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「好き同士」*司
しおりを挟む「――――あのね、司……オレ……」
「……うん?」
「……意味とか……よく分かんない。……ただ司が好きだけど」
「―――……うん」
そこで言葉を切って、湊は俯いてて。
しばらく待っていると、俯いたまま、一言。
「……ごめん……」
……ん? ごめん?
えーと……だめだ、わかんねえ。
「湊……それ、オレ、振られてるの?」
「えっ。……振る?…… え、ちがう……」
「……違うの?」
「……ごめ、ん ……好きなんだけど…… どういう意味とか……よく分かんなくて……」
どんどん、下を向いていこうとする湊。
「まだ、分かんないってだけで。オレ、振られた訳じゃない?」
言うと、湊は、ぱっと、オレを見上げてきて。
じっと見つめてから、うん、と頷いた。
「……なあ、キス嫌だった? 嫌だったなら、謝るけど……」
そう聞いたら、湊は、一瞬止まってから。
ブルブルと首を横に振った。
その答えに、ふわ、と胸の奥の温度が上がる。
キスは、嫌じゃない。
て事は――――……少しは、可能性が、あるって、事な気がするから。
「……じゃあ――――…… キスしても、いいような、好き……? ……て事で平気?」
湊の瞬きが、すごく多くなって。
それからまた少し俯いて。
うん、と頷いた。
「――――……そっか」
俯いてる湊の頭に手を置いて、撫でる。
すると、またまっすぐ、湊がオレを見つめる。
「……オレのは完全に、湊と恋人になりたい好き、だよ」
「――――……」
「……だからさ。……湊の好きが、オレと同じになったら、オレと付き合ってほしいって思ってるけど――――……湊が分かるまでは…… オレの気持だけは、分かってて?」
「――――……」
また小さく、湊が頷く。
「あと、たまには、デートして?」
「――――……」
こくん。
「あ、あと、たまにでいいから、キスしても許して?」
「――――……」
言ったオレに。
湊が、ふと上向いて、オレを見上げて。
にっこり笑ってるオレに。
「なに、それ。 ……あとあとって……」
ぷ、と笑った。
「いいじゃん。許して?」
クスクス笑って、オレが言うと。
一度黙ってから。 湊は、また小さく、頷いた。
安心した、そこで、はた、と気づく。
ここ、思い切り見える、外灯の下じゃねーか……やば……。
何してんだオレ、湊の地元で……。
誰も通ってなかったよな、と焦るけれど。
キスしてた時は、すっぽり抱きこんでたし、通りの方は向いてなかったし……ギリギリ大丈夫そうかなと思いながらも、ものすごく反省。
その日。オレと、湊は。
恋人未満だけど、すごく好き同士、という事に、なった。
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