……。
変なことに感心しながら凌馬を見ていると、凌馬はふ、と唇の端をあげて、笑った。
「……ふうん……真奈ちゃん、ね。 ふーん……」
「……?」
面白そうに笑いながら見つめられて、何だろうと思うけれど。
それとともに気になるのは、周囲からの視線。
前族長の俊輔のバイクに乗ってきた見も知らないオレが……今度は現族長に話しかけられている。
誰なのあいつ、的な視線を、嫌でも、感じる……。正直、結構怖い。
ああ……でもやっぱり、こっちの人も気になる。
「あの……どうして、オレの事、知ってるんですか?」
「ん? 俊輔に聞いたからだけど?」
「……何て、言って……」
「ん? ああ……一人、自分の部屋に連れ込んでる……とかだったかな?」
クックッと笑いながら、彼はそう言った。
「びっくりしたぜ、そんな事する奴じゃねえから」
「……そんなことって、拉致監禁ですか?」
「ンん?」
「あ、ちょっと違うかもですけど……」
……自分から乗り込んだもんね。ついてくことを、一応頷きはしたっけ……。
繋がれてる訳でもないし……ちょっと違うのかな……。うーん。
「――――……」
あー……と、口を開けていた彼は、その後おかしそうにクッと笑い出した。
ひとしきり笑った後、煙草をくわえて火をつけて、煙を燻らせる。
「……違うって。一人にそんな執着するよーな奴じゃなかったからさ」
「…………」
……全然ありがたくないけど。
心の中で言ったオレを、彼は、ひょいと覗いた。
「そうだよな……お前にとったら迷惑な話でしかねえもんな?」
「――――……」
「何か勘違いしちまうんだよな」
「……」
「俊輔、すげえモテるからさ。ここらの奴なら、アイツにどこでもついてくって奴ばっかだし。だから、俊輔が部屋に囲ってるなんて、ここの奴らにとったら、羨ましいことでしかねえだろうから……」
……譲ってあげるけどな、喜んで。
オレの代わりに俊輔の部屋で暮らしてくれて、全然いいのに……。
心の中で、そうつぶやきながら。
……そうなんだろうなとは、思ってたけど。
やっぱりモテるのか、と、ふうん、と、頭の中で納得。
じゃあますます何で、という疑問も同時に浮かぶけど。
131
お気に入りに追加
1,336
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる