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「覚悟」*司
しおりを挟む楽しい時間はあっという間だった。
食事を終えてから、電車に乗って湊の住む駅に帰ってきた。
大丈夫と言われたけど、もう少し一緒に居たくて、家まで送る名目で同じ駅で降りた。
電車が混んでて、なんとなく黙ってる時間にふと考えた。
オレは、湊が好きだって、さっき、完全に納得してしまったけど。
……湊、男って、ありなのかな……。
ふっとそう思った途端。色々な事が気になってきた。
いつか好きになってもらえたらとか、楽観的すぎ、だよな。
男女なら、いつか、普通に考えてもらえるかもしれないけど……
男同士なんだから、友達として仲良くなってたって、そういう意味では絶対ナシ、て湊に言われる事もある……よな。
うーん。
どうしよう。……聞く?
……何て聞くんだ、オレ。
……男、対象?って?
いやいや、無い無い。
だって、無いって言われたら、どうすんだ。
自覚した当日に、おもいきり、失恋すんのはちょっと辛い。
「……司?」
「え? あ、何?」
「いや、なんか……黙ってるから」
「あ、ごめん」
「いいんだけど…… 司が黙るとか、珍しいから」
くす、と笑ってこっちを見上げてくる、湊。
……ああ、可愛い。
オレは、男でも、湊が可愛くて、好きで。
男とか、もはやどっかに吹っ飛んでしまう位、好きだって実感しているのだけど。
………湊の好意は、きっと、違うよな……。
可能性があるのか、聞いてみたい。
……でも、ほんとに、無かったらどーすんだ?
……諦められる気、しないんだけど。
聞くべき? 聞かないべき?
聞いて、アリなら嬉しいけどナシだったら?
並んで、道を歩きながら、そんな事を考える。
「……なに?」
湊が不思議そうにオレを見上げた。
「え?」
「何で、そんなに、見るの?」
「あ、ごめん。オレ、そんなに見てた?」
「……え、見てなかった?」
湊が、自分の勘違いだったのかと、少し、焦ってる。
「……やっぱり見てたかも」
「……何、それ?」
ふ、と湊が笑う。
「な、湊。 ……少しだけ――――……止まって、話してもいい?」
「いいけど……あそこ、座る?」
小さな川にかかった橋の近くに、ベンチがある休憩所があるのが見えた。
オレが頷くと、湊が先を歩き出してすぐにそこにたどり着く。向かい合って、腰かけた。
「なんかここ、いいな」
「うん。昼間は、人がいっぱいいるよ。お散歩中の人達とか。子供づれとか」
「そっか」
「うん」
そこで、一旦話が止まってしまう。
「――――……」
こんな気になる事、聞かないで帰ったら、ずっと気になる。
こんな内容の話、顔が見れない電話なんかじゃできないし、いつものランニング途中みたいな時間の限られた時になんか、話せない。
今しかない。と思ったから、湊を止めて、ここに座ったのだけれど。
湊的に、完全に無しだったら……。
そんな質問をして、気味悪がられたら、どうすんだ?
思ったら、言葉が出なくなった。
「――――……司?」
「……あ、うん…… あの――――……」
「うん……」
湊は、すごく、静か。
名前を呼んで促した位で、それ以上、何も言わない。
静かに座ってる湊が、青い外灯に照らされてて、なんだかキレイで。
余計に、何も言えなくなる。
言わなければ、今のまま、楽しく、居られるかもしれない。
少しずつ、心を開いてくれて。
友達と、して――――……。
そこで、ふっと、止まった。
このまま、黙ったまま、友達の振りして、
友達として、好きになって、もらっても――――……。
……それって、湊をだましてる事に、なるよな……。
友達として信頼されればされるほど…… 気まずい事に、なるんじゃ……。
じゃあやっぱり……。
最初に、確認しておいた方が……いいのかな……。
でもなー……。
この期に及んで、悩みまくってるオレに。
耐えきれなくなったように、湊が口を開いた。
「……司、あの――――……」
「え?」
「……なんかオレに、言いたい事、ある、よね……?」
「え」
どきん、と心臓が弾む。
え、オレの気持ち、バレてる?
……手つないだり、ドキドキするっていったり、すげえ会いたがったり。
……そうか、バレるか……。
じゃあ、ますます言うしかない。
そう思ってオレが覚悟を決めるより少しだけ先に。
湊が口を開いた。
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