72 / 222
第72話 Ω会議(?) 8
しおりを挟む「だって、なんか颯、すごく早いから」
「すぐ出られるようにしてたし。待ってると思ったから急いだけどな。まだ食べてた?」
クスクス笑う颯。
「あ。颯、アイス食べたい?」
「……ん」
あ、と口を開ける颯。スプーンですくって、一口。
「美味しい?」
「ん」
「もっと食べる? 颯も頼む?」
「一口でいい。食べていいよ」
そう言って笑んでから、颯は、三人に視線を向けた。
「どうも」
ふ、と。ちょっと余所行きの、笑み。
――――……わー。……カッコいいんですけど。
皆は、それを向けられたせいなのか、もう、固まってる。
「あ、ちょっと食べててな?」
「ん」
オレが頷くと、ふ、と笑んでオレを見つめてから、颯が少し離れていく。なんか後ろ姿までカッコいいな。見送りながら。
……アイス食べちゃお。と、ぱくぱくとアイスを口に入れたら。
「なになに、カッコいいんだけど」
「めちゃくちゃカッコいいんだけど。しかも優しいんだけど」
「ずっとあんな感じなのか?」
紗良と奈美と啓太が、何やら詰め寄ってくる。
うわわ。
「……ずっとあんな感じ。……んー……カッコいい、よね」
うん。と、ぽつり言って、頷きながら、アイスを食べ終わると。
「慧の口から、颯カッコいいとか、すげーびっくり」
啓太の声に苦笑い。「……だよねぇ……」と苦笑いを浮かべていると、颯が戻ってくるのが見える。
「あ、今の内緒ね、ハズイから!!」
「言えばいいのにー絶対可愛いってばー」
紗良がクスクス笑うけど、ぷるぷると拒否。
「慧、食べおわった?」
「うん」
椅子から降りて、颯の隣に立ちながら。
「あ、いくらだろ」
「いいよー、今度で」
そんな会話をしてたら。
「今払ってきた」
「え」
「なんか相談したんだろ?」
ふ、と笑って、颯が言う。
「あ、うん。そう、色々聞いてた」
「今日は奢りで」
「……いいの?」
オレが聞くと、颯は、ん、と頷く。
ぽけ、と見上げてる三人に、「いいって」と伝えると。
「ありがとね」
颯に言ったオレと一緒に、三人がそれぞれ、ごちそうさま、とか、お礼を言いながら、立ち上がる。一緒に店を出て、外で立ち止まる。
「じゃあ、皆ありがとね。またね」
バイバイ、と手を振って、皆と別れる。
颯と一緒に歩き出しながら、ふと振り返ると、まだ皆が居て、もう一度手を振ると、皆も振り返してくれる。
「颯、ありがと」
「ん?」
「……来てくれたのも。払ってくれたのも」
「んー……して当たり前な感じだから。別に礼はいらないけど」
「……当たり前なのか?」
そうなのか。
……そういう相手には、今までもそうしてきたのかな。当たり前、かぁ。
カッコいいなぁ。そりゃ、皆、別れたくないよね。分かる気がする。さっき聞いたΩの女の子の話まで思い出してしまう。
「つか、慧、一人で帰すとか無理」
「え?」
「狙われたら困るし。奢ったのは、お前が世話になったと思ったからだし。当たり前だろ?」
「……オレ、狙われるかな??」
「可愛いから危ないし」
「……オレ、可愛い??」
颯たまに言うけど……。全然分からないので、ちょっと酔ってるのをいいことに聞いてみた。
すると。
「死ぬほど可愛いし」
肩に手が置かれて、颯に引き寄せられながら、そんな風に言われる。
急に近くなると、ふわっと、香る、颯の匂い。
「なんか酔ってると、余計可愛いよな」
かぁっと赤くなるオレの顔。
颯の目ってどうなってんだろ、と思いながらも。
……だめだこれ。もう。
こういうのの免疫って、いつつくのかも聞いてくればよかった。
「早く帰って風呂はいろ」
はいろ。ていうのはお誘いだよね。
……颯、濡れてると。カッコイイんだよなー……。ドキドキして死にそうになる。
あんまり見ないようにして、楽しくおしゃべりタイムしてるけど。
なんかもう。
……颯が好きすぎて、困るな。オレ。
(2023/11/8)
772
お気に入りに追加
4,164
あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-
悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。
拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。
逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。
兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない
小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。
出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。
「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」
「使用人としてでいいからここに居たい……」
楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。
「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。
スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる