【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

文字の大きさ
上 下
151 / 222

第151話 すごく不思議

しおりを挟む


 学園祭がいよいよ明後日の土曜日からと迫ってきた。
 明日は大学が休みになってて、準備の日。
 屋台のこともあるし、日曜の後夜祭でイケメンコンテストもあるし、もうワクワクソワソワ、落ち着かない気分。

 颯と二人夕飯の準備をしていたら、オレのスマホが鳴った。

「あ、美樹ちゃんだ」
 そう言うと、颯が、「出ていいよ。用意しとく」と微笑んだ。

「ん、ありがと。――――もしもし?」
『あ、慧くん? ごめんね』
「ううん。どうかした?」
『うん。なんかね、焼きそばの麺のお店からなんだけど、荷物が遅れてて、渡せるの、明日の夕方になりそうなんだって』
「え、そうなの? そっか、じゃあ、朝取りに行くって言ってた皆に伝えないとだね」
『もう言ったから大丈夫。とりあえずお肉屋さんは予定通り朝の内に行って近くの子の家に置いてから行くから、大学行くの遅くなるね』
「うん、分かってる。よろしくね」
『うん。屋台の飾りつけとか、よろしくね』
「待ってるね」
『はーい』

 電話を切って、カウンターの上に置く。

「美樹、何て?」
「明日美樹ちゃんたち三人で、お肉屋さんと麺を取りに行ってもらう予定だったんだけど、麺のお店は、なんか荷物の配送遅れで夕方になったって」
「そっか」
「うん。イレギュラーなこと、色々あるねぇ」
「そうだな」

 話しながら気付くともうすっかりご飯の準備が終わってる。

「ありがとね、颯」
「ああ。飲み物は、水でいい?」
「うん。あ、オレ入れるー」

 グラスにお水を入れながら、颯を振り返った。

「なんかさ、今更だけど、颯を通さずに、直接美樹ちゃんと連絡取るとか、すごい不思議かも……」
「まあ。美樹が焼きそばやりたいって言った時は、少し驚いたけど」

 クスクス笑いながら、オレの手から水を受け取って、テーブルに置いてくれる。「それはオレも」と苦笑しながら、オレは椅子に腰かけた。

「孝紀が綿あめのリーダーだから、そこにいくと思ったもんね」
「ああ。そうだな」

 向かい合わせで座って、「いただきます」と二人で手を合わせてから、食べ始める。

「そう、決まった時さ、孝紀はがっかりするかと思ったら、全然平気そうで、笑っててさ。美樹ちゃんとやりたいんじゃないの?ってこっそり聞いたら、お前と仲良くなりたいんだろ、って余裕だった」
 そう言うと、颯は頷いて、「まあ今更そんなことでうろたえないよな」と笑う。
 
「うん。なんかさ。オレがこういうの言うのも、あれだけど」
「ん」
「あの時話して、美樹ちゃんは、やっと颯を諦めようって思ったと思うんだよね。それできっと……ずーっと側に居た、孝紀のこと、見るようになった、気がするんだけど……颯、どう思う?」
「慧はそう思うんだな」
「うん。……なんか、孝紀と美樹ちゃんて、すごい仲良いんだよね。話してるの聞いてると、なんでもすぐ伝わるっていうか」
「ああ。まあ、昔からずっと一緒だもんな……オレは、最初の頃は付き合ってんだと思ってた」
「えっ」
「うっかりそんなようなこと、言ったら……そしたら、違うって泣かれたな。それで気づいた」

 う。うわー。可哀想……。
 好きな人に、他の人と付き合ってると思われるとか。わー。
 颯ってば……最初の頃ってことは、中学か。まだ子供だけど。
 ……それにしても、だよなぁ。

「颯って……もうモテすぎて、あんまり好かれているのとか、分かんなかったりする……??」
「――――んなことないよ」


 少し間をおいてから、ぷ、と吹き出して、颯が首を振る。





しおりを挟む
感想 423

あなたにおすすめの小説

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

病弱な愛人の世話をしろと夫が言ってきたので逃げます

音爽(ネソウ)
恋愛
子が成せないまま結婚して5年後が過ぎた。 二人だけの人生でも良いと思い始めていた頃、夫が愛人を連れて帰ってきた……

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

処理中です...