【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

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第196話 幸せなのだと。

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 て言うかオレ今、旦那とか言ってしまった。……そんなことに気づいてちょっと恥ずかしい……。けど多分気にしてるのはオレだけだから、何も言わず過ごそうなんて思いながら、颯を見上げる。

「颯は何時から、準備しにいくの?」
「学祭が十六時迄で片付けの時間で。十六時半から十七時半まではステージで、バンドとかダンスの発表だって。オレは、十七時には着替えに行くよ」
「そっか。見送りに行く??」
「ん? 見送り?」
「着替えるとこまで。見送りに行っていい?」
「――いいよ」

 少しの間見つめられて、ぷ、と笑われてしまう。

「何で笑うの」
 むむ、と見上げると。

「いや? ……可愛くて」

 クックッ、と笑ってる颯。

「いいよ――というか」
「?」
 至近距離に颯が近づいてきて――ちゅ、と頬にキスした。
 ちょうど、校舎の下の通路になってるところで、あまり人が居なかったから、だとは思うけど。

「見送りにきて?」
 キスされてびっくりしてるオレを、超至近距離でじっと見つめて。
 颯がそんな風に言う。――息、止まるってば。

「ん、行く」
 こくこく頷いていると、後ろを歩いてた皆からの冷やかし。

「ちょっと暗くなるとすぐいちゃつくってどういうこと」
「そうだそうだー!」
「いくら新婚っても、いちゃつきすぎ」

「るせ。見るな」

 颯がオレの首に手を掛けて、ぐい、と自分の胸元に。
 ――ぅわ……。

 皆が、はー、とため息をつくのが分かる。

「颯がこんな風に甘々になるとは思わなかったよなー」
「しかも相手が、慧ー」

 あははーと、皆笑ってる。
 それには答えず、颯はオレを見つめると、髪の毛をくしゃくしゃ撫でながらオレの背に触れて、皆の前を歩き出す。颯はなんだかすごく楽しそう。


「どーして慧は、そんな可愛いんだろうな」
「――……つか、オレって可愛い?」
「ん」

 そーかなあと思うのだけれど、でも、颯の顔が。 
 優しくて楽しそうだから、それ以上は何も言わず、颯を見つめ返す。


「スーツ姿、楽しみにしてるね」
「――ん。まあ……カッコつけて出てくると思うけど。笑うなよ?」
「絶対笑わないよ」
「そう?」

 颯はクスクス笑いながら、オレを見る。オレは、一度、うん、と頷いたけれど。


「――あ、でも颯は、カッコつけなくてもカッコいいから」
「ん?」
「普通にしてるだけで一番カッコいいと思うけど」
「――」

 颯にじっと見つめられて、「ん?」とみあげた時。
 後ろを歩いてた皆に。

「慧は、素で、颯をほめすぎだよなぁ」
「まあ、なんか、これは可愛いの、分かるかも」
「つか、颯のこと、めちゃくちゃ好きすぎだよなー、慧」

 あっはっは。
 皆がふざけた感じで言いながら、オレ達を通り過ぎて行く。

「もーほぼ売り切れてるから、そのまま二人で、デートしてきな」
「変なことすんなよー」
「マジでそれー!」

 オレ達に反論の余地も与えず、皆が口々に言いながら、じゃあなー、と歩き去ってしまった。


「――むむ……」

 何なの、あいつら。
 むむむむ。

 何だかちょっと恥ずかしくて、むー、と眉を顰めていると。
 颯が、ぷ、と横で笑った。

「素で褒めまくりて……」

 まあでも、そんな感じか、と颯は笑う。

「じゃあ、カッコつけないで、普通で出る」
「――ん。うん!」

 それが一番、カッコいいと思うし。
 ふふ。

 楽しみすぎ。


「少しデートしよ、慧」

 ぽん、と背に触れられて。
 カッコよすぎる笑顔に、一瞬見惚れる。



 ――多分ずっと、憧れてたんだと思う。颯に。昔から。


 素直に、好きって言える今が。
 意地張らないで、カッコいいって、言えちゃう今が。


 オレは、すっげー幸せなのだと、思う。


 うん、と頷いて。颯と一緒に、歩き出した。
 








(2024/11/5)
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