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「いきなりの好き」*司
しおりを挟む「……湊、どうした、気分悪い?」
心配で、顔を起こさせようとした、瞬間。
「――――……」
何かの言葉が発せられたけれど、全然聴き取れなくて。
「え?……も一回言って、湊」
「……き……」
「ごめん、もう一回」
少し、耳を寄せたら。
「……好き、司」
そう、聞こえた。
「え?」
数秒、固まる。
気を取り直して。
湊の腕を掴み返して、上向かせた。
「……今の――――……どういう……」
「……ごめん……司が…… 好き、みたい……」
そんな風に言う湊に、とりあえず思うのは。
「ごめんとか言うなよ」
「――――……っ」
「湊、こっち、向いて?」
「でも、ごめん――――……ごめん、変な事、言って……」
「――――湊、それ……どういう……意味で……」
下にある、湊の顔は、少し赤くて。
なんで泣いてるのか、涙が滲んでて。
「……ごめん……わかんない。 なんかオレ、ずっとおかしくて……なんか、今も全然分かんないんだけど……」
まだオレの袖を握り締めていた手に、きゅ、と、力が入った。
「……いちばん、すき……」
そんな風に言われて、涙目で、見つめられて。
全身、一気に血が通ったみたいに、熱くなった。
湊を、ぎゅ、と抱き寄せた。
「――――……つかさ……?」
そのまま動かかずに抱き締めていたら、湊の手が、背中をきゅと握ってきたのが分かった。可愛くて、たまらなくなって、すぐ近くにある湊の顔を見つめたら、じ、と見つめ返してきて。
「――――……」
気付いたら。
ちゅ、と、キスしていた。
湊の驚いた顔に、はっと気づいて。
「……あ」
やば。つい……可愛すぎて。
焦って少しだけ湊から離れたら。
オレを見上げてた湊が。
かあッと、赤くなって。
ただ、まっすぐ、オレを見てて。
「つか、さ……」
湊の手が、オレの胸元を握る。
――――……可愛くて。
「――――……みなと……」
ゆっくり。もう一度。
今度は、ちゃんと、キスしようと決めて、唇を、合わせた。
「――――……」
腕の中で、ぴく、と、震えて。
見つめたまま、そのまま唇を触れ合わせていたら。
湊が、静かに、瞳を、伏せた。
さらにぎゅっ、と抱き寄せて。
唇をすこし深く合わせた、
湊も、抵抗せず、唇の間で、息を吸って。
「……っ……ふ……」
湊が、小さく声を出した、そこで、ようやく、キスを離した。
「……湊……」
「……――――……っ……」
見つめあった瞬間、真っ赤になって、俯こうとした湊の両頬を挟んで、引き寄せた。
「ちゃんとこっち見てて」
「……っ……っ」
一生懸命、見上げてくれたので、頬から手を離して、まっすぐ、見つめる。
「オレ、湊が好き。……こういう、意味で、好きだ」
「――――……」
「……オレ、男同士でも可能性があるのか湊に聞きたくて、ここに座った」
「………」
「……なかなか聞けなくて……すごい勘違いされたけど……」
「……気まずかった……とかじゃ……」
「ないっつの。そんな訳ないじゃん。 なんでオレ、喋って気まずい奴と学校終わってから遊びに行って、家まで送ろうなんて、すんの? おかしくない?」
「――――……だって、司が、黙るから……」
「……ん?」
「司が黙るなんて……よっぽどだし……」
「なんだそれ…… オレどんだけ喋ると思ってんの……」
「……喋るじゃん、いつも……」
「そーだけど……そーだけど、少し喋らない位で、湊といるのがつまんないとか……そんな事、オレが思う訳ないじゃん」
ほんとに、何でそんな事、心配するんだ。
――――……と、思うけれど。
……この様子を見てると、
それが湊のコンプレックスなのかな、とも思って。
「最初に会った時から、ずっと変わんない。湊といると、楽しいよ」
「……司って……変わってるって、言われない……?」
「言われねーから」
ぷ、と笑ってしまう。
「もう二度と思うなよな? オレは、湊と居てつまんなかった事なんか無いから。 てか、そもそも、つまんなかったら、学校も違う湊と、絡まないし」
湊の頭をナデナデして、分かった?とのぞき込むと。
湊は、うん、と小さく頷いた。
「……つか。 男でも可能性があるか、聞こうと思ってたのに……」
「うん……?」
「キスしちゃったし……」
うーん、なんか、予想外の進展。
どうしようかな。と思った瞬間。
湊が、かあっと赤くなった。
「……嫌じゃなかった? 好き、とか言うからさ。可愛すぎて」
「……それこそ、嫌な訳、ないし……好きって言ったの、オレ、だし……」
言いながら、恥ずかしいのか、どんどん俯いて行ってしまう。
あーもう。
やたら可愛いし。
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