「Promise」-α×β-溺愛にかわるまでのお話です♡

悠里

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第一章

18.「パーティー」1/2*俊輔

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 はー……。
 ひそかにため息をつきながら、オレは、タバコをくわえた。

 親父の代理の、パーティーの出席。
 鬱陶しいの一言に尽きる。
 タヌキな爺さん達の化かし合いも、若い奴らの密かな競争も、何もかも、ウザイ。

 金持ちって奴は、一体なんだって、こうやってパーティーばっか開くんだ。
 しかも自分の誕生日だのなんだの。……誰も本気で祝っちゃいねえっての。
 オレは絶対ぇ開かねえぞ。
 ……とは言いつつも、この場が交流の場となっているのだと言うことも、一応は分かっているが。
 
 ざっと顔ぶれを見て、適当に一通りの奴らと会話は交わしたのは確認。
 後は時間を見計らって抜け出そう。そう決めて、中心から少し離れた所にある喫煙コーナーに来たところ。

 一通り終わったとは言え、誰の相手もせずに喫煙コーナーでタバコふかしてるなんてとこ、和義が見たら怒るな、絶対。
 ……まあ、いいか。今日は和義は車で仕事してるっつってたし。

「――――……」
 ふう、と煙を吐き、その煙が消えていくのをぼんやりと見つめる。
 時計を見ると、二十一時を回った所だった。

 ふと、視線を感じて、何気なくその方向に視線を流すと、そこに一人の女が居た。

 パーティーには、メインの出席者である父親に、その娘が同伴する事も多い。
 パーティー出席者の有望株から婿候補を探そうという、タヌキ達のもくろみがあるのは明らかだ。

 金持ちの女は着飾ってる事もあるし、苦労せず守られている分、綺麗な女が多いとは思う。
 よく紹介されるし、モーションがかかる。
 
「――――……」

 見られてるのは分かったけれど、視線を合わせる事なく、気付かなかったフリをしてそのまま逸らした。
 ……面倒くせえな……。
 もう一度タバコをくわえ、息を吸い込む。その瞬間。

『タバコ、吸いすぎじゃない?』
 真奈が最近言った言葉が不意によみがえった。
『……は?』
 すごんでみせたが、真奈は続けて。

『タバコ、百害あって一利なしだよ? 絶対吸いすぎ』
 眉根を寄せてそう言った真奈を思い出して、何となくタバコを口から外すと、灰皿で火をもみ消した。

「――――……」

 ……阿呆か、オレは。
 自分でも分かってる。明らかにあれから、タバコの本数が減った。

『若、最近禁煙でもなさってますか?』
 前からタバコは良くないとしつこく言い続けていた和義が、さっきここに来るまでの車の中で、ふと気付いたように言ってきた。

『……別にしてねえけど』と答えると、不思議そうに『そうですか? あきらかに減ったように思うんですが……』と言われた。
 もう何も答えなかった。

 体に悪い事なんて、分かってる。それでも何となく吸わずに居られなかったというか、自然と吸っていただけというか。
 今更百害を説かれたって、やめる理由にはならない、筈なのだが。
 現に和義に何回言われても、止めなかった訳だしな……。

『吸いすぎ』
 言った時の真奈の仏頂面が浮かぶ。何だかちょっとおかしくなって、口元が綻びそうなのを堪えた時。

「良かったら、一緒に飲みませんか?」

 不意に差し出されたグラスと、女の声。
 顔を向けると、そこに居たのはかなりの美人。つい今さっき、視線を合わせずにスルーした女だった。
 さすがにこんな至近距離で話しかけられてしまっては、無視する訳にもいかない。
 礼を言って、グラスを受け取った。

「失礼ですが……?」
高樹 綾香たかぎ あやかと申します」

 にっこり笑うその笑顔は、とても綺麗だとは、思うのだけれど。

 ――――……高樹、って事は…… あの高樹グループの社長の娘か?
 親父が居たら、きっと、チャンスだとでも言ってつついてくるのだろうが。
 ……知ったこっちゃねえし。

 そんな事を考えながら、簡単に自己紹介を済ませる。

「……先ほどから、お姿、見てました。……少し、お疲れですか?」

 クスクス笑って、オレをまっすぐに見つめるので、笑いながら適当に頷くと。

「私もパーティーは苦手で。父によく連れてこられるんですが」
「こちらも……よく父の代理で来させられてます」

 言うと、綾香はまた微笑んだ。

 ――――……すげえ、美人だな。
 しかも明らかに、オレに対して好意を持っていて、それを隠そうとも、していない。



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