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「毎日見てたい」*司
しおりを挟む「本屋って端って言ったけど、奥の方って事?」
「うん。だから最後でいいよ」
「じゃその前にさー、なんか食べよ」
「お腹すいた?」
「さっきめっちゃ走ったし。 な、湊、クレープ好き?」
「んー……食べた事ないかも」
聞いたら、予想外の返事が返ってきた。
「え、ほんと?」
「小さい頃はわかんないけど……覚えてる限りはない」
「……えーと。 甘いの嫌いとか?」
「好き」
「そうだよな、チョコ好きだって言ってたよな」
「……なんとなく……買いにくくて、かな」
あ、なるほど。そういう事か。
「じゃあ、初クレープ、おごったげるよ。いちご好き?」
「ん」
「じゃ待ってて」
クレープの店の側に、外で食べる用に丸テーブルがいくつかある。そこに湊を座らせて、列に並んだ。
会計を済ませて、湊の席に戻ると。
何だか、困ったような顔をしてる。
「どした?」
「席が可愛すぎて、居心地わるすぎて……」
「あー ……大丈夫、湊、可愛いから。似合う」
クスクス笑いながらそう言ったら、湊はさらに困ったように、オレを見上げた。そんな湊の前に、買ってきたクレープを差し出す。
「ん、湊。どーぞ」
「ありがと、オレ。……なんかすごい」
「うん。それ、すごいね。甘そう」
山盛りの生クリームとイチゴに、チョコクリームがかかってる。
「食べてみて?」
言うと、いただきます、と言って、湊が一口。
食べた瞬間。ぱっと、笑顔。
「美味しい」
「――――……そっか、よかった」
めっちゃ笑うから、一瞬、びっくりした。
――――……そんな素直に笑うんだったら。
もういっつも甘いもの、あげちゃいたくなるなー……。
「司のはなに?」
「照り焼きチキンとレタス」
「甘くないのも、あるんだ」
「うん。オレはこういうクレープばっかり食べてるかも」
「甘い生地に、そういうのって、美味しいの?」
「うん。美味しい。食べてみる?」
「……ううん、良い。いつか、食べてみる」
湊の一瞬引く姿に、ん?と不思議に思って。
……ああ。……間接キス、みたいな?
……恥ずかしいって事なのか、潔癖って事なのか……。
恥ずかしいならいいけど……。
「……湊、潔癖症?」
「え。 ……いや、別に……何で?」
「……じゃさ、これ、食べないのって、なんで?」
「え。だって――――……」
瞬間、かあっと赤くなる。
「あ、もういいよ。分かった」
恥ずかしいって事か。
――――…… ていうか。
……ほんとに、可愛すぎて。
どうしよう。
好きなんだよな、オレ。
湊の事。
――――……男とか、女とか。良く分かんないけど。関係なくて。
「湊」が、好き。
足りない言葉も、表情固まるとこも、たまに笑うのも。
ぼんやり、景色眺めてる時の、顔も。
――――……オレと居て、赤くなったり、可愛いのも。
なんか、毎日、見てたい。
そんな事を考えながら、クリームいっぱいのクレープを美味しそうに食べてる湊を見ていたら。
「こんにちわ」
女子2人に話しかけられた。
「2人ですか? よかったら一緒にカラオケとか……」
「――――……」
こんな席に男2人で座ってから、いろんな子達に、チラチラ見られてるのは知ってたけど。湊が気づかないのを良い事に、全部かけらも視線を合わせず無視してたんだけど。 ついに、話しかけられてしまった。
――――……違う制服の2人組って、そんなに目立つのかな。
この街、遊びに来てる女子高生達が多いから、男子だけで来てると、見られたり、声かけられるのは、あるけど。
でもなんか、今日は視線がちょっとウザイほど。な気がする。
……湊が目立つのかもな。
――――……キレイだもんな。
つか、たぶん、オレにとってはキレイで可愛いけど、女の子にとったら、間違いなく、イケメンなんだろうし。
いつも河原でしか会ってないから、誰かが湊を見る姿って、考えた事無かった。
「ごめんね、今日は2人で遊ぼうって言ってて」
湊は、対応を完全にオレに任せたらしく、まったく無反応。
食べるのだけストップして、オレを見てる。
少しやり取りして、諦めてもらい、離れた瞬間。
「……ほんとにモテるんだね」
「え?」
「前言ってたよね、モテるって」
「――――……あー…… ていうか、今のは、湊も一緒に話しかけられてると思うけどね」
「違うと思うけど。……さっき、司が注文で並んでくれてる時もさ」
「ん?」
「司の後ろの子達とか、道歩いてく子とか、司の事、見てたよ?」
「あー……そうなんだ。気づかなかった」
「制服かっこいいし」
「そう? ありがと――――…… てか、制服がかっこいいの? オレがかっこいいの?」
そう聞いたら、湊がぴた、と固まって。しばし後に。
「――――……せ、いふく……」
「あ、そう」
赤くなる湊に、くす、と笑ってしまう。
ほんと、可愛い。
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