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「親友に報告」1*司

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「司、マジで、気持ち悪い」

 昼休み、食事を終えて、スマホを見ていたオレは、隣に居た親友に、まじめなトーンでそう言われた。気づくとさっきまで周りに居た奴らは、食事を終えて立ち上がって少し離れた所で騒いでる。

 2人きりになった所で言ったんだろうと悟って、新田颯太にった そうたを見つめ返す。

「何かあったろ」
「……まあ。あった」

「朝会った時から機嫌よすぎて気持ち悪いなーと思ってたんだけど、昼まで持続するとは思わなかった」

「そんな、分かる?」
「分かる。昨日ものすごいダッシュで帰ってったよな」

「おー、さすが、付き合い長いだけあるなー」

 幼稚園から、高校までの腐れ縁。
 サッカーをずっと一緒にやってるから余計、濃密な付き合いをしてきた。
 歴代の好きな子や、彼女も知ってるし、たぶん、お互い大体の事は知ってる。
 サッカーで颯太のポジションはゴールキーパー。
 的確な判断と仲間への声かけ、いざという時の飛び出していく決断はピカイチ。超頼りになる奴。

 昨日湊と話していた時に言った「一番仲の良い奴」というのは颯太の事。
 近々話そうとは思っていたけれど、翌日に突っ込まれるとは思わなかった。

 もう全部話す気ではいたので、すぐにスマホを伏せて、颯太に向かい合う。

「オレなー、颯太」
「ああ」

「生まれて初めてって位、好きな子が出来た訳」
「……それは、珍しいな」
「珍しい?」

「お前の好きって、ちょっと可愛いとか、ちょっと優しいとかすげえ軽かったし。あとは付き合う時は、相手に押し切られてって感じだったじゃん」

「……人聞き悪いな。それなりにちゃんと好きではあったし」

 言い返すと、颯太は苦笑いで。

「で?相手、どこの子? 猛ダッシュで学校出てったって事は、他校の子だろ」
「なんでそれ知ってんの」
「だってお前が、終わってすぐに、猛ダッシュで帰るとこ、クラスの奴らが上から見て笑ってたぞ。もうあんなとこ走ってるって」

 ……昨日上から見られてた訳ね。
 ちょっと恥ずいなと思いながら、あ、そ。と言って。

「南校の子で…… すっげえ可愛いの。顔もだけど。なんか全部綺麗だし。本人はしゃべるの苦手とか言うけど、その喋り方もすげー可愛いし。すぐ照れて、赤くなるし、マジで可愛いんだ」
「――――……勢いがキモイ」

 颯太の若干引き気味な対応に、苦笑いしか出てこない。


「――――……で、一番……ていうか、まあオレ的にはもう、とびこえちゃったから良いんだけど。お前が聞くにはびっくりするかなーて事が、あるんだけど……」

 そう言ったら。
 数秒、颯太はオレを見て。

 くいくいと、手招きをして。
 オレが近づくと同時に、耳元で。

「……男? だったりする?」

 そう囁いた。
 
「……は???」

 耳元で、こっそり言われたが、ものすごい、衝撃発言。
 これにはかなり、うろたえる。

「っなになに、お前怖ぇんだけど。なに? どっから出てきた、そのセリフ」
「その反応は、合ってるって事?」

 颯太が、ぷ、と笑いながら聞いてくる。

 ぐ、と言葉に詰まった後。
 オレは、頷いた。

「……あってる……」


 こいつに湊の話した事なんかないんだけど。
 男に興味があるなんて、一言も言った事ないし。ていうか、男には興味ねえし。 湊だけだし。

 いったい、なんだって、「男?」なんて聞いてくるんだ?


 目の前で、「へー、そっかー……なるほどねー……」なんて、言いながら頷いてる親友を、眉をひそめて見つめてしまう。





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