【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

文字の大きさ
上 下
204 / 222

番外編 モブ視点 2

しおりを挟む
 

物理。今日は薬品を使っての実験。

「危険だから、気をつけろよー?」

 先生の声が響く。
 今日は、実験のグループが慧と一緒だ。かなり近距離で見れるチャンス。とか思っていたら、持っていた薬品の瓶が、つるっと手から滑った。
 しまったー!と思った瞬間。

「うわっ……っぶね!」

 とっさに手を出した慧が、オレの落とした瓶をキャッチした。
 周りは一瞬ひやっと青ざめた後、慧がキャッチしたのを見て、皆、はぁぁぁ、と息をついた。

「お前らマジで気をつけろー!」

 先生の声が再度響いた。
 
「わー慧くん、すごい、良くキャッチしたねー」
「すげーな」

 皆が慧をほめたたえている。
 オレは驚きすぎた心臓が、まだバクバクして固まっていたのだが。

「はい」
 慧がオレの手に薬品をそーっと渡す。ぎゅっと握ると、慧は、ふ、と笑った。

「何ぼーとしてたの?」

 クスクス笑って、更に、「危なかったなー?」と、キラキラの笑顔を飛ばしてくる。
 ありがとう、と言うと、慧は、うんと頷いて、その瞳を細めた。

「ね、オレ、今すごくなかった??」
「うん。すごかった」
 そう答えると、ぱっと笑顔になって、「だよね!」と言う。

 嬉しそうで、すごくかわ……。
 はっ。……今、オレは、何て言おうとした??
 オレみたいな一般βが、トップαに向けていい言葉では、絶対にない。間違っても口に出すわけには!

 無事実験を終えて、各グループ、先生にあてられた奴が実験結果の発表。
 うちのグループは、慧が呼ばれた。
 はい、と立ち上がって、実験結果をすらすらとあげていく。
 さっきの無邪気で嬉しそうな顔じゃない。

 こういうとこは、ものすごくαっぽい。
 真面目な顔してると、すごく、凛々しく見える。

 発表を終えると、はい、よくできましたと、告げた先生に、「先生、何点?」と笑顔で聞く。
「九十五点」
「えー? 五点は何?」
「最後の考察、もうちょっとあると良かったなーって感じだな」
「りょーかい。次回ね!」
「ね、じゃない。敬語」
「はーい」

 一応注意はしてるが、先生もどう見ても笑顔だし、いいよな、こういう奴って、可愛がられて。と思ってしまう。

 実験室から、教室に帰る途中の廊下。オレはβの友達と歩いていたら。前を歩いていた慧が、声を上げた。

「あーー、颯!」
「……ああ。慧か」

 来た、うちの学校ツートップ、もう一人のトップα。
 ……慧に比べて、こっちは、いつでもαって感じの奴なんだけど。

 なんつーか。立ってるだけで、迫力があるというか、別にうるさくもないし、凄みを出して偉そうにしてるという感じではないのに。なんか、静かだけど、クールだけど、存在感があるというのか。
 慧みたいに第二ボタンまであけてるようなことはなく、ちゃんと制服着てて、見本みたいな感じ。モデルみたいなルックスしてる。これで頭いいし、運動もできて、家柄は格別、とか。神さまは不公平だなと、ちょっと思ってしまう。まあ多分そんなこと、知ってる全員が思ってるだろう。

 そして、この二人、タイプが、全然違う。

 慧が騒がしくて、なんか可愛がられてる感じなら。
 颯はクールで、可愛がられるとかは全くなく、崇められる……みたいな? 二人を囲んでる奴らも、慧は仲良しお仲間って感じで、颯は、完全にお取り巻き、て感じ。
 
 で、全然タイプが違くて、本来なら絡まない二人じゃないかと思うのだけれど、この二人、なぜかいつも、張り合っている。

 なぜか、というか。
 慧が、めちゃくちゃ張り合いに行ってるからそうなってる、というのかな。

 分析してるオレの前で、慧と颯が話し始めた。この二人が騒いでると、なんとなく皆ギャラリーになる。オレと友達もなんとなく、足を止めた。






しおりを挟む
感想 421

あなたにおすすめの小説

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。 拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。 逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。  兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

処理中です...