【ひみつの巣作り】完結

悠里

文字の大きさ
上 下
91 / 216

第91話 仲間との飲み会 1

しおりを挟む


「そういえば、飲みに行こうって言ったろ、こないだ」
「ん?」

 昴の言葉に、首を傾げる。

「約束してたっけ?」
 そう言ったら、誠が、ああ、あれか、と笑った。

「ほら、こないだ、健人が颯に飲みに行こうって誘ったら、颯がオレと昴にも、なんでも聞けって言ったやつ」
「あ、そっか。……それ、ほんとに行きたい?」

 そう聞くと、皆、ん、と頷くので。

「颯に、聞いてみるね」

 そう言ったところで、他の友達たちもやってきて、今日初で会う仲間からは、すぐに指輪へのツッコミ。

 ほんと皆、良く気付く。
 なんだかんだで、颯とお揃いで指輪を付けたってことは、ほんとに結婚して、まあまあ仲良くやってるんだな、てことがやっと周りにも知れたみたいで。
 ほんとに良かったなあ、と思ったりした。


◇ ◇ ◇ ◇


 健人、昴、誠と、颯とオレとの五人で、飲むことになったのは。
 その話から、ほんの四日後の金曜日。

 颯に聞いたら、いいよって即答で。
 ……ほんとにいっぱい聞かれるかもよ、て言っても、全然いいって言うから。
 それで、今に至るのだけど。
 少しゼミが長引きそうだから先に行っててと、颯に言われたので、颯以外の四人で予約した店に入った。後から颯がオレの隣に来るだろうってことで、オレの隣は空けて、向いに健人、誠、昴、と並んでいる。

 オレの目の前の昴が、なんか、絶対何か言いそうな顔してる。
 誠が言った、そういう意味でオレのことを好きな訳はないけど、一番オレと近いのは昴だから。心配してるのも、多分昴が一番。それは分かってる。

「颯、どん位で来るんだろ。飲むのも待ってる?」
「ううん。先に飲んでてって言ってた」

 健人の言葉にオレがそう言うと、じゃあ来たら乾杯し直すか、と健人が言って、まず一杯目を注文した。

「まあとりあえず、乾杯、だよな。結婚おめでとう」
 健人が言ってくれて、皆で乾杯。

「なんだかんだで、慧もバタバタしてたし、なんか俺らも驚いてばっかだったし、お祝いもできてなかったもんな」
「そうそう、半信半疑だったし。ごめんな。今度ちゃんと祝うからね」
「まだ半信半疑な部分はあるけどな」

 健人の言葉に、誠が同意した後、昴がそんなことを言う。
 すばるー……と、困って言うと、「今日大丈夫になるといいけど?」と昴が笑う。誠と健人も苦笑を浮かべてる。

「あの……颯が来る前に言っとくね」

 オレが、意を決して、三人を見る。
 何々?と皆がオレを見つめてくる。

「……オレは、颯とこうなれたから、Ωになったのも、良かったと思ってる、から」

 そう言ったら、三人、お、と目を大きくして。それから三人で顔を見合わせてる。

「……確かに、昔はあんなやりとりばっかりしてたから、皆が心配なのも分かるけど……でも、変性した時にはもう、そんな感じだった。颯と話したのも久しぶりだったし……ていうか、喧嘩腰じゃなくてちゃんと話したのも、初めてだったかもだけど……」

 黙って聞いてくれてる三人をじっと見つめる。

「……オレ、ちゃんと颯のことが好きだから、さ……」

 ……言った瞬間。
 ぽぽぽ、とまた顔に熱が上がってくる。

「ぅわ、ハズすぎる……だ、だからさ、オレこれ、まだ颯にも言えてないからね、それ言ったんだから、分かって」

 ひー恥ずいー、と頬を押さえていると。
 三人皆、え? という顔。

「好きって言ってないの? まだ?」

 一番にいったのが誠。

「こないだもそんな事言ってたけど、まだ言えてなかったのかよ?」

 もーほんとに、慧、と笑われる。

「しかも何でそれ、ここで先に言うの」
 ケタケタ笑われて、ぐ、と言葉に詰まりつつ。

「だって、なんか、颯に色々聞こうと思ってるんでしょ? ……とりあえずオレの気持ちは皆に言っとこうと思って……オレは納得してるし、良かったからねって……」

 はー。顔アツ……とすりすり頬を撫でていると。

「あ、颯来た」
「ひゃあ!!!」
「嘘だよ」
「……っはー? もー!」

 昴が言った言葉に、心臓がびっくりしすぎて、悲鳴が漏れたのに。
 ひどい―!! と怒ってると。

「ていうか、そんなの本人に言った方が良いんじゃねえの? なんでそんな、来たって言ったくらいでひゃあとか……聞かれたくねえの?」

 昴がめちゃくちゃ笑ってるし。

「好きも言えないのに結婚してるとか……」
「……言うし、ちゃんと。その内」

「その内って」

 三人ハモって、笑われた瞬間。

「悪い、待たせた」
 涼し気な。颯の、カッコいい声が、不意に後ろから。

「ひ」
 またしても叫びそうになった、とっさに、手で自分の口を塞いだ。

「……慧?」
 オレを見下ろして、不思議そうに笑ってる颯に、ぷるぷる首を振る。

「は……早かったね。あっ、何、飲む??」

 辛うじて叫ばずに済んで、オレは、隣に座った颯にメニューを差し出した。
 三人、笑ってるけど……無視無視。





しおりを挟む
感想 411

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。 父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。 彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。 子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。 ※完結まで毎日更新です。

処理中です...