32 / 36
「急上昇」*湊
しおりを挟む2人との通話を切ってそのまま司に電話をかける。
顔が見たいなと思ってしまって、ちょっと迷ったけれど、ビデオだとドキドキしすぎなので、音声通話で発信した。
それでも、ドキドキする。
『もしもし、湊? 寝る準備出来た?』
優しい声を聞いて、何だかホッとする。
「ん。あとで勉強するけど、先に司と話したくて。あのね、司」
『ん?』
「晃とさとるに言ったよ。良かったね、だって」
『……じゃあ、OK出たってこと?』
「え。OKって?」
何だか、ほっとしたような、そんな言い方に、首を傾げると。
『だってその2人には会ってるからさ。ダメだしされたらどーしよって、ちょっと思ってたんだよね。あいつはやめとけ、とかさ。あるかもしれないだろ? ちょっと心配だったんだけど』
「司、そんな心配するんだね」
『するって。湊絡むと、オレ、すげえ心配するよ。大事だからね』
「――――……」
何でそんな言葉、普通の事のように、すらすら言えるんだろう。オレには絶対言えないし、なんて答えていいのかも、分からないし。
何か答えなきゃ。
司が、せっかくそんな風に、言ってくれてるのに。
そう思えば思うほど何も言えなくて。
結局黙ったまま、時が流れていたけれど。
『湊……照れてる?』
クスクス笑う声が、沈黙を破ってくれた。
『絶対照れてるだろ』
司の優しい笑顔が浮かぶような、柔らかい口調で、優しく言われる。
早く何か言わなきゃ、と焦った気持ちが、一瞬で、溶かされた、気分。
司は、オレの沈黙を、嫌な風には取らない。
――――……思えば、いつも、そうだった、気がする。
『早く明日にならないかな。オレのガッコの前で湊に会えるの、なんか嬉しい』
「……うん」
『湊もオレに会いたいだろ?』
「うん」
うん、と言えば、応えられる質問。
……きっと、オレの為に、そうしてくれてる。
『湊が学校出る時、連絡入れといて。待ってるから』
「うん。分かった」
『……勉強するんだよね。切ろっか』
「うん」
『オレも明日の小テストの勉強してから寝る』
「ん」
『明日な、湊』
「うん。おやすみ」
『うん』
名残惜しいけどそう言って。
切れるのを待っていたのだけれど。
数秒。切れる音がしなくて、画面を見ると、通話の経過時間は増えていて。
『……湊?つながってる?』
「あ、うん。ごめん」
『湊が切るの待とうと思って』
「オレも……司が切ったら、と思って」
言ったら、司がクスクス笑い出した。
『……お前から切れよー、そっちが切れよー、みたいな、ネタみたいなこと、湊とすると思わなかった』
「…ん。そだね」
笑いながら頷くと。司が楽しそうな声で。
『じゃあ、湊が切って?オレ、待ってるから』
「……うん。分かった」
『明日な』
「うん。おやすみ、司」
言って、通話終了ボタンを押した。
そっとスマホを机に置いて、椅子に座る。
――――……司が、大好きなんだけど。
……どうしよう。
気になる気がする、位の相談を晃とさとるに相談したばかりだったのに。それからすぐ、こんな風に急展開で付き合う事になってしまった。
斜め上に気持ちが急上昇してしまったみたいで、ついていけない。
ついていけないのに、何だか、気持ちがフワフワ幸せで。
どう、このフワフワを収めたらいいのか、分からない。
15
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説


それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。

始まりの、バレンタイン
茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて……
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる