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第101話 巣作り……もどき?
しおりを挟む寝室にきて、スマホをベッドに置くと、クローゼットを開ける。ここには颯の服が並んでる。
んー、洗濯済みなのがあれだけど……でも、とりあえず好きなのを選んでみようかな……。
颯が気に入ってるのかよく着てる気がするシャツと、抱き付くと気持ちがいいこの服と、あと、すごく似合っててオレが好きなこの服と。
あれとこれと……と、山盛りベッドに積んでみた。
……ん? はて……?
αの匂いに包まれて、αの代わりにするって言ってたっけ。
……巣作りって。
包まれるためにはどうすんの? この積んだ中に、はまるの?
雪で作るカマクラみたいに出来たら、中に入れるけど。
今はただ山盛りになってるだけ。
一枚ずつ体にかけてくのか?
……はて??
あ、そうだ。服以外にも、好きなもの……なんでもいいって言ってたっけ。
寝室を出て、きょろきょろと見回りながら、とことこと、ゆっくりと歩く。
何を探してるのか分からないまま、探しものなんて初めてだ。
「……?」
皆、何を使うんだろ。
うーん……。
リビングに来てみたけど、特に何もベッドに持ち込みたいものはないし。……とふと、棚を覗き込んで、颯の香水を見つけた。
あ。これいい匂いの香水。……とりあえず持ってこー。
もういいや、これで。
香水を持って寝室に向かいながら、くん、と瓶から少し匂いを嗅ぐ。
颯がたまにつけてる香水。
……でもなんか。香水つけてない、パジャマの方が、幸せ感あるような。
くんくん、ともう一度。
んー。やっぱ、ちょっと違うかな。
これはこれで、颯がつけてるの大好きなんだけど。んー……。
悩みながら寝室に持ち込み、ベッドサイドの台に、香水を置いた。
やっぱり今日のところは、いらないかな。
よし。とベッドに乗って、とりあえず服の真ん中に座ってみる。
「――――……」
何となく、服の巣の中に、座ってる……。
ような気がしなくもない。
……てことは、これでいいのか??
んーと首を傾げる。
ネットで調べてみる……? いやでもなんかなぁ。本能の赴くままにすることを、人真似してもなんだかな。
そっか、オレが今ヒート来てないから、本能からの、必死感がないから、こんな感じなのかなあ。
やっぱ、ヒートん時にやるものかぁ。
と、思いつつ。
なんなくと、颯の服を、自分の伸ばした膝の上にどんどん重ねていってみる。
「……」
これもこれも、颯が着てると、かっこいいんだよなあ……。
んー。
オレは少し服を端に寄せると、いつも一緒に寝てる毛布に包まれて、颯のパジャマや服をぎゅーとして、ベッドに転がってみた。
これでいいのかな? 良く分かんないけど。
毛布とパジャマから、颯の匂いがする。包まれてるみたいな感覚。これは、幸せ。
……これが味わいたくて、やるのかな、巣作り。
……なんかオレのは、ちょっと、巣作りもどき、みたいな気がするけど。
そんな風に思うと、ふふ、と思わず笑いがこみあげてきた。
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