【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里

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「嬉しい」*司

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 テスト期間が終わった。
 とりあえず、まあ何とかなった、はず。

 今日から部活再開なので、部活のメンバーと、昼を駅前に食べに行こうって話になった。

 テスト期間だったから、湊に会えなくて。
 元気かなーと、ずっと気になっていた。

 やっぱり連絡先聞かないと、日々気になってしょうがない。


 ――――……嫌がられそうだけど。


 ……まあ……。
 オレも自分で、何でこんなに気にしてるのかって思う事はあるし。

 違う高校の、たまたま会う、男……だし。
 ……ていうか、そもそも、接点もないのに、こんなに話してる事自体、本来なら、ちょっと謎。普通なら、無い。

 もう、ただ、会いたい、話したいとしか、言えない。

 湊の方は――――……うーん。
 ……別にオレと話さなくても、何の問題もなく、生きていきそうだけど……。


 店について、食べたいものが決まった奴からレジに並んでいく。
 何にしようかなーなんて、周りに貼ってあるメニューの写真を眺めていたら、湊と同じ制服が、自然と目にとまった。

 あ。湊の制服――――……。



「……あれ?」

 横顔……というか、ほぼ後ろからのアングルではあるけれど。
 でも、間違いなく。


「湊?」

 近づいて呼んだら。振り返った、驚いたような顔は。


「やっぱり湊だ」

 こんなところで偶然会えて。
 ほんとに、嬉しかった。


 ――――……湊は友達と居た。

  1人は、なんか人懐こそうな感じで。
 もう1人は、ちょっと冷めた感じの男。

 でも、突然割って入った司にも、普通に話してくれた。


 幼馴染と聞いて、湊にそういう友達が居る事を、初めて知った。
 ていうか、別の高校なのに、引き続き仲良しなんだと思うと、すごく意外。

 最初の頃のあの反応とか、中学の湊を知ってる奴の話を聞くと、あんまり人と関わらなそうなイメージがあったから。

 そうだ、と思い出して。

「連絡先交換しよ」

 とやっと、言えたら。
 まさかの、「オレ達って、連絡、とる??」という、質問。

 ……まさかのというか、まあ、思っていた通りではあるのだけれど、でもまさかほんとに言われるとは思わなかった……。


「……用事ある?」
「……つか、何なの、お前。あるある、オレ、めっちゃ連絡するから!」

 そう言ったら、人懐こい方の幼馴染に笑われて、「まあ、湊はなかなか打ち解けないからね。気にしなくていいと思うよ」なんていうフォローをもらった。


 まあ……
 分かってる。

 なかなか打ち解けない……。


 でもとりあえず。
 ――――……連絡先、やっと、聞けたから、多少の事は、よしとしよう。




◇ ◇ ◇ ◇



 部活が終わって、家に帰って、入浴食事全部終えて、19時50分。
 そろそろ塾、終わる頃。

 20時過ぎたら、送ろう。


「――――……」


 すっげえ、ふわふわする。

 オレ、やっぱり、湊の事が、好きすぎる。


 こんな、たまにしか会えない関係なのに。
 なのに、いつも、誰よりも心の中にいる。


 なんでだ?


 あまり会えないから、却って余計に会いたいのか?

 でも、そもそも「会いたい」から、「会えない」と思うわけで。

 どう考えても、「会いたい」が先だ。


 会いたい。
 話したい。

 笑う顔が
 照れる顔が
 困る顔も


 なんか、ぽつりぽつりと、ゆっくり話すところも。
 なのに急に何かつっこんでくるとこも。


 何か全部、可愛く思えてしまう。



 連絡先が分かって嬉しいのは、
 会える時まで、待たなくて良くなったから。

 声が聞きたくなったら、電話もできる。
 あの場所に来る時間も聞けるから、すれ違う事もなくなる。


 こんなに一緒に居たいの、初めてで。
 もう、どうしていいのかよく分からない。

 女の子にこういう感情を持つなら、もう、する事は決まってるんだけど。

 ……湊、男だからな……。

 女の子にするみたいに迫ったら、どーなるんだろ。
 ……直接的に迫ったら、完全に拒否されそうな気がするし。

 ……間違いなく「好き」なんだけど、
 男同士だから――――……少し、悩む。


 湊の事は好きすぎ。
 いつも、姿見つけるだけで、嬉しい。
 雨だと会えないから、沈む。

 今日偶然会った時、どれだけ嬉しかったか。


 学校で仲良い女子と話すより、告白してくる女の子たちより、
 湊と居たいって、感じてしまうんだから、しょうがない。


 そりゃ最初は自分でも、不思議だったけど。
 
 会えない時に湊の事を思い出す自分、
 会えた瞬間の、ふわふわ幸せな、気持ち、
 
 ……ちゃんと考えれば、結論は早かった。


 オレは、湊の事が、好き。
 もっと話したい。一緒に居たい。



 ――――……その先の事は、
 湊にも同意してもらえないと、進めない。

 ……進めるか、そこで終わるか、分かんないけど。


 ……とりあえず、一緒に居て、話して、オレを知ってもらって。
 好きになってもらえたら――――……いいんだけど。

 としたら、もう、まずは友達としてで良いから、とにかく、会いに行くしか、話すしか、できる事は、ない。


 湊の連絡先が入ったスマホが、特別な、大事なものに感じる。
 そんな事初めて思う。

 たまにしか会えない、湊の事が、こんなに大事。


 好きになるって、どれだけ長くいるか、は関係ないんだなあ……。
 と、最近そう思う。


 いつも、湊に会う時は河原で、空と、川に反射した光が目に映る。
 キレイな光が、湊といる空間を、余計、特別にしてる。
 
 それを見てる、湊が、ほんと、キレイだし。






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