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第一章
16.「錯覚」*真奈 ※
しおりを挟む「――――……真奈……?」
オレの、汗で濡れた額を手で掻き上げて、俊輔がまっすぐに見つめてくる。
その瞳に、何だか胸が、痛くなる。
優しく呼ぶ声と、触れる手に、何だか、勘違いしそうになる。
俊輔とのこの行為が、想い故の行為のような錯覚。そんな訳ないのに。
色々全部吹き飛ばしてしまいたくて、オレはきつく瞳を閉じ、顔を逸らした。
「な……で……っ……くんだよっ……」
「何?」
俊輔が一度手を止めて、オレを見つめる。
「ど、して……抱く、ンだよ?……」
「――――……」
俊輔は黙って、オレを見つめると、「……さぁ、な」と呟くように言った。
オレの脚に手をかけて、ぐ、と突き上げてくる。
「……あ……ッ!」
息をつく間も与えられずにすごい勢いで貫かれる。苦しいのに、感じてしまう身体をどうしようもなかった。
激しく揺さぶられ、目眩がするくらいの快感に、声があがる。
「……っ……ひ、ぁ……!」
「……気持ちいいかよ?」
「……ぁっ……っ」
訳が分からなくなる。
どう考えたって、理不尽で。
意味、分かんなくて。何ならもう、憎んでもいいんじゃないかと思うのに。
――――……何でこんなにも、求めてしまうのか、分からない。
「ん、……あっ……」
「言えよ、真奈」
「……~~っ……う……」
言わないで居ると俊輔は動くのをやめた。疼いている身体は、勝手に震え出す。
「……や……」
「言わねぇなら、やめる」
抜こうとする俊輔の腕に手をかける。
「……や、だ」
そう言うと 俊輔の唇が、オレの唇に重なってくる。
「……っ……ん、……う……ン……」
どうしようもない。狂いそうになってくる。
オレはぎゅ、と瞳を閉じた。涙が零れ落ちていく。
「……しゅ……ン」
「だめだ。ちゃんと言えよ」
勝手に体温がどんどん上がっていく。
「……お願……」
「……聞こえねえよ」
「……して……」
「何で?」
「……っ」
何でって…… 何でって、何て、言えば、いいんだよ……
頼むから――――……も、いいかげん……!
黙って唇をかみしめた瞬間、俊輔が中で少しだけ動いた。
「……ぁ、……」
「……何でして欲しい?」
「っ……さ、れるの…… き……気持ちいぃ、から……っ」
自分が何を言ってるか。分かってはいるけれど、もうそんなことはどうでもいい。
ただ、早く――――……。
「……どれくらい?」
「……っ……死 んじゃ……!」
「気持ちよすぎて死んじまうの? ……へぇ……死なせてみてぇな……」
クスッと笑うと、俊輔はやっと許してくれたみたいで。
一気に、突き上げられる。
「……ぁ……」
「真奈……」
呼びかけられたけれど、返事をする余裕も、まるでない。
「ひ、うぁ……あ、ん……!」
俊輔ももう何も言わない。
苦しくて、上向いた顎を捉えられて、唇を奪われる。
「……ぅん……ん……ッ」
おかしくなりそうな快感と、自分の中の訳の分からない気持ちを、これ以上増幅させたくなくて。
キスされながら、早く終わってほしいと願う。
でも、半分は、諦めていた。
いつもこうして貫かれて、その激しさが気が遠くなるくらい長く続く。今夜もそうだと思っていた。
「……あぅっ……ん……っ」
ずっと押さえつけられていた手をゆっくりと外してもらえたので、オレは俊輔にしがみついた。
――――……薬が効きすぎていたのかも知れない。いつもならそんな風には、しない。
でも今日は、思わずしがみついた。
「……っ……ゅん ……っ」
「――――……」
「しゅん……すけ……もっと……」
オレの言葉に驚いたらしく、俊輔が動きを止めた。そのことに気づいてから、自分が今言った言葉に気づく。
言わされない限り、その類の言葉はいつもは口にしなかった。
いつも以上に焦らされたからか、身体の疼きが押さえきれなくて、言っちゃったみたい……。
「――――……真奈……?」
俊輔にきつく抱きついて、オレは声を出す。
「……や……めな……で……」
言った瞬間、しがみついていた俊輔の身体が一気に熱くなったような気がした。
確かめる暇もなく、いきなり強く突き上げられたかと思うと、俊輔はあっけないほど早くオレの中で欲望を解いた。
「……ふ……」
何だか、力尽きて、オレはしがみついていた手をぱたん、とベットに落とした。
ぼんやりとした意識の中で、オレは不思議に思って俊輔を見る。
「――――……」
俊輔は、なんだすごく躊躇った顔をしていて。
――――……ち、と、舌打ちが聞こえた。
「……?……っあ!」
中をまたかき混ぜられるようにされて、仰け反る。
「……っ……んん、あ……っ……」
「――――……まだ足りない、だろ?」
「……っっ……」
足りてる、と言いたいんだけど、激しすぎて、全然言えない。
終わったのかと思ったのに。
……全然、その後、終わらなくて。
また、途中で意識が、無くなった。
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