【ひみつの巣作り】

悠里

文字の大きさ
上 下
188 / 209

第188話 のろけ??

しおりを挟む


 朝の開店準備中。
 オレが朝のことを思い出して、はー、と息をついてたら、昴にどうしたのか聞かれた。寝てる颯を見ながら一人で色々考えてたら、実は起きてて百面相とか言われてすごい恥ずかしかったと、超省略しつつ訴えると「アホらしい」と苦笑された。

「なんだよ、アホらしいって」
「朝からのろけてないで、忙しいんだから、さっさと準備」

 ……のろけ。なのか、これ? 別にキスしたとかそういうのは言ってないんだけど。
 首を傾げてると、昴がオレを見つめた。

「イケメンコンテスト、いよいよだな」
「うん、そだね」

 頷いてると、周りに居た皆も、オレに視線を向けてくる。

「旦那が優勝候補とかって、どんな気分?」
「……えー。どういう……嬉しい、かなあ?」

 そこに居た皆に笑いながら聞かれて、そう言うしかない。

 まあ、自分の旦那が優勝候補ってことは……颯がカッコいいって認められてるってことだし。もちろん嬉しい。
 ……ていうか、絶対的にカッコイイのは、もう分かってるんだけど。

 でも、なんだか、ドキドキする。
 自分がコンテストに出る時よりももっと緊張してる気がする。

「あ、そういえばコンテストってさ、実際ステージで何するか知ってる? 去年見た?」
「見たけどいまいち覚えてないな。インタビューはしてたけど」
「その場で、何を答えるかで、カッコよさも競うもんな」

 その言葉に、うんうん頷きながら、「やっぱりそうなんだ」と頷く。

「まあ、でも、颯は何言っててもカッコいいから、そこは大丈夫そうだけど……あっ、あと、今日スーツ着るんだって、もう絶対一番めちゃくちゃ似合うよね。スーツ着てただけで、優勝な気がするけど。んー……でもやっぱりドキドキはする……」

 んーどうしよう、夕方までずっとそわそわしてそう、とか考えていると、皆がオレをじっと見つめてるのに気づいた。

「ん? なに?」

 皆を見つめ返して聞くと、ぷは、と笑われた。「なんだよ??」と眉を顰めると。


「慧って、それが通常だもんなぁ」
「ほんと。普通、旦那のこと、そんな風に言う?」
「え」

 だって、カッコいいじゃん。と言いそうになって、ますます墓穴っぽいので、ちょっと自制したのだけど。

「だからお前が、颯のこと話す時って、全部のろけにしか聞こえないから」

 昴が苦笑いでそんな風に言ってくると、ますます恥ずかしくなったその時。「慧」と呼ぶ声がして振り返ると、孝紀と匠と一緒に、颯が近づいてきた。

「あ、颯」

 隣に立った颯に、不自然にならないようにちょっと俯く。顔が赤いのはバレてないバレてないと思ったら。


「なんで先輩、顔赤いの?」


 匠がめざとく突っ込んでくる。もー!


「旦那さんが隣に来たくらいで、赤くなるとか、マジでやめようよ」


 しかも、それはまたそれでちょっと違うし! もーもー!!!
 ほんと嫌、匠。もー。


 むっとして見せてる横で、さっきからオレと居て事情を知ってる皆は、可笑しそうにクスクス笑ってる。
 颯は、ん? とオレを見下ろして、オレと目が合うと、ふ、と目を細めた。


 ……こういう話してたら、こう言われて赤くなってたところに颯がきて、匠が勘違いしてるんだよう。
 と、言いたい気持ちもなくはないのだけれど。


 颯は、そんな細かいことは、なんでもいいよって感じで、ただ、優しく笑うから。
 なんかオレも、なんでもいいやと、思って、颯に笑い返した。
 
 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

貧乏Ωの憧れの人

ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。 エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜

Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、…… 「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」 この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。 流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。 もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。 誤字脱字の指摘ありがとうございます

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

処理中です...