27 / 141
第一章
27.「何で」*真奈
しおりを挟む
でも、格好が与える印象に比べると、ずいぶんと優しい瞳をしていて、オレは何と言っていいのか一瞬戸惑った。
すると、周囲でまた声が上がる。
「凌馬さん!」
俊輔が来た時と同様、場が一気に盛り上がった。ただでさえ雰囲気は物凄いものがあったのに、そこにますます熱気が満ちる。
……とりあえず今日だけは、俊輔の家でいいから、いますぐに帰りたい……。
願うオレの隣に居る、凌馬なる人のところに、族の一人が駆け寄ってきた。
「俊輔さん、来てます、今、中に」
「あぁ。分かってる。このバイク、あいつしかいねーだろ。悪ぃ、呼んできてくんねえか」
「はい!」
こういう類の連中の上下関係って、すごいよなあ……。
決して押しつけがましい命令ではなかったけれど、言われた男は一目散にファミレスへと走っていった。命令してもらえた事を、喜んでいるような。そんな感じ。
「……俊輔のバイクの側にメット持って立ってるって事はさ……」
「……?」
「真奈、だろ?」
「え……」
何でこんな見も知らない人の口から自分の名前が飛び出るのか不思議に思いながら見つめ返した。
「俊輔と暮らしてる子だろ?」
「……はい」
オレが小さく頷くと、ふ、と笑う。
「オレ、凌馬。俊輔とは学年一緒なんだがドジって留年しちまったから、族、引き継ぐ羽目になっちまったけど……で、もう二年目。オレも大学も二年だから、そろそろ引き継いで離れようと思ってるとこな」
誰なんだろうと思ってるのがバレバレだったのか、簡単な自己紹介をしてくれた。
一個ダブっているとはいえ、同じ学年で大学生?
……とても信じられない。
どうやって生きてくればこんなに迫力ある人間に育つんだろう。
……この人も。多分。アルファなんだろうなぁ……。
父親、俊輔、多分西条さんも、そしてこの人も。
……ここに来てから、アルファと思う人たちにすごく会うけど……。
ベータやオメガとは、ほんとに全然違うんだなあ……。
変なことに感心しながら凌馬を見ていると、凌馬はふ、と唇の端をあげて、笑った。
「……ふうん……真奈ちゃん、ね。 ふーん……」
「……?」
面白そうに笑いながら見つめられて、何だろうと思うけれど。
それとともに気になるのは、周囲からの視線。
前族長の俊輔のバイクに乗ってきた見も知らないオレが……今度は現族長に話しかけられている。
誰なのあいつ、的な視線を、嫌でも、感じる……。正直、結構怖い。
ああ……でもやっぱり、こっちの人も気になる。
「あの……どうして、オレの事、知ってるんですか?」
「ん? 俊輔に聞いたからだけど?」
「……何て、言って……」
「ん? ああ……一人、自分の部屋に連れ込んでる……とかだったかな?」
クックッと笑いながら、彼はそう言った。
「びっくりしたぜ、そんな事する奴じゃねえから」
「……そんなことって、拉致監禁ですか?」
「ンん?」
「あ、ちょっと違うかもですけど……」
……自分から乗り込んだもんね。ついてくことを、一応頷きはしたっけ……。
繋がれてる訳でもないし……ちょっと違うのかな……。うーん。
「――――……」
あー……と、口を開けていた彼は、その後おかしそうにクッと笑い出した。
ひとしきり笑った後、煙草をくわえて火をつけて、煙を燻らせる。
「……違うって。一人にそんな執着するよーな奴じゃなかったからさ」
「…………」
……全然ありがたくないけど。
心の中で言ったオレを、彼は、ひょいと覗いた。
「そうだよな……お前にとったら迷惑な話でしかねえもんな?」
「――――……」
「何か勘違いしちまうんだよな」
「……」
「俊輔、すげえモテるからさ。ここらの奴なら、アイツにどこでもついてくって奴ばっかだし。だから、俊輔が部屋に囲ってるなんて、ここの奴らにとったら、羨ましいことでしかねえだろうから……」
……譲ってあげるけどな、喜んで。
オレの代わりに俊輔の部屋で暮らしてくれて、全然いいのに……。
心の中で、そうつぶやきながら。
……そうなんだろうなとは、思ってたけど。
やっぱりモテるのか、と、ふうん、と、頭の中で納得。
じゃあますます何で、という疑問も同時に浮かぶけど。
すると、周囲でまた声が上がる。
「凌馬さん!」
俊輔が来た時と同様、場が一気に盛り上がった。ただでさえ雰囲気は物凄いものがあったのに、そこにますます熱気が満ちる。
……とりあえず今日だけは、俊輔の家でいいから、いますぐに帰りたい……。
願うオレの隣に居る、凌馬なる人のところに、族の一人が駆け寄ってきた。
「俊輔さん、来てます、今、中に」
「あぁ。分かってる。このバイク、あいつしかいねーだろ。悪ぃ、呼んできてくんねえか」
「はい!」
こういう類の連中の上下関係って、すごいよなあ……。
決して押しつけがましい命令ではなかったけれど、言われた男は一目散にファミレスへと走っていった。命令してもらえた事を、喜んでいるような。そんな感じ。
「……俊輔のバイクの側にメット持って立ってるって事はさ……」
「……?」
「真奈、だろ?」
「え……」
何でこんな見も知らない人の口から自分の名前が飛び出るのか不思議に思いながら見つめ返した。
「俊輔と暮らしてる子だろ?」
「……はい」
オレが小さく頷くと、ふ、と笑う。
「オレ、凌馬。俊輔とは学年一緒なんだがドジって留年しちまったから、族、引き継ぐ羽目になっちまったけど……で、もう二年目。オレも大学も二年だから、そろそろ引き継いで離れようと思ってるとこな」
誰なんだろうと思ってるのがバレバレだったのか、簡単な自己紹介をしてくれた。
一個ダブっているとはいえ、同じ学年で大学生?
