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「なんでこんなに」*司
しおりを挟むやっと、授業が終わった。校門に行こうと、立ち上がった瞬間。
「なあ司」
颯太に呼びかけられる。
「あ、颯太、悪い、今湊が校門に来てるから。あとで聞く!」
「え、そーなの?」
「そーなの!」
ダッシュで校門に向かう。
目立たないとこに立ってる、とか言ってたけど。
どこだろ。
校門を出て、少し先の木の下。
「湊!」
あ、やば。声でかくなりすぎた。
思ったけど。こっちを見た湊が、ふわ、と笑うので。
嬉しくなって、駆け寄った。
「うっわ、なんか、すっげー嬉しい、湊」
「……うん」
「川で会うのも嬉しいけど。湊がオレの高校の前に居るとか」
「うん」
湊は、少し恥ずかしそうだけど、嬉しそう。
「司、これ」
小さな紙袋を手渡される。
「うん。ありがと。読むの楽しみ」
「ん。返すのいつでもいいから」
「ありがと」
湊が貸してくれた本は2冊。
「どんな本?」
「読みやすい、かな……と思うけど」
「ありがと」
「うん」
「ここで、結構待った?」
「……10分位、かな?」
湊は、時計は見てなかった、と笑う。
「そっか。ごめんな、オレ、ホームルーム終わると同時に、猛ダッシュで来たんだけど」
「うん。だって司、一番に出てきたもんね」
可笑しそうに笑う湊が、可愛くて。
「湊、今日、楽しそう」
「え? あ、だって……」
「ここで会えるから?」
「……うん。司のとこ、来るの、楽しみだった」
「オレも。 もー朝から、早く放課後んなれってずっと思ってた」
そう言ったら、湊はすごく嬉しそうに、笑って司を見上げてきた。
「やっぱり、制服、似合うね、司」
「ん? そう?」
「うん」
ふ、と細くなる目が可愛くて。
……キスしたい。そう思う。
……学校の正門の前で、下校する皆が出て来てる前で。
しかも、違う制服の湊が、オレと立ってるから、なんか、ちらちらと視線が飛んできてる前で。
キスなんか出来る筈がないのは分かっているけど。
「あのさ、司」
「うん?」
「……昨日、クラスの奴と少し、普通にしゃべったって言ったじゃん?」
「うん。今日もしゃべった?」
「……今日は、なんか……昨日の奴の友達たち、何人かに囲まれて」
囲まれて?
「オレ達に興味ないでしょ?とか、言われて……」
え? 囲まれて、興味ないでしょって言われて? 何だそれ。
オレがちょっとドキドキしながら、次の言葉を待っていると。
「どうしようって、思ってさ。いつもなら、もう何もしゃべんなかったとこ、なんだけど」
「……なんだけど?」
すげードキドキ、するんだけど。
「なんか、司が、ゆっくりでも大丈夫って、笑ってくれたのが、浮かんで」
「――――……」
「そしたら、何か、息が、吸えて……」
「――――……」
「話すのが苦手なだけって、言えたら――――…… なんか、皆、何それって笑ってくれて…… なんか、少し、話せてさ。また明日話そうって言われて、帰ってきたんだよ」
「――――……」
何か思うより早く、体が動いて。
湊をぎゅ、と抱き締めていた。
……キスしてる訳じゃないし。
抱き締める位、男同士でもあるよな。うん。
いいや、別に。ここで噂んなるのはオレだし。
そんな風に思って、気にしない事にした。
「つ、……つかさ?? 学校の、前……」
湊は、焦ってるけど。
「別に平気」
ぎゅー、と抱き締めて。
よしよし、と頭を撫でた。
「……良かったな、話せて」
「――――……うん」
少しして、湊から離れて、でも更に、よしよし、と頭を撫でる。
「司」
「ん?」
「――――……司が大丈夫って言ってくれるおかげだから。ありがと」
俯いて、お礼を言ってるのが――――……可愛い。
なんでこんなに、湊、可愛いんだろう。
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