【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里

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「颯太に紹介」*司

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 ひたすら湊が可愛くて、どーしようかと思っていた時。
 何やら足音が聞こえて、オレが、咄嗟に振り返った瞬間、颯太に突撃された。

「お前は正門前でなにやっとんじゃ!」
「いっ……てえな!! オレは、湊をめっちゃ褒めてたんだよ!!」

「丸見えだっつーの!」
「別にいーわ! 褒めてただけだし!! つか何しに――――……ああ、湊に会いに来たのか?」

「そ。紹介して?」

 オレと颯太のやり取りに、かなり引きながら見守っていた湊は、その言葉に、ふ、と颯太を見つめた。

「こいつ、話してたオレの幼馴染。一応、一番仲良い奴。颯太、ね?」

 湊にそう言った後、颯太に向かって、「湊だよ」とだけ伝える。

「よろしく。……湊くん? って、くん、つけた方がいい?」
「湊でいいよ。タメだし。湊、いいよな?」
「うん」

「じゃあ、湊も、オレの事、颯太でいいよ」
「……うん」

 湊、そういえば初対面で名前で呼ぶとか無理って、言ったっけ。
 オレの時も拒否ってたよな……無理なら、名字でもいいけど……名字教えとくか。

 そう思った瞬間。
 湊は、少し恥ずかしそうだったけど。

「颯太? ……よろしく」

 と、言った。

 ――――……おお。すげえ、進歩、じゃね? 湊。
 颯太って、すぐ、呼んだ。

 しかも、ちょっと笑顔だし。
 可愛いし。


「……――――……」

 ……なんかムカつく。


「あんま見んな」
 思わず言ったオレに、颯太が目を剥いた。

「………はああああああ?!」

「可愛く笑ってんの、ガン見すんなっつの」
「お前、いーかげんにしろよっ オレは、お前が好きだって奴を見に来てるんであって、何の他意も……っ」

「他意無くてもだめだし」

 颯太とオレが絡み合っていると、少しして、湊の手がオレの腕に触れた。

「……司、超目立ってるんだけど……」

 苦笑いの湊に、止められる。

「あ、ごめん」
「つか、お前、オレにも謝れ」

 颯太が、ぜえぜえ言いながら、言ってる。
 ぷ、と湊が笑い出した。
 
「司のせいで、笑われてるけど」
「――――……別にいいよ」
「は?」


 湊が楽しそうだから。もうなんでもいい。


「――――……湊、オレと付き合おうってなってから、すごく笑うようになった気がする」

 え、という顔をして、湊が戸惑いつつ、照れてる。


 ああ、もう可愛いなあ、ほんと。
 よしよし、と頭を撫でる。

 横で、颯太が呆れてるけど。まあ関係ない。

「……お前、隠す気、無いよね」
「別に頭撫でる位いーじゃん。 てか、敢えて隠す気なんかないけど」

「……湊って、ほんとに、こんなのが好き? これほっといたら、マイク持って叫ぶかもよ、付き合ってますって」
「――――……それはちょっと、困るけど」

 クスクス笑う、湊は。

「でも、そういう司ぽいとこは――――……」


 好き、と言いたいけど、颯太がいるから言えないんだろうな。
 言葉が見つからなくて、困ってる湊が可愛すぎて。


「可愛いだろ、湊」

 オレがそう言うと、ぷ、と笑って、颯太がはいはい、と頷く。

「やたらいちゃいちゃしてんのは、分かった」
「妬くなよ。妬いても湊はあげないから」

「はいはい……つーか、そろそろ部活の準備しねーとだろ」
「……はー。もう、休みたい……」
「サボり許されるわけねーだろ」

「湊は、このまま塾に行くのか?」
「うん。ちょっと早いんだけど、自習室もあるし」

「分かった。じゃあまた、夜な? 気を付けて行って」
「うん。じゃあね、司」


 湊が見えなくなるまで、颯太と一緒に見送った。
 最後の曲がり角で、振り返って、2人がまだ立ってるのを見つけた湊が、バイバイと手を振って、姿を消した。

「……可愛いだろ、湊」
「――――……すげえ好きそう、お前」

「ん?」

「守ってあげたくなるような感じだろ? 言葉詰まったり。照れたり」

「ん。まあ――――……でも守りたいから好きとかじゃないんだけど……一緒に居るとウキウキするし、なんか……ずっと、気持ちがふわふわしてて、楽しいし。なんか頑張ってるの聞くと、オレも頑張ろうって思うし。よく分かんねーけど、湊の毎日の中に、ずーっと入ってたい」

「……つか、言ってて恥ずかしくならない?」

「別に。誰にでも言えるけど」
「……はいはい」

「まあ、これを全部湊に言うのはちょっと恥ずいかなあ。 オレばっか、好きみたいで」
「――――……な事ねえだろ」

 颯太が言った言葉に、ん?と聞き返すと。

「あっちもすげえ好きそうな顔してたし」
「ぇ。マジ? そう見えた?」

「見えた。――――……お前が男と、とか、ちょっと不思議だったけど。見たらちょっと納得した」
「――――……はは。それちょっと……ていうかマジで嬉しいかも」

「はいはい……あ。部活。急ごうぜ」
「ん。走ろ」


 2人で教室に向かって、走り出す。



 今日も、すげえ青い空。
 キレイだ。

 




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