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第210話 サプライズ
しおりを挟むドキドキのオレに、実行委員さんの女の子達二人がめちゃくちゃにっこにこで笑いかけてくる。後ろから来る子が、花束を抱えている。あ、これは、と思った瞬間。
「一位ですよ、颯さん!」
「おめでとうございます!」
その言葉を受け止めるのに、少しだけ時間がかかった。
「最後の票の追い上げがすごすぎて。ダントツです」
「――あ、りがとうございます……!」
わぁ。やったー!
ろくに答えられないまま、心の中でぴょんぴょん飛び跳ねてる気分。
「花束、お願いしますね」
綺麗な花束。すっごい豪華。抱えると、花束に埋まってる感覚がある。
「いい匂い」
良かった。花束。渡せる。
……なんだか声を出したらちょっと泣きそうで、何もしゃべらず、花を見ていると。
「あの、慧さん」
「……?」
二人が、少しいいにくそうに、遠慮がちに話し始める。
「あの、もしよかったら、なんですけど」
「はい」
「他薦の方の推薦文は、公表することはいままで無かったんですけど……」
「……?」
なんだろうと、小さく頷いて聞いていると。
「――颯さんのあの最後のメッセージを聞いたら……どうしても、慧さんの推薦文、お祝いの言葉として、颯さんに読みたくて……!」
「許可いただけませんか?」
「えっ。……ええ……」
あれ、何書いたっけ。
なんか、颯の好きなとこ、思い浮かべて――えっと。
「何書いてたか……」
とっさに思い出せない、と思った瞬間、手に持ってた紙を渡される。
「こちらです!」
「――」
ええ。もう、用意されてる……。
苦笑しながら、目を通す。……ああ、書いた。書いたな、これ。うん。
読み直してみれば、確かに書いたことばかり。
「……え。これを、発表……?」
「さっきの颯さんのを聞いてた皆さんは、これが読まれたら、すごく盛り上がると思うんですよ~!」
「……そう、ですか……?」
出されないって聞いたから書いたし……恥ずかしいかも……。
「絶対絶対、颯さんも、何よりも喜ぶと思うんです!」
「――颯が……??」
その言葉には、心がすごく動く。
ええー。恥ずかしいけど……。
「恥ずかしくて読める気、しないんだけど」
そう言ったら。
「私たち、読みますから!!!」
すごい勢いで、言われて。
数秒後。「お願いします……」と、言っていた。てか、言うしかない感じだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「それでは、皆さん、お待たせしました!」
派手な音楽が流れて、モニターが動き、「結果発表」とでかでかと表示された。ライトがくるくる回る。
「事前投票およびリアルタイムで投票していただいたものを集計し、順位が決まりました!」
「いよいよ今年の、イケメンコンテストの優勝者を、発表します」
また激しい音楽と、光。ステージ裏から少し観客席をのぞく。屋台を一緒にやった皆と、少し離れたところに、颯の先輩達も見守ってるのが見える。皆ドキドキしながら、結果を待っているように見える。
そっか、実行委員以外で知ってるのは、今はオレだけなんだ。
――知ってても、ドキドキしてる。
こうして上から見てたら、オレが居ないのバレちゃうな。颯、花束がオレだって気づいてるかも。サプライズがー! あ、でも。……推薦文を読むのは、完全にサプライズだから、良かったかも、あれ受け入れて。
四位、三位――そして、二位。事実上ここが一騎打ちだって、皆分かってて、シン、と静まり返る。二位で宮野の名前が発表された時点で、わぁっと、歓声が起こった。
「なんと、最後で逆転です!!」
「神宮司 颯さん、二年連続の優勝です。おめでとうございます!」
シャボン玉が一気に飛んで、紙吹雪が舞った。
わーすっごい派手だな。
「慧さん、お願いします」
とん、と背中を押されて、オレは、ステージに出て、颯の元に歩く。
あ、という顔でオレを見た颯が、ふと微笑んだ。
あの顔だと――居ないのは分かってたけど、確信はしてなかったって感じかな。
「颯、おめでと!」
おっきい花束を、颯に渡すと、受け取った颯が「ありがと」と笑ってくれた。もうもう、めちゃくちゃ幸せ。生きててよかったよう。と、感動していると。
「番の慧さんからの花束贈呈です! 本当におめでとうございます」
わーと拍手が起こって、それが落ち着いてから司会者が続けた。
「本来は、前回優勝者からの花束贈呈なので、今回は、慧さんにお願いしました。そして、ここで、颯さんにサプライズのプレゼントがあるそうです」
司会者がそう言って、女の子二人にマイクを渡した。
ひええ。ドキドキする。ていうか、やっぱり恥ずかしいかも。こんないっぱいのところで読まれるの……!
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