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「急上昇」*湊
しおりを挟む2人との通話を切ってそのまま司に電話をかける。
顔が見たいなと思ってしまって、ちょっと迷ったけれど、ビデオだとドキドキしすぎなので、音声通話で発信した。
それでも、ドキドキする。
『もしもし、湊? 寝る準備出来た?』
優しい声を聞いて、何だかホッとする。
「ん。あとで勉強するけど、先に司と話したくて。あのね、司」
『ん?』
「晃とさとるに言ったよ。良かったね、だって」
『……じゃあ、OK出たってこと?』
「え。OKって?」
何だか、ほっとしたような、そんな言い方に、首を傾げると。
『だってその2人には会ってるからさ。ダメだしされたらどーしよって、ちょっと思ってたんだよね。あいつはやめとけ、とかさ。あるかもしれないだろ? ちょっと心配だったんだけど』
「司、そんな心配するんだね」
『するって。湊絡むと、オレ、すげえ心配するよ。大事だからね』
「――――……」
何でそんな言葉、普通の事のように、すらすら言えるんだろう。オレには絶対言えないし、なんて答えていいのかも、分からないし。
何か答えなきゃ。
司が、せっかくそんな風に、言ってくれてるのに。
そう思えば思うほど何も言えなくて。
結局黙ったまま、時が流れていたけれど。
『湊……照れてる?』
クスクス笑う声が、沈黙を破ってくれた。
『絶対照れてるだろ』
司の優しい笑顔が浮かぶような、柔らかい口調で、優しく言われる。
早く何か言わなきゃ、と焦った気持ちが、一瞬で、溶かされた、気分。
司は、オレの沈黙を、嫌な風には取らない。
――――……思えば、いつも、そうだった、気がする。
『早く明日にならないかな。オレのガッコの前で湊に会えるの、なんか嬉しい』
「……うん」
『湊もオレに会いたいだろ?』
「うん」
うん、と言えば、応えられる質問。
……きっと、オレの為に、そうしてくれてる。
『湊が学校出る時、連絡入れといて。待ってるから』
「うん。分かった」
『……勉強するんだよね。切ろっか』
「うん」
『オレも明日の小テストの勉強してから寝る』
「ん」
『明日な、湊』
「うん。おやすみ」
『うん』
名残惜しいけどそう言って。
切れるのを待っていたのだけれど。
数秒。切れる音がしなくて、画面を見ると、通話の経過時間は増えていて。
『……湊?つながってる?』
「あ、うん。ごめん」
『湊が切るの待とうと思って』
「オレも……司が切ったら、と思って」
言ったら、司がクスクス笑い出した。
『……お前から切れよー、そっちが切れよー、みたいな、ネタみたいなこと、湊とすると思わなかった』
「…ん。そだね」
笑いながら頷くと。司が楽しそうな声で。
『じゃあ、湊が切って?オレ、待ってるから』
「……うん。分かった」
『明日な』
「うん。おやすみ、司」
言って、通話終了ボタンを押した。
そっとスマホを机に置いて、椅子に座る。
――――……司が、大好きなんだけど。
……どうしよう。
気になる気がする、位の相談を晃とさとるに相談したばかりだったのに。それからすぐ、こんな風に急展開で付き合う事になってしまった。
斜め上に気持ちが急上昇してしまったみたいで、ついていけない。
ついていけないのに、何だか、気持ちがフワフワ幸せで。
どう、このフワフワを収めたらいいのか、分からない。
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