175 / 222
第175話 緊張……
しおりを挟む自分の心臓への応援なんて、変なことを考えながら、テーブルに置いてたパンフレットを見ていて、ふと気付く。
「そういえば、颯のチェス部は? 学祭で、何かしてないの?」
「ああ、かき氷、やってるよ」
「かき氷なんだ。颯、そっちはいいの? 手伝わなくて」
「こっちが先に決まってたから、イケメンコンテスト頑張ってくれればいいってさ」
苦笑して言う颯に、そっか、と笑いながら。
「ていうか、チェスを使って何かは、しないんだね?」
「前までは、教室借りて、チェス体験しませんかーってやってたらしいけど」
「うん」
「チェスをできる人が居ないのか、学祭まで来てチェスやりたくないのか、とにかくほとんど誰も来ないんだってさ」
「……たしかに。どっちもあるかも……オレ、チェスは触る機会も無かったなあ……」
「まあ。そうだよな」
二人で苦笑しあってしまう。
「颯は強いの?」
強そうだけど、と思いながら聞くと、颯は、ふ、と微笑んだ。
「弱そうに見える?」
「……見えません」
ちょっと悪戯っぽく笑う、ちょっと強気な感じの視線が。
……ひたすらカッコいいな。この人は、ほんとに。
と思いながら、あほなこと聞いた、と反省しつつ、たこ焼きを食べ続けていると。
「ほんと、慧、たこ焼き似合うな」
「……んー、それ、喜ぶとこなの?」
「可愛いってことだけど」
くす、と笑う瞳が優しすぎる。
なんかまわり中、人がたくさんで結構騒がしいのに、たまに、颯しか見えなくなって、颯の声しか聞こえなくなるとか。不思議すぎる。
「えっと……あ、チェス、学祭でやらないのは分かったけど……それで何でかき氷になったの?」
「焼くのとか熱いから、氷削って、液かけるだけなら楽、だって」
「なるほど……」
なんか面白い。
チェスのクラブの、颯の先輩たち……。なんか、頭良さそうな気がする……。どんな感じなんだろう~??
「颯、お客さんで買いに行ってみる? かき氷」
「ああ。いいよ」
くす、と颯が笑う。
「後で、連れて行こうと思ってた」
「ん??」
「慧、紹介しとこうと思ってたんだよ。先輩達、会いたがってたし。でもあの人たち、なかなかまとまって学校に居ないからさ。今日、ちょうどいい」
クスクス笑う颯。
「えっ。オレに会いたがってたの??」
「うん。ほら、コンテストの推薦、先輩らがやろうとしてたから、今年は、慧に頼むからって言ったら、嫁が旦那を推薦ー? って、なんかやたら盛り上がって。まあ、もともと結婚するって言った時もすごい驚かれて、運命だったって言った時も、死ぬほど驚かれて…… もともと、そこらへんから会ってみたいとは、ずっと言われてたからさ」
「へぇ……」
そんなに、たくさん、颯は颯の先輩達に、オレのこと、ちゃんと話してくれてたんだなぁ、と思うと。嬉しい。
嬉しいけど。
「なんか緊張してきた」
「え?」
「ドキドキしてきた」
「大丈夫だよ。ちょっと顔見せるだけだし」
颯は、オレを見て、冗談だと思ってるのか、クスクス笑っているけれど。
軽い気持ちで、かき氷食べたい、ついでに、どんな先輩たちか見てみたいし、颯も顔は出しといたほうがいいんじゃないのかな~程度だったので。
颯の先輩に紹介されてしまう、と。しかももともと見たいって言われてたとか。わー、なんか品定めされちゃうとか……?? 優秀な後輩αと急に結婚した、元αのΩ……。うーん、なんかすっごく、ドキドキ。
颯の先輩か。しかも頭良さそうな部の。
強敵かもしれない。
なんかすっごくパリッとしたシャツ着てて、すっごく冷静な感じとか?
眼鏡かけてる??
うーんうーん。
……人に会うのにドキドキするなんて、いまだかつて無いかも。
1,695
お気に入りに追加
4,164
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。
N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い)
×
期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい)
Special thanks
illustration by 白鯨堂こち
※ご都合主義です。
※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる