【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里

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「会いたい」*司

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 湊と話すようになってから、3か月ちょっと。

 湊って……ほんと、可愛い。
 ちょっと触るだけで、なんであんなに、恥ずかしがるんだか。


 ……つか、オレがおかしいのか?
 ――――……普通…… 男に、あんな風に触らない、か。

 ……だって、可愛いんだよなあ。
 ほんとに。


「おかえりー、司、遅いよー!」

 マネージャー兼世話係の、秋山 沙希あきやま さきが大声で叫んでくる。

「別に遅くないだろ」
「遅いよ。寄り道してない?」

「……なんで?」

「だって、こないだも、司が河原に座ってるの見たって子が居たし」
「あー、……ちょっと休憩した時、な」

 やっべ。さぼってるのバレたら、先輩に叱られる。

 高校にサッカー推薦で入って、まあ、技術は認めてもらえたのだけれど。
 スタミナにダメ出しをされた。確かに、先輩達と走るには、体力が足りないのを実感。

 それで、高1の終わり位から、特別メニューで校外に出て結構な距離を走らされる事に決まってしまったのだけれど。そこで湊に会えたので、まあラッキーと思う事にしていた。

 さぼってるのがバレて、外に行けなくなったら困るし。

「ちゃんと走ってるからへーき。 だいぶスタミナもついてきたし」
「じゃあいいけど……」

 その場に座り、ストレッチを始める。


 ……あそこでしか湊と会えないからな……。 
 できたら、あそこ以外で会えるようになりたいんだけど、今は、あそこで会うしか、接点がない。

 ……他で会おうとか言ったら、不審がられそう。
 つい苦笑いを浮かべてしまいそうになって、ストレッチをしながら、顔を下に向けた。

 最初の頃は、寄るたびに、また来たのかという顔をされた。
 最近やっと、会うと少し笑ってくれて。隣に座っても、不思議がられなくて済むようになった気がする。

 長かったなー……。

 それでも、今もきっと、他で会おうとか言ったら、絶対「何で?」と言われる気がする。

 何でって言われたら、なんて言ったらいいんだろう。

 ……会いたいから、としか言えない。


 制服じゃない湊に会いたい、とか。
 塾行く前のわずかな時間じゃなくて、長く話してみたい、とか。
 河原のあそこだけじゃなくて、違う所で、会いたい、とか。

 ――――……色々思うんだよな……。

 それ言ったら、最悪、気味悪がられそうで。


 なんで湊って、あんなに頑な、かな。
 今まで知り合った中で、ダントツかもしれない……。

 そんな湊のことが何でこんなに気に入ってるのか、自分でも謎なのだけれど。

 あの、頑なな表情が、少しずつ慣れてくれて。
 笑ったり、照れたり、困ったり、色んな顔をしてくれるのが、可愛くてならないのは、もうどうしようもない事実で。


「司、ストレッチ終わったら、試合はいれー!」

 先輩に呼ばれる。
 返事をして、グラウンドに向かって走った。



 部活を終えて、皆で駅まで歩きながら。いくつも塾の看板が目に入ってくる。これのどこに、湊がいるんだろうと思いながら、少し見上げた。

「……なあ、ここらへんの塾で、頭いいとこ、どこ?」
「いくつかあるよな。何で?」
「なになに、司、塾いくの?」

「いや、いかないけど。 ……やっぱ、なんでもない」


 ここら辺のどこかの塾に、湊がいるんだよな、と思って聞いてみただけ。


 ジョギング中だし、そんなには、さぼれないから、長い時間は話せない。
 まだどこの塾に行ってるかは、聞いてなかった。
 今度きいとこ。
 


 雨が降ると、会えないし。
 土日も、会えないし。

 晴れてても、タイミングがあわないと、会えない。



 最近、いつも思う。



 湊、今頃元気かな、と。



 最初の頃は、会えたら、ちょっとラッキーだな位の気持ちで。
 レアキャラに会うみたいな、そんな気分だったのだけれど。


 今日は会えるかなと。
 毎日毎日、思ってしまう。

 雨だと、早く止めばいいのに、と思う。


 湊に会うのが楽しみで。
 日々生きてるような気すら、してしまう。



 ――――……オレのこの気持ちって。
 なんなんだろう。

 まるで、恋でもしてるみたいだと。
 思うけど。

 ――――……湊って、男なんだよなあ……。
 ……綺麗だし、可愛いけど。


 ……うん。
 まあ、分かってる。 ……男。



 でも、会いたい、よな。
 
 素直に思うのは、それだけ。










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