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第157話 学祭準備
しおりを挟む翌日は朝集合だった。何なら、学校より早かった。皆、超やる気。
買い出しは皆が担当で別れてて、肉とか野菜とかそういう生鮮ものは今日買いに行ってる。学校に近い誰かの家を中心に置きに行ったり、皆それぞれ忙しい。
予定と値段が少し違うとか、道が混んでてなかなかこっちに帰れない、とか色々あって、そういうのは颯のところに全部連絡が行くことになってる。
なんか今日は颯、しょっちゅう電話してる気がする。
一元管理がスムーズだからって颯が言ったからなんだけど、こんなにいろんなことがあるんだなーと、しみじみ思いながら、オレは、周りの皆と、楽しく看板づくり。
オレ達の屋台は、綿あめが左端で、真ん中がフランクフルト。焼きそばが左端。フランクフルトと焼きそばは同じ、大きな鉄板で焼く。
当日大変なのは、やっぱり焼きそばだろうなーってことになってる。
どれくらい出るかも分かんないから、とりあえず一日目は多めに準備しといて、その出具合で、二日目の量を決めて追加の買い出しに行くか決めることにしてある。まあ、二日目の昼過ぎたあたりで、完売してくれたらいいなあと思ってるけど。
屋台自体を作ってる団体もあるけど、うちのは颯がポーンとレンタルしてくれちゃったから、作らなくて済んだ。まあ、三つも一緒にやろうっていってるし、火も使うから耐久性も欲しいし、作るとなると超大変だったかも。
なので屋台は早々に運ばれてきたから、あとは飾り付け。
今日の日中は屋台の看板や売り歩くときの宣伝用のグッズとかを作ったり、値札書いたり、色々。
割り当てられてる場所で、でかいビニールシートを置いて、その上に板を置いて、考えていたデザインで下書きをしてから、看板を塗ってく。
ペンキとか、普段全然やんないから、なかなかに手間取る。皆で頑張っていると、買い出しに行ってた匠がふらふら近づいてきた。
「先輩、フランクフルトとかケチャップマスタードは、各自の家に配置済みですよ~」
近くに来た匠が、オレの隣で膝をついた。
「ん。お疲れ」
言いながらちゃんと顔を上げると、匠が、ぷは、と笑った。
「先輩、すげーインクついてますけど。わざと?」
「は? マジで? どこ?」
「んー、ここと、ここと、あと腕とかは見えるでしょ」
一番最初に指さされた頬に「顔? ほんとに?」と、隣にいた昴を見ると、苦笑された。
「それ結構最初の方についてた。ていうか、もう、最後に頑張って落とせばいいと思って、言うのやめた」
「言ってよー」
周りの皆も、可笑しそうに笑う。オレは、クスクス笑ってる匠を見上げる。
「匠、今暇だったら、顔だけでも取って。そこにウェットティッシュあるから」
「え、良いんですか?」
「何が?? ていうかここ皆忙しいし。手ぇ綺麗なのお前だけじゃん」
「んー……。ま、いっか」
ちょっと考えた顔をした後、匠がウェットティッシュを手に取った。
「あー…………ま、いっか」
横で昴も、匠と同じような声を出して、こっちを見たけど、結局、二人ともなんかよくわからん「まいっか」だった。
「何?」
昴を振り返ろうとしたら、「先輩こっち見てて」と匠に頬を捕られて、上を向かされて擦られる。
「――――……」
間近の匠の顔。
……無駄にイケメンではある気がする。
近くに居ると、モテてるっぽいの分かるし。イケメン投票出ればよかったのに、と思ったけど。
一位になれないなら出ないって言ってたのをふと思い出す。
颯に負けるからって決めてたし、まあオレもそれには異論無かったから、ふうんって思ってたけど。
二位でも三位でもすごいと思うけど。負けると分かってたらやらないって。
よく考えたら、一位っていうのにすごく拘ってる、αっぽい性質は、結構あるよなぁ、匠って。
……て、ちょっと待って。
オレが考えてる間も、ゴシゴシ。ゴシゴシ。
「あ、のさ。取ってもらっててあれなんだけど」
「はい?」
「結構、痛いんですけど」
匠をちょっと睨みながらそう言うと、匠は、ふは、と可笑しそうに笑った。
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