【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

文字の大きさ
上 下
168 / 222

第168話 ラブコメ?

しおりを挟む
「はは。真っ赤」
 孝紀に面白そうに見られてますます恥ずかしい。
 
「か。からかうなよっ」

 ただでさえさっきから、なんか、頭ン中、颯のことしかないんだから。
 ……ていうか、さっきっていうか、朝っていうか、昨夜……いやもう、ずっとなんじゃないかって、そんな感じがするけど。

「あ、オレ、からかってるんじゃないよ。あんな風に笑う颯が見れて、なんかオレはすごく嬉しいというか……。まあ笑うのとか普通に見るんだけどさ。なんかそういうんじゃなくて……颯って、αの中でも常にトップで一目置かれてるしさ。自然と気ぃ抜かないように生きてたんじゃないかなって……なんかお前と居るの見てたら……緩いなぁって思って。慧と居る時の、颯の顔。だから好きなのかなって、ずっと、思ってた」

 ……そうなんだ。緩いだろうか。超絶、カッコいいままなんだけど。

 緩んでる?? 

「なんか、優しい顔してるから、びっくりする」
「……颯は、優しいけどね、ずっと」

 思わず、そう言ってしまったら、孝紀は、オレを見て、ぷ、と笑った。

「颯が優しくないなんて言ってないよ、そこ引っかかったの?」

 クスクス笑われて、また余計な恥ずかしいこと言ったなと、焦ってると。

「冷たいわけじゃないし、人と絡まないとかじゃないし。ちゃんと慕われてる感はある奴だけどさ……でもなんか。さっきキスした時は……ほんと緩んでて、なんか感動」

 感動って……と笑ってしまいそうになるけど。
 孝紀って、颯のこと、好きなんだなあ。……美樹ちゃんのこと、色々思うことあっただろうに。良い奴だなぁ。うんうん。敢えて美樹ちゃんのことは言わなくていいだろうと思って、自分の中でだけ考えて、良い奴、とほくほくしていたら少し気になった。

 ……美樹ちゃんと孝紀はどうなってるんだろ。
 一緒に準備するようになって、一緒のところを見てると、もう付き合ってるんじゃないのかなと思うくらい、二人だけの世界、みたいな雰囲気もすごくあるんだけど……。そういえば美樹ちゃんて、もう颯のことは諦められそうって言ってたけど、その後は全然聞いてないんだよな。
 颯とも普通に話してるの見るし、オレとも、最近ほんと、仲良くなってるし。もう吹っ切れたのかなぁ、と思っていると。

「まあでも、あれは美樹が見てなくて良かったかなとは思うかなぁ」

 ぽそ、と孝紀が言う。あ。それ……今もそうなの?? と聞こうかやめようか、思った瞬間。

「もー」
 と、明るい声がすぐそばで聞こえてきた。 
 あ。美樹ちゃんだ。タイミングいいのか悪いのか、良く分かんないけど。

「孝紀、私、もう平気だってば」

 しまった、みたいな顔して、孝紀がうんうん頷いている。

「颯のキスの話聞いて、慧くんにツッコミに来たんだけど……何の話してるのかと思ったら、私の話って」

 まったくもう、と美樹ちゃんはぷんぷん怒ってる。

「慧くん、私もう、ちゃんと吹っ切ってるからね」
「あ、うん」

 おっきな瞳にじいっと見つめられて、オレは、コクコクと頷いた。
 ……うん、多分。そうだよね。そんな気がする。

 あの時話したことで、美樹ちゃんの中は、落ち着いてる気がする。

 ……むしろ気にしてんのは、孝紀じゃないかな。
 あの時、孝紀も「美樹も諦められそう」とか言ってたのに、やっぱり大好きな人のことって、ちゃんと分かんないものなのかな。

「もうほんと、孝紀てば……」

 むむ、としながら、慧くんあとでまた来るね、と離れていった美樹ちゃんを、孝紀が追いかけていく。


 あそこ、もうちょっとで付き合うんじゃないかなーと思うのに。
 なんとなく、後ろ姿を眺めていると。

「つか、あちこちでラブコメしないでほしいですよね」

 さっきから何か不機嫌な匠がそう言うと、横に居た昴は。

「こっちでコメディにしてんのは、お前な?」
「はー??? もーほんと、先輩、嫌いですね」
「先輩に向かって嫌いとかいう奴いる?」
「昴先輩は特別です」
「そんな特別いらねーし」

 ……なんだか良く分かんないけど、面白い会話をしてる二人を見守ってしまう。なんか、この二人はコメディぽいなぁ。ぷぷ、と笑ってると、「ていうか全然分かってないこの人が一番コメディですけど」と匠が言ってくる。それオレに言ってる? と首を傾げると、昴が、ふ、と口元押さえながら笑ってる。

「何それ? なんで笑ってんの、昴」

 んー? と首を傾げていると、昴が、もうすぐ開始時間だな。と話をはぐらかす。むー、と思うけど、開始より早くもう、遊びに来てる人達もだんだん歩き出していて、もうすぐ始まるなーと、わくわく。


 あとで颯とお祭りまわろうって言ってくれた。
 楽しみすぎる。それまで、がんばろうっと。




しおりを挟む
感想 421

あなたにおすすめの小説

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。 拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。 逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。  兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

処理中です...