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第一章
6.「躊躇なく」*真奈 ※
しおりを挟む「――――……何をすれば、オレが許してやるか分かってるだろ?」
オレの唇に、親指で触れてなぞりながら、俊輔がオレを見下ろす。
初めて会った時言われた、「オレのモノ」。
こんな意味だなんて、絶対、あの時の周りに居た誰も、分かってなかったはず。
「――――……」
さっき、あれだけしてたのに。
アルファって、皆こうなのかな。
確かに、性欲が強いって、聞いたことはあるけど。
その性欲を――――……オレに向けなくたって、俊輔なら、相手なんか他にいくらでも居そうなのに。
「……真奈?」
促されるように、唇から頬に指が滑る。
「――――……」
一度唇を噛みしめてから、オレはひざまずいて、俊輔のバスローブをゆっくりと開く。目の前にあるそれを、大した躊躇もせずに、オレはそれを口に含んだ。
「……ん……ん……」
オレ、決して、巧くはないと思うんだけど。
それでも俊輔は反応して、口の中でそれは大きさを増していく。
「……っく… ふ…」
時たま、むせそうになりながら、それでも早くイッてもらおうと、愛撫を繰り返す。
「――――…っん…っ…」
口に含みきれない部分も、舌や指で刺激していく。
初めは絶対に出来ないと思っていたこんな行為を、大した躊躇もなく、できるようになってしまった。
その事に、自分で少し呆れる。
耳に届く俊輔の息づかいが少し荒くなってきて、頭を押さえつけられる。
俊輔ので、上顎をなぞられて、ゾクリとしたものが、頭を支配する。
いつもそれが、合図だった――――…。
「――――…ッ……」
欲を、放たれて。飲み込むけれど、けほ、とむせる。
長い時間、口に入れられていたそれが、ゆっくりと引き抜かれた。
「……っ……」
口で放たれたそれにはどうしてもむせてしまう。
口内と喉に絡みつくそれを何とか飲み込んでしまおうとしていた。その時。
「――――……っ?」
俊輔がオレの腕を掴み、引き上げた。
「……しゅん、す……?」
そのまま また壁に押し付けられる。
「……痛……っ……何……」
俊輔の指が、不意にオレ自身に触れて、絡み付く。
「……ぁ……や……!」
オレのぎこちない愛撫とは、違う。
的確に感じる所に触れられ、扱かれ――――…簡単に、俊輔の手に落ちた。
「……あ……ぁあ……っ……」
さっき抱かれていた時の感覚が、あっという間に身体によみがえる。
「………やだ……ん……っ」
俊輔はその指を、オレの中にゆっくりと、挿し入れた。
「あ……ッ…!」
……もう今日は、嫌だって――――…っ…!
心の中で叫ぶけれど、それでも口から漏れたのは、耳を塞ぎたくなるような、甘い声、で。
「んん……ンぁ……」
小刻みに動かされて、意識が飛びそうになる。ぐっと、堪えていると。
「……イけよ」
背けた耳の中に舌を入れられて、囁かれると、ぞくりとした感覚が背筋を駆け上がった。
オレは、耐えきれずに。
またしても。意識を、手放さなければならなかった。
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