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第212話 打ち上げ!
しおりを挟む学祭からのイケメンコンテント。その熱気がまだ全然冷めないまま、駅近くの、貸し切りのパーティールームに集まっていた。
広い部屋に入ると、テーブルと、ソファ席。奥には、大きなスクリーンのカラオケがある。
騒ぎ放題、てことで、予約したらしい。
中に入って、奥から適当に席についていくのだけれど、オレと颯だけは一番先に、奥のお誕生日席みたいなところに、皆の方を向いて、座らされた。
むしろこれ、颯だけでいいのでは。並ぶと――あ。あれっぽい。結婚式とかみたい。座らされた直後、そんなことを考えてしまって、一人勝手に照れていると。
「まずお酒飲める人頼むから決めて。ドリングバーは部屋を出た所にあるから、取ってきて」
幹事を引き受けた昴、誠、健人たちが、仕切ってる。
その間に、色んな食べ物が次々に運ばれてきて、テーブルを埋めていく。飲み物が全員そろったところで、昴が「じゃあまず、颯の挨拶から! あ、聞こえにくいから、マイク使ってー」と言った。
颯は、隣で立ち上がると、マイクのスイッチを入れて、皆を見回した。ふ、と笑っただけで、座ってた皆が表情を緩めて、ニコニコ、颯を見上げた。
「準備から今日まで、皆、お疲れさま」
その言葉に、お疲れさまーと皆が返す。
「オレの友達と、慧の友達と。たまたま知り合った後輩たちと」
「なんですかそれー」
匠の周りが笑いながらツッコんで。それが収まってから、颯は、続けた。
「こんな風に、学祭に出るなんて思いもしなかった」
颯は、ふと、オレを見下ろして――笑うと。
「オレ達が結婚してしばらく経って。慧が言ったのが、オレと慧のまわりが、結婚式までには仲良くなってくれてたらいいなあ、てセリフで。そうだな、なんて言ってたんだけど。それを言ったすぐあとに、屋台をすることになって――匠たちも含めて、一つのこと、準備して、皆で頑張って」
皆、うんうん、と頷いて、顔を見合わせてる。
「――もう仲間だよな、と、勝手に思ってる」
颯の言葉に。全員、一斉に颯を見て、なんだか目をぱちくりさせてる。
「……っつか、見すぎだよな」
照れたみたいに笑う颯に、皆、大騒ぎ。
「コンテストの方も、応援、ありがと。感謝してる」
ますます大騒ぎ。昴が笑いながら、「皆グラス持って」と叫んだ。皆、グラスを持って、少し上に掲げる。颯もマイクを置いて、グラスを持った。
「お疲れ! 乾杯!」
颯が声を上げると、「お疲れさまー」「かんぱーい!!」と一斉に声が上がった。
誠たちが適当に音楽を流し始めて、ミラーボールもくるくる回る、楽しい雰囲気の中、皆の笑い声と、楽しそうな会話。
「屋台、大成功だったよな」
「すっごい並んでた」
「α多すぎ説ねー」
昴たちが、皆が撮ってた写真を集めて、スクリーンに流し始めると、皆、ますます盛り上がる。
ツッコんで笑って、皆、大騒ぎ。
しばらくしてから今度は匠たちの曲を繋げて、昴がマイクを渡す。「歌ってみ」と笑う昴に、匠は、「はーい」と立ち上がる。
急遽、匠のバンドのコンサートが始まって、またまた大盛り上がり。
「いいぞー匠―」
拍手で盛り上げながら、おいしいカクテルとか、すすめられるまま飲んでると、ふ、とよろけたところで、颯に支えられた。
「慧、酔ってる?」
「……うん、ちょっと? ふふ。楽しいねー、颯ー」
ふへへ、と笑って至近距離の颯を見上げると、ふ、と苦笑されるけど。
「連れて帰ってやるから。飲んでいーよ」
よしよし、と撫でられてると、周りが、「ひゃー、颯が、激アマなんだけどー!」「なにそれー!」「びっくりなんだけどー」と、女子がきゃっきゃと騒いでる。「えへへ。いいでしょ」と、オレは言ったような。そしたらますますキャーキャー言われた。
「次、颯、さっきコンテストで歌った曲、フルで歌えー」
「は? 今歌う曲じゃないし。ノリ違う」
ラブソングだからなのか、颯は最初は断っていたけど、皆に、「ききたいー」と叫ばれて。その後オレに「慧も聞きたい?」と聞いてくる。
「うん! 聞きたい!!」
笑顔で言ったら、ちょっと眉を寄せた後。はー、しょうがないか、と立ち上がる。
すると、まわりがまた、「慧の為に歌いまーす」「奥さんには激甘の颯くんのラブソングー!」みたいな。
なんかもう、皆、超面白がってるとしか思えない。
そんな中でも、歌ってる颯は、めちゃくちゃカッコよくて。
ラブソング聞いてたら、何だか、ぽろ、と涙が零れてきて。
「ひゃー、よっぱらい慧くんが泣いたー!」
「ひゃー可愛いー写真撮らせて」
「えっやだよ」
わーわー言ってる間に写真も撮られたような。
皆で、話して、歌って、踊って、超大騒ぎ。
「来年また屋台やろうよ~」
「そんで、後夜祭は、今度は匠の番なー」
「そうだね、絶対やろうねー」
皆と話して、イケメンコンテストの話は、めちゃくちゃからかわれながら。
でも楽しくて。なんかオレ、いっぱい、飲んでしまった。
なんとなく、皆で記念写真を撮ったこと、笑顔で解散したことは、覚えてる。
オレがふらふらしてるから、颯におんぶされることになっちゃって。うふふ。幸せ、とか思いながらも、ごめんね、とか言ったら。
「ごめんとか思ってないだろ慧」
「颯の背中で幸せ―とか、絶対思ってる」
「笑ってるもんね」
昴とか誠とか多分何人かが色々言ってて。
花束とか、颯のスーツとか色々荷物を持って、ついてきてくれてたことも分かってた。
◇ ◇ ◇ ◇
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