17 / 36
「覚悟」*司
しおりを挟む楽しい時間はあっという間だった。
食事を終えてから、電車に乗って湊の住む駅に帰ってきた。
大丈夫と言われたけど、もう少し一緒に居たくて、家まで送る名目で同じ駅で降りた。
電車が混んでて、なんとなく黙ってる時間にふと考えた。
オレは、湊が好きだって、さっき、完全に納得してしまったけど。
……湊、男って、ありなのかな……。
ふっとそう思った途端。色々な事が気になってきた。
いつか好きになってもらえたらとか、楽観的すぎ、だよな。
男女なら、いつか、普通に考えてもらえるかもしれないけど……
男同士なんだから、友達として仲良くなってたって、そういう意味では絶対ナシ、て湊に言われる事もある……よな。
うーん。
どうしよう。……聞く?
……何て聞くんだ、オレ。
……男、対象?って?
いやいや、無い無い。
だって、無いって言われたら、どうすんだ。
自覚した当日に、おもいきり、失恋すんのはちょっと辛い。
「……司?」
「え? あ、何?」
「いや、なんか……黙ってるから」
「あ、ごめん」
「いいんだけど…… 司が黙るとか、珍しいから」
くす、と笑ってこっちを見上げてくる、湊。
……ああ、可愛い。
オレは、男でも、湊が可愛くて、好きで。
男とか、もはやどっかに吹っ飛んでしまう位、好きだって実感しているのだけど。
………湊の好意は、きっと、違うよな……。
可能性があるのか、聞いてみたい。
……でも、ほんとに、無かったらどーすんだ?
……諦められる気、しないんだけど。
聞くべき? 聞かないべき?
聞いて、アリなら嬉しいけどナシだったら?
並んで、道を歩きながら、そんな事を考える。
「……なに?」
湊が不思議そうにオレを見上げた。
「え?」
「何で、そんなに、見るの?」
「あ、ごめん。オレ、そんなに見てた?」
「……え、見てなかった?」
湊が、自分の勘違いだったのかと、少し、焦ってる。
「……やっぱり見てたかも」
「……何、それ?」
ふ、と湊が笑う。
「な、湊。 ……少しだけ――――……止まって、話してもいい?」
「いいけど……あそこ、座る?」
小さな川にかかった橋の近くに、ベンチがある休憩所があるのが見えた。
オレが頷くと、湊が先を歩き出してすぐにそこにたどり着く。向かい合って、腰かけた。
「なんかここ、いいな」
「うん。昼間は、人がいっぱいいるよ。お散歩中の人達とか。子供づれとか」
「そっか」
「うん」
そこで、一旦話が止まってしまう。
「――――……」
こんな気になる事、聞かないで帰ったら、ずっと気になる。
こんな内容の話、顔が見れない電話なんかじゃできないし、いつものランニング途中みたいな時間の限られた時になんか、話せない。
今しかない。と思ったから、湊を止めて、ここに座ったのだけれど。
湊的に、完全に無しだったら……。
そんな質問をして、気味悪がられたら、どうすんだ?
思ったら、言葉が出なくなった。
「――――……司?」
「……あ、うん…… あの――――……」
「うん……」
湊は、すごく、静か。
名前を呼んで促した位で、それ以上、何も言わない。
静かに座ってる湊が、青い外灯に照らされてて、なんだかキレイで。
余計に、何も言えなくなる。
言わなければ、今のまま、楽しく、居られるかもしれない。
少しずつ、心を開いてくれて。
友達と、して――――……。
そこで、ふっと、止まった。
このまま、黙ったまま、友達の振りして、
友達として、好きになって、もらっても――――……。
……それって、湊をだましてる事に、なるよな……。
友達として信頼されればされるほど…… 気まずい事に、なるんじゃ……。
じゃあやっぱり……。
最初に、確認しておいた方が……いいのかな……。
でもなー……。
この期に及んで、悩みまくってるオレに。
耐えきれなくなったように、湊が口を開いた。
「……司、あの――――……」
「え?」
「……なんかオレに、言いたい事、ある、よね……?」
「え」
どきん、と心臓が弾む。
え、オレの気持ち、バレてる?
……手つないだり、ドキドキするっていったり、すげえ会いたがったり。
……そうか、バレるか……。
じゃあ、ますます言うしかない。
そう思ってオレが覚悟を決めるより少しだけ先に。
湊が口を開いた。
25
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説


朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる