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「湊と話すこと」*司
しおりを挟む「……やっぱり、気まずかった?」
「……え?」
出てきた言葉に、理解が追い付かず、湊を見つめる。
「――――……オレ、昔から、人と話すの……得意じゃなくて」
「――――……」
「特に、2人きりとか、苦手で……」
「ちょっと待って、湊」
「――――……」
……ん? ばれてるんじゃないのか?
……気まずい? 人と話すのが苦手?? ん?
「え、なに、湊、何の話?」
目の前の湊をまっすぐ見つめて、そう聞いたら。
「え。だから…… オレと居ても、今日楽しくなかったかな、と思って」
俯きながら、そんな事を言う、湊。
がくーーー、と、地面まで崩れ落ちて、めり込みたい気分に、陥る。
バレてない。
……いや、バレてないどころじゃない。全然話が違う。
オレが、湊を好きって事すら、分かってない。
恋心以前に、友達としての好きまで、疑われてる……。
「……あのさ、湊」
「――――……」
「――――……オレ、湊と居るの、すげえ好きだよ」
「――――……」
「分かってくれてると思ってた。 河原に押しかけてるのも、連絡先聞き出したいのも、家帰ってまで連絡してるのも……今日、誘ったのも…… 全部、湊と居たいからだと、思わない?」
「………」
「湊の話し方も好きだし、一緒に居るのも、すごい好きだし」
「――――……」
湊が俯いてしまっているので、顔が見えなくて、どう思ってるかが、分からない。恥ずかしいのか、なんなのか。全然分からない。
向かいのベンチから、湊の隣に移動した。湊の腕を掴んで、少し、上向かせて、顔を覗き込んだ。
「……分かってよ、オレ、すごく湊と居たいよ」
「――――……」
言い切ると、湊は、カッと赤くなった。
赤くなる、て事は……嫌がられてる訳じゃ、ない、と、思いたいのだけれど。
湊って、たまにかなり、予想外だから、わからない。
特に今、ひどい……。
はー……。
湊の腕を掴んだまま。がっくりと頭を落とす。
「……――――……オレ……」
「……ん?」
「オレ……ただでさえ、人と話すの苦手で……」
「……オレとは話すじゃん?」
このタイミングで、何の話をしはじめたんだろうと、湊の顔を見ながら、とりあえず掴んでいた腕を離した。
「司はちゃんと聞いてくれるから…… オレがたまに、黙っても…… 気にしないでくれるし…… 分かってくれたりも、するし……」
「……幼馴染とも話すだろ?」
「……2人は付き合いながくて…… やっぱり、ちゃんと、分かろうとしてくれるから……」
まあ。話す時に、あれやこれやとマシンガンのようなトークをしてはこないけど…… ていうか、それも、好きなんだけど。
「……別に、早く話す必要なんかないんだろ」
「――――……」
「大丈夫だよ、湊。 オレは湊と話すのが好きだし、楽しいよ」
「――――……」
「すこし位、黙ってもいいよ。それを待ってくれない奴なんかと話さなくて大丈夫。待ってくれる奴はきっといっぱい居るからさ。話してみろよ。苦手とか、思わなくなるからさ」
「――――……司……」
「……だから…… オレが言いたかったのは……」
なんだっけ、オレが、言いたいのは。
つか、湊の言葉が衝撃的すぎて。
オレが今日、つまらなかったって言うと思って、ここに座った。
湊はそう思ったから、気まずかったとか、オレに言ってきたんだよな……。
……嘘だろ。
オレ、今日、すげえ楽しかったけど。
傍から見たって、楽しくて浮かれすぎ、くらいだったと、思うけど。
オレが笑いながら、気まずいと思ってると思われたって事だろ。
無い無い。んな訳ない。
もはや、恋愛の可能性があるとかないとか、そんな話をする前に、
もっと、人として 信頼されないと――――……。
「……ん……?」
なんか、湊の頭の位置が低くなった。
……なに? ……倒れてる?
さっき、湊の腕を掴んでたから、すごく近くに居るオレに。倒れ込んできた、みたいに見える。
「え、湊、大丈夫?」
湊の手が、オレの両腕にかかって、その場所を、きゅ、と握りしめた。
「……湊? どした?」
顔を見ようとするけれど、頑なに俯いてて、あげてくれない。
本気で心配になってくる。
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