【ひみつの巣作り】完結

悠里

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第164話 学祭1日目 朝

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 朝。カーテンの隙間から、眩しい光。
 自然と目が覚めたら、颯がオレを見てた。

「――――……」

 裸のまんまなのでちょっと恥ずかしい。

「……はよ」
 そう言うと、颯は、ん、と言うとクスッと笑った。

「だるい? 大丈夫?」

 ……だるいって聞かれると。相当だるくなりそうなことをした昨夜のことが浮かんできて、顔が熱くなる。すると、颯、オレの頬に、すり、と触れた。

「少し無理したかもだよな……」

 少し……少し……?
 ……大分すごかったような……。

「ん、でもなんか、オレ……きっと元気」

 語彙が無さすぎる。と思うんだけど。
 なんか満たされたから、元気、て一瞬言おうとして、そのセリフは恥ずかしすぎるかもしれないと、言い換えたのがそれだった。

「ん」
 ふ、と笑った颯に引き寄せられて、頬にキスされる。

「とりあえず今日一日、がんばろ。今日は早く寝かせる」

 そんな言葉に、ふふ、と笑って。

「今日も明日も楽しみだね」
 そう言うと、颯も頷いて微笑んだ。

「明日イケメンコンテストー。あれだよね、今日しか来れない子も、ポスター見て事前に投票できるんだよね」
「なんかそんなこと言ってたな」
「もー颯、全然必死感が無い―」
 って、そんなところもカッコいいけど、と思いつつ。

「今日は颯は、売り子で歩いてもらって、でもって、周りの奴らは、イケメンコンテストに出てるっていうアピールもしながら歩くって」
「そんな頑張んなくていいけど。部室貰えなくてもどーにでもなるし……先輩らが欲しいだけだし」

「……いや」
「いや? ……いやって?」
 颯がふ、とオレを見つめる。

「いや、あの……颯には勝ってほしいなーと思って。あ、でも別に負けても、颯がカッコいいのに変わりはないっていうか、絶対もう、オレの中では、ダントツ一位っていうか、もうなんか昔から全然揺るがないから、順位はどうでもいいっていったらそうなんだけど……」
「――――……」

「……でもなんか。颯は、一番上に居てほしいなぁ」
「…………」

「あ。ごめん。プレッシャー、だったら、ごめん」

 嫌かな。これで万一、何かの間違いで一位じゃなかったらきまずくなっちゃうかな? ……ってオレ、何かの間違いでって思ってるし。ていうか、颯が負けるとことか、想像できないし。

 ん? オレ、いったい何が言いたいんだろう、うーん?? 
 ぐるぐる考え始めたオレを、ちょっと黙って見つめている颯。

 不意に、くるん、と動かされて、気付いた時には、真上に颯。
 手首、ベッドに押さえつけられてて、ぽけ、と見上げるしかできない。

「はやて……?」

 めちゃくちゃ、ドキドキするので、朝からこの体勢、やめてほしいのですが……。


「……あの……」

 じー、と見つめられて。ドキドキがピーク。
 颯が、ふ、と瞳を細めて、微笑んだ。
 ずきん、と胸が縮むというか、痛いというか。涙が出そうというか。

「――――……今、言った全部」
「……う、ん?」

「録音しときたかった。可愛くて」
「…………? かわい……かった??」

「可愛かった」

 ちゅ、と頬にキスされる。

 ……どれが?
 何が??

「……プレッシャー、とかは……」
 自分が言ったことで、気になることを聞いたら、颯は綺麗に微笑むと。

「無いよ。……だって、オレが負けようが、慧にとってはダントツ一位なんだろ?」
「――――……」

 ……言った、言ったなオレ、それ。
 そこ切り取られると、恥ずかしいな。


「……学祭じゃなかったら、このまま抱くのに」
「――――……っっ」

 ボボボっと熱くなる顔。


「でもキスだけ、していい?」
「――――……」

 颯の、綺麗な瞳をじっと見つめ返して。
 もうなんかドキドキが、すごすぎて、オレはもうほんと病気かもしれないと思うのだけれど。

「……いいに、決まってるし」

 ……嫌なんていう訳ないし。

 呟くように返したら、ふ、と笑んだ唇が、すぐに重なってきて。掴まれてた手首は離されて、すぐ、抱きすくめられて、深く深く、キスされる。

「――――……ン……」

 ほんとに、ほんとに……すぐ、溶けそうになる。
 なんかもう、イチャイチャしすぎ……? と思うけど。

 大好きだから……いっか。
 ぎゅう、と抱きついて、ぽー、とするキスを。延々。
 瞳が涙で潤みだして、颯の顔が滲みだしたところで、颯がオレを離した。

「だめだ、これ。……行けなくなる」

 そんな風に言いながら、オレの頬をぷに、とつぶす。


「がんばろうな、二日間」

 ふ、笑うその尊い顔に、こくこく頷きながら。
 颯を優勝させる大作戦を、皆でもりあげることを誓うオレ。

 




(2024/6/1)
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