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番外編 モブ視点 2
しおりを挟む物理。今日は薬品を使っての実験。
「危険だから、気をつけろよー?」
先生の声が響く。
今日は、実験のグループが慧と一緒だ。かなり近距離で見れるチャンス。とか思っていたら、持っていた薬品の瓶が、つるっと手から滑った。
しまったー!と思った瞬間。
「うわっ……っぶね!」
とっさに手を出した慧が、オレの落とした瓶をキャッチした。
周りは一瞬ひやっと青ざめた後、慧がキャッチしたのを見て、皆、はぁぁぁ、と息をついた。
「お前らマジで気をつけろー!」
先生の声が再度響いた。
「わー慧くん、すごい、良くキャッチしたねー」
「すげーな」
皆が慧をほめたたえている。
オレは驚きすぎた心臓が、まだバクバクして固まっていたのだが。
「はい」
慧がオレの手に薬品をそーっと渡す。ぎゅっと握ると、慧は、ふ、と笑った。
「何ぼーとしてたの?」
クスクス笑って、更に、「危なかったなー?」と、キラキラの笑顔を飛ばしてくる。
ありがとう、と言うと、慧は、うんと頷いて、その瞳を細めた。
「ね、オレ、今すごくなかった??」
「うん。すごかった」
そう答えると、ぱっと笑顔になって、「だよね!」と言う。
嬉しそうで、すごくかわ……。
はっ。……今、オレは、何て言おうとした??
オレみたいな一般βが、トップαに向けていい言葉では、絶対にない。間違っても口に出すわけには!
無事実験を終えて、各グループ、先生にあてられた奴が実験結果の発表。
うちのグループは、慧が呼ばれた。
はい、と立ち上がって、実験結果をすらすらとあげていく。
さっきの無邪気で嬉しそうな顔じゃない。
こういうとこは、ものすごくαっぽい。
真面目な顔してると、すごく、凛々しく見える。
発表を終えると、はい、よくできましたと、告げた先生に、「先生、何点?」と笑顔で聞く。
「九十五点」
「えー? 五点は何?」
「最後の考察、もうちょっとあると良かったなーって感じだな」
「りょーかい。次回ね!」
「ね、じゃない。敬語」
「はーい」
一応注意はしてるが、先生もどう見ても笑顔だし、いいよな、こういう奴って、可愛がられて。と思ってしまう。
実験室から、教室に帰る途中の廊下。オレはβの友達と歩いていたら。前を歩いていた慧が、声を上げた。
「あーー、颯!」
「……ああ。慧か」
来た、うちの学校ツートップ、もう一人のトップα。
……慧に比べて、こっちは、いつでもαって感じの奴なんだけど。
なんつーか。立ってるだけで、迫力があるというか、別にうるさくもないし、凄みを出して偉そうにしてるという感じではないのに。なんか、静かだけど、クールだけど、存在感があるというのか。
慧みたいに第二ボタンまであけてるようなことはなく、ちゃんと制服着てて、見本みたいな感じ。モデルみたいなルックスしてる。これで頭いいし、運動もできて、家柄は格別、とか。神さまは不公平だなと、ちょっと思ってしまう。まあ多分そんなこと、知ってる全員が思ってるだろう。
そして、この二人、タイプが、全然違う。
慧が騒がしくて、なんか可愛がられてる感じなら。
颯はクールで、可愛がられるとかは全くなく、崇められる……みたいな? 二人を囲んでる奴らも、慧は仲良しお仲間って感じで、颯は、完全にお取り巻き、て感じ。
で、全然タイプが違くて、本来なら絡まない二人じゃないかと思うのだけれど、この二人、なぜかいつも、張り合っている。
なぜか、というか。
慧が、めちゃくちゃ張り合いに行ってるからそうなってる、というのかな。
分析してるオレの前で、慧と颯が話し始めた。この二人が騒いでると、なんとなく皆ギャラリーになる。オレと友達もなんとなく、足を止めた。
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