【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里

文字の大きさ
上 下
34 / 36

「なんでこんなに」*司

しおりを挟む



 やっと、授業が終わった。校門に行こうと、立ち上がった瞬間。


「なあ司」
 颯太に呼びかけられる。

「あ、颯太、悪い、今湊が校門に来てるから。あとで聞く!」
「え、そーなの?」
「そーなの!」

 ダッシュで校門に向かう。

 目立たないとこに立ってる、とか言ってたけど。
 どこだろ。


 校門を出て、少し先の木の下。


「湊!」

 あ、やば。声でかくなりすぎた。
 思ったけど。こっちを見た湊が、ふわ、と笑うので。

 嬉しくなって、駆け寄った。


「うっわ、なんか、すっげー嬉しい、湊」
「……うん」

「川で会うのも嬉しいけど。湊がオレの高校の前に居るとか」
「うん」

 湊は、少し恥ずかしそうだけど、嬉しそう。

「司、これ」
 小さな紙袋を手渡される。

「うん。ありがと。読むの楽しみ」
「ん。返すのいつでもいいから」
「ありがと」

 湊が貸してくれた本は2冊。

「どんな本?」
「読みやすい、かな……と思うけど」
「ありがと」
「うん」

「ここで、結構待った?」
「……10分位、かな?」

 湊は、時計は見てなかった、と笑う。

「そっか。ごめんな、オレ、ホームルーム終わると同時に、猛ダッシュで来たんだけど」
「うん。だって司、一番に出てきたもんね」

 可笑しそうに笑う湊が、可愛くて。

「湊、今日、楽しそう」
「え? あ、だって……」

「ここで会えるから?」
「……うん。司のとこ、来るの、楽しみだった」

「オレも。 もー朝から、早く放課後んなれってずっと思ってた」


 そう言ったら、湊はすごく嬉しそうに、笑って司を見上げてきた。


「やっぱり、制服、似合うね、司」
「ん? そう?」
「うん」

 ふ、と細くなる目が可愛くて。
 ……キスしたい。そう思う。

 ……学校の正門の前で、下校する皆が出て来てる前で。
 しかも、違う制服の湊が、オレと立ってるから、なんか、ちらちらと視線が飛んできてる前で。
 キスなんか出来る筈がないのは分かっているけど。

「あのさ、司」
「うん?」

「……昨日、クラスの奴と少し、普通にしゃべったって言ったじゃん?」
「うん。今日もしゃべった?」

「……今日は、なんか……昨日の奴の友達たち、何人かに囲まれて」

 囲まれて?

「オレ達に興味ないでしょ?とか、言われて……」

 え? 囲まれて、興味ないでしょって言われて? 何だそれ。
 オレがちょっとドキドキしながら、次の言葉を待っていると。

「どうしようって、思ってさ。いつもなら、もう何もしゃべんなかったとこ、なんだけど」
「……なんだけど?」

 すげードキドキ、するんだけど。

「なんか、司が、ゆっくりでも大丈夫って、笑ってくれたのが、浮かんで」
「――――……」

「そしたら、何か、息が、吸えて……」
「――――……」

「話すのが苦手なだけって、言えたら――――…… なんか、皆、何それって笑ってくれて…… なんか、少し、話せてさ。また明日話そうって言われて、帰ってきたんだよ」

「――――……」


 何か思うより早く、体が動いて。
 湊をぎゅ、と抱き締めていた。

 ……キスしてる訳じゃないし。

 抱き締める位、男同士でもあるよな。うん。
 いいや、別に。ここで噂んなるのはオレだし。

 そんな風に思って、気にしない事にした。


「つ、……つかさ?? 学校の、前……」

 湊は、焦ってるけど。 


「別に平気」


 ぎゅー、と抱き締めて。
 よしよし、と頭を撫でた。


「……良かったな、話せて」
「――――……うん」

 少しして、湊から離れて、でも更に、よしよし、と頭を撫でる。


「司」
「ん?」

「――――……司が大丈夫って言ってくれるおかげだから。ありがと」


 俯いて、お礼を言ってるのが――――……可愛い。


 なんでこんなに、湊、可愛いんだろう。






しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

始まりの、バレンタイン

茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて…… 他サイトにも公開しています

処理中です...