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第121話 離れたくないけど。
しおりを挟む一限と二限の間は、移動時間しかないから、すぐ授業で……もうそろそろ行かないと、と思うのだけど。
「……ん、ふ……ッ……」
舌が絡んでくる。めちゃくちゃ、とろけちゃいそうなキスで。
嘘でしょ、なんか……むりむり……。
「……っはや……むり……っ」
これ以上してたら、オレ。……シてほしくなっちゃう。
辛うじて言った、むり、ていうのを、聞いてくれたのだと思う。
オレの声に、ぴく、と反応して、すぐに、少しだけ腕の力が抜けた。
「っん……」
名残惜しそうに、一度唇を押し付けられて、それから、唇は離された。けど、ぎゅ、と抱き締められたまま。
「……はや、て……?」
は、と息を整えながら、腕の中から、颯を見上げると。
……何だかすごく、熱っぽい顔、してて。
ドキ、と心臓が弾む。
「慧」
「う、ん?」
「今、慧、色々すごいこと、言った」
「……そう???」
颯は、ん、と頷いてから、ちゅ、とオレの頬にキスした。
「……ここで、抱こうかと思った」
ひえ、と焦る。
やっぱり、そんな感じ、してた。
「色々外にまで漏れそうだから、無理だけど」
うん、ほんと無理。声もフェロモンも抑えるの、無理。
なんか、フェロモンが漏れまくりそうだったオレも、なんとか、すんでのところで耐えた感じ。
はー。やばかった。
颯のキスってば、マジで、ヤバすぎる。
オレ、もしかしたら、数秒でその気にさせられちゃうかも……。
「……すげー好き、慧」
ぎゅ、と抱き締められて、なんだかちょっと掠れた声で、囁かれる。
ほんわかしてしまうというか、うっとりするというか。
……ちょっとゾクッとしてしまうというか。
授業行きたくないな。颯とキスして、触れられて、抱かれたい。
……離れたくないな……。
「……離したくないな」
「えっ」
おんなじこと言ったー!
と、心の中で、めちゃくちゃ喜んでいると。
「……嘘だよ。そんな驚かないで」
オレが、えって言った理由を間違って受け取った颯が、クス、と笑う。
「この後、オレは必修だし、行かないといけないのは分かってんだけど」
「――――……」
「慧、離したくないなと思っただけ」
ふ、と颯が笑って、なんか、また抱き締められて、額のあたりに、すりすりと颯の頬が触れてる。
「あの……えって言ったのは……オレも、同じこと、思ってたからだよ」
「……ん?」
「離れたくないなって、思ってた」
きゅ、と抱きついて、そう言うと。
颯は数秒無言。
「颯……?」
見上げたオレは、両頬を、むにっと摘ままれて、左右に引っ張られた。
「なにす……」
変な顔させないでよー、と思った瞬間、手を離されて、ちゅ、とキスされた。
「もう、ほんとにさ……これ以上我慢できないから。考えて」
「……??」
「慧、オレが気にしてると思って、来てくれたんだろ?」
「ん? んーまあ、そう、かな……? 話、したくなったんだけど」
「いつも可愛いとこも好きだけど……こういう時に会いに来て、好きだからとか言ってくれるの……そういうとこ、惚れる」
「――――……」
あんまりに優しく見つめられてしまうので。
……しかも、惚れる、とか言われてしまうと。
ぼぼぼ。
また、すっげー顔が熱い。
「ちょ、と、色々、ストップして。授業行けなくなる」
オレが言うと、颯は、ふっと笑って、「お互い様だけど」と言いながら、オレをそっと離した。
密着状態は解放されて、でも、そっと、頬に触れてくる。
「……慧、怒ってもいいって言ったけど。オレ、怒らないよ、そんなことで」
「――――……」
「オレはお前に、惚れてるから」
「――――……っっっ」
もう、ほんとにもう。
「――――……っ」
ぎゅ、と颯の首に抱き付いた。
……もうほんとに、離れたくないけど。
「帰ったら、話そ? ……そろそろ、無理」
ぷ、と笑った颯の手が、オレの後頭部を優しく、くしゃくしゃ撫でた。
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