……とても信じられない。
どうやって生きてくればこんなに迫力ある人間に育つんだろう。
……この人も。多分。アルファなんだろうなぁ……。
父親、俊輔、多分西条さんも、そしてこの人も。
……ここに来てから、アルファと思う人たちにすごく会うけど……。
ベータやオメガとは、ほんとに全然違うんだなあ……。
変なことに感心しながら凌馬を見ていると、凌馬はふ、と唇の端をあげて、笑った。
「……ふうん……真奈ちゃん、ね。 ふーん……」
「……?」
面白そうに笑いながら見つめられて、何だろうと思うけれど。
それとともに気になるのは、周囲からの視線。
前族長の俊輔のバイクに乗ってきた見も知らないオレが……今度は現族長に話しかけられている。
誰なのあいつ、的な視線を、嫌でも、感じる……。正直、結構怖い。
ああ……でもやっぱり、こっちの人も気になる。
「あの……どうして、オレの事、知ってるんですか?」
「ん? 俊輔に聞いたからだけど?」
「……何て、言って……」
「ん? ああ……一人、自分の部屋に連れ込んでる……とかだったかな?」
クックッと笑いながら、彼はそう言った。
「びっくりしたぜ、そんな事する奴じゃねえから」
「……そんなことって、拉致監禁ですか?」
「ンん?」
「あ、ちょっと違うかもですけど……」
……自分から乗り込んだもんね。ついてくことを、一応頷きはしたっけ……。
繋がれてる訳でもないし……ちょっと違うのかな……。うーん。
「――――……」
あー……と、口を開けていた彼は、その後おかしそうにクッと笑い出した。
ひとしきり笑った後、煙草をくわえて火をつけて、煙を燻らせる。
「……違うって。一人にそんな執着するよーな奴じゃなかったからさ」
「…………」
……全然ありがたくないけど。
心の中で言ったオレを、彼は、ひょいと覗いた。
「そうだよな……お前にとったら迷惑な話でしかねえもんな?」
「――――……」
「何か勘違いしちまうんだよな」
「……」
「俊輔、すげえモテるからさ。ここらの奴なら、アイツにどこでもついてくって奴ばっかだし。だから、俊輔が部屋に囲ってるなんて、ここの奴らにとったら、羨ましいことでしかねえだろうから……」
……譲ってあげるけどな、喜んで。
オレの代わりに俊輔の部屋で暮らしてくれて、全然いいのに……。
心の中で、そうつぶやきながら。
……そうなんだろうなとは、思ってたけど。
やっぱりモテるのか、と、ふうん、と、頭の中で納得。
じゃあますます何で、という疑問も同時に浮かぶけど。
153
★読んでくださってありがとうございます(^^)
★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
お気に入りに追加
1,390
あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
運命の番から逃げたいです 【αとΩの攻防戦】
円みやび
BL
【αとΩの攻防戦】
オメガバースもの ある過去から人が信じられず、とにかく目立ちたくないがないために本来の姿を隠している祐也(Ω)と外面完璧なとにかく目立つ生徒会長須藤(α)が出会い運命の番だということがわかる。
はじめは暇つぶしがてら遊ぼうと思っていた須藤だったが、だんたん遊びにできなくなっていく。
表紙は柾さんに書いていただきました!
エブリスタで過去投稿していた物を少しだけ修正しつつ投稿しています。
初めての作品だった為、拙い部分が多いとおもいますがどうか暖かい目で見てください。
モッテモテの自信ありまくりの俺様が追いかけるというのが好きでできた作品です。
はぴまり~薄幸オメガは溺愛アルファのお嫁さん
藍沢真啓/庚あき
BL
大学卒業後Y商事で働く香月桔梗(こうづき ききょう)が出勤すると、不穏な空気と共に社長から突然の解雇を言い渡される。
「貴様は昨夜、わしの息子をオメガのフェロモンで誘惑しただろう!」と。
呆然とするまま会社を出た途端、突然の発情《ヒート》に襲われる。パニックになった桔梗は徒歩での帰宅を決めたものの、途中でゲリラ豪雨に見舞われてしまう。
そこで偶然見つけたカフェ&バー『la maison』のオーナー寒川玲司(さむかわ れいじ)に助けられたが彼はアルファで、桔梗の発情《ヒート》の影響を受け発情《ラット》してしまう。
そして、合意のないまま桔梗に番の契約をしてしまい──
孤独に生きてきたアルファとオメガの幸せになる為の物語。
壮絶な過去を持つ腹黒アルファ×孤独に生きてきた薄幸オメガ
※オメガバースの設定をお借りしています。また、独自設定もありますので、苦手な方はご注意を。 また、Rシーンの回には*を表示します。
また他サイトでも公開中です。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる