【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里

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「親友に報告」2*司

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「あれだろ。前に、吉原がお前に、河原で何で会ってんのって聞いてた奴じゃねえの?」
「――――……あー……にしたって、そこから、この話につなげる?」

 そう言うと、颯太はふ、と笑った。

「あん時吉原がさ、愛想悪いしあんな奴と話してて何が楽しいの、みたいな事、お前に言ったらさ。 お前すげー怒ってたから」
「オレ、怒ってたっけ?」
「吉原には、そんな事ない、くらいしか言ってなかったけど。 すげえ怒ってるんだろうなーと、オレは思っててさ。 お前が怒るとか、珍しくて、なんか頭に残ってた」

「――――……」

 さすが、親友。
 と、言うべきか。

「で、他校だって言うけど、お前いっつもサッカーばっかで他校の奴と知り合うとかあんま無いだろうし、でもって、お前的には飛び越えたけど、オレが驚く……とか言われたら」

「――――……まあ。言うつもりだったから、いいんだけど」

 なんか可笑しくなってきて、ぷ、と笑ってしまう。

「颯太、さすがって感じ」
「まあ……あってたらあってたで、それなりには驚くけどなあ」

「やっぱ驚く?」

「そりゃさ。今まではそっちには一切ブレずに生きてきたじゃん。急にそっちで、しかも生まれて初めて好きとか言われると、 まあ、驚く」

「はは。そっか」

 オレは残ってた牛乳を飲み干した。


「――――……ほんと、可愛いんだよ」
「……まあ。頑張れ。オレは応援してやるから」

「あ。こないだ学校抜け出して、部活の前にハンバーガー食いに行ったじゃん」
「ああ」
「あん時、オレ、知ってる奴が居たって言って、少し遅れて2階に行ったろ?」
「ああ」
「あんとき、たまたまあそこに居たんだけど…… 見てないよな?」
「――――……お前が歩いてった先に、3人いるのは見えた。制服が3種類、お前が入って4種類で、おかしなテーブルだと思ったけど」

「そこに居た南校のが、湊なんだけどね」
「湊っつーの?」
「うん。湊。覚えといて、今度会わせるから」
「え、オレ会うの?」

「親友の超好きな奴だぞ。会ってみたいだろ?」

「…ん? 『好きな奴』ってなに? 『付き合ってる』でご機嫌なんじゃねえの??」

 鋭い突っ込みに、また苦笑い。
 さっきから苦笑いしか出てこないな。

「好きって言ってくれてさ。 キスしちゃったんだけど。 よくよく聞くと、好きだけど、そういう好きかは分かんないんだって。でもオレは恋人になりたいって言ったし、湊がそういう好きになったら付き合ってって言ったし。だから今、湊の返事を気長に待つ期間」

「…手、早や。まだ付き合ってねーんじゃんか」

「…だってさ、すげえ可愛いと思ってる子に、一番好き、とか言われたら、さー。しちゃうだろ」

「まあ、限りなく前向きな、待ち時間てことな」
「そ」

 笑顔で答えたオレに、今度は颯太が苦笑いを浮かべた。


「あのさあ。――――……なんでお前はそんなに、何も悩まず幸せそうな訳?」
「え?」

「色々問題ある関係だろ、世間的にもさ」
「あー……まあそうだけど」
「お前、一点の曇りもなし、みたいな感じ」

「……だってさ。 こんなに好きなの初めてなんだぜ? いっぱい女の子知ってるし、付き合ったりもあったけど、こんなに、隣に居てくれるだけで、雰囲気が好きとか、全部可愛いなとか……ほんとに初めてでさ」
「――――……」
「どうせいつか死ぬんだし。好きな奴と居たいじゃん。好きな奴と居るのに、周りがどうとか考えるのも、あほらしいし」
「あほらしいし、なに?」

「湊がさ、そういうのすげえ悩みそうな奴だからさ。オレまで悩む訳にはいかないんだよ。 めっちゃ好きって、幸せって思わせたいから、オレが悩んでる暇はない」

「――――……お前のそーいうとこは、ほんと、すげーと思うわ」


 颯太がクスクス笑う。


「今度会わせるから、楽しみにしてて」
「はいはい」

「めっちゃ可愛くて綺麗だけど、惚れんなよ」
「お前のに惚れたりしねーから」

「でもなー、ほんとに可愛いからなー」
「……だから無いって」


 ため息をつきながら笑う颯太に、オレも、ふ、と笑ってしまう。


「颯太のそういう反応って、超ありがたい。ありがとな」
「――――……」

「きっとそういう反応だろうとは思ってたけど……1%くらいは、拒否されるかなとも思ってたからさ」
「そんな事を思ってる奴の話し方じゃなかったけどなー? 可愛いだのきれいだの、のろけから入ったじゃんか」
「だから、1%心配だっただけだから」

 顔を見合って、ぷ、と笑いあった瞬間。
 昼休み終了を告げるチャイムが、鳴り響いた。
 
 
 
 

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