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「いつか」*司
しおりを挟む湊に夕飯何が食べたいか聞いたら、司が好きなものが良い、と言われた。
「オレの好きなので良いの?」と聞いたら。
「オレ、今日なんでもいい気分だから」て事で。
「じゃあ……ハンバーグは?」
「いいよ。司、好きそうだね」
クスクス笑われて、うん大好き、と言ったら、さらにふ、と笑われた。
もうすぐ18時か……。
「湊、何時に家に着けばいい?」
「んー20時くらいかな?」
「了解。じゃあもう、夕飯食べに行こ」
「うん」
ハンバーグがメイン料理の、レストランに連れてきた。
なにを食べたいかは すぐに決まって、湊に視線を向ける。
「え。もう司、決まったの? 早や……」
「いーよ、ゆっくり決めて」
「うん、待って」
湊が視線をメニューに落としてるのを良い事に、じ、と見つめる。
「――――……」
ほんと、キレイな顔。
――――……柔らかそうな髪の毛。
伏せられてる睫毛が、長い。
肌白くて。髪、茶色。なんか、色素、薄いよなー…… ほんと、キレイ。
指細い。
首、細い。
――――……何でこんなに、キレイかな。
「これにする」
ぱ、と顔を上げて、湊が微笑んだ。
「――――……」
とくん、と、胸が弾む。
――――…… やっぱり、笑った顔が、一番可愛いな。
ぷ、と笑うと、湊は笑顔を引っ込めて、首を傾げてる。
「あ、これね? ライスとパンどっち?」
「ん。ライス」
「ソースは? デミグラスと大根おろしとどっち?」
「ん……と、 デミグラス」
店員を呼んで、注文を済ませて、メニューを片付ける。
「ドリンクバー取りにいこ」
「うん」
一緒に歩いて行って、飲み物を注ぎながらストローを湊に渡す。
「ここよく来る?」
「ん。友達とここに遊びに来ると、結構寄る」
「慣れてるもんね。メニュー決めるのすごい早いし」
「あー、もうメニューはいつも三択位なんだよ。これかこれかこれ、みたいな決まっててさ」
「そうなんだ」
可笑しそうに湊が笑う。
「なんかさ、湊」
「ん?」
「やっと最近、ちゃんと笑ってくれるようになった気がする」
「……え。オレ?」
「うん」
湊がちょっと困ったような顔で、見上げてきてる。
あ、やば。今までちゃんと笑ってなかった、みたいな風にとれるか。
2人で、テーブルに戻ってから、まだちょっと困ってる湊に向かい合って。
「変な意味じゃなくて。 最初の頃はさ、何でまた来たの?みたいな顔、してたからって事だよ」
そう言ったら。湊は、黙って、オレをじーっ、と見つめて。
それから、ふと、視線をグラスに落とした。
「……まあそうかも…… だって…… 普通、来ないでしょ。ガッコも違うのに……オレのとこ来て何が楽しいのかなって思ってた」
「楽しいから、居るんじゃん」
すぐさま言うと、湊は、ふ、とオレに視線を戻して。
それから、ふわ、と微笑んだ。
「……なんか――――…… 何で司がオレのとこに来るのかは、まだ良く分かんないんだけど……」
「え、分かんないの?」
「うん……」
「……うん、まあ、いいや。……うん、それで?」
腑に落ちないものを大いに感じながら、とりあえず、湊の言葉の先を待つ。
「……分かんないんだけど……」
「――――……うん?」
「……オレは、司と居るの――――…… 今、楽しい、かも……」
「え」
あんまりに意外な言葉に、数秒、返事が出来ない。
「え………マジで?」
マジマジ見つめて、しばらくしてから、そう聞いたら。
湊は、一気に、かあっと赤くなった。
「……っ……今のなし」
「何で、なしになんの。待って待って」
「……ちょっと、オレ、トイレ行ってくる」
「え゛っ」
急に立ち上がって、湊があっという間に、トイレに消えてしまった。
「……逃げられた」
思わず呟いてしまう。
――――……でも。
やばい。
どう我慢しても、ニヤニヤしてしまう。
拳で口元隠して、窓の外を眺める。
「――――……」
楽しいかも、だって。
――――……かも、だって。
すっげー、可愛いな、湊……。
……ヤバいなー、オレ……。
――――……顔が、めっちゃ好みなんだろうなとは、思う。
初めて見た時から、心持っていかれて。
でもその後ずっと、通うようになったら。
話してる湊の声も好きで。
あんまりポンポン飛んでこない湊の言葉を待ってる時間も好き。
すぐ照れるのも可愛くて。
……なんか、湊の中身がああだから、ああいう顔して、ああいう表情で、雰囲気なんだと思うと、 もう、顔以外の全部も、めっちゃ好みで。
――――……オレ。もー絶対、湊が好きなんだろうなー……。
自分の中でそう言うと、
気持ちが、すとん、とそこに落ち着いた気がした。
男だからとか、男なのにとか、今まで少し思ってた所も、
もう、いいや、と思えてしまった。
オレと居て、楽しいって思ってくれるなら、
ずっと、湊と、居れるように、頑張ろう、と。
いつか、好き、て言えたら、いいな。
少しずつ、距離近くして、信頼してもらって。
いつか、オレと同じ意味で好きになってもらって。
――――……それは、難しいかなあ……。
でも。
いつか同じ意味で、好きと言いあえたら、いいなあ。
そんな風に思っているところに、湊がやっと戻ってきた。
もう赤くはないけど、なんか、微妙に困った顔をしてる。
ここでからかったらまた居なくなりそうなので。
「おかえり」
とだけ言って、笑いかけると。
「――――……うん」
頷いて、湊が微笑む。
うん。
湊には、これが正解なんだと思う。
あんまりがちゃがちゃ言っても、戸惑わせるし。
ゆっくりが、良い。
ほんと――――……可愛いな。
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