【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

文字の大きさ
上 下
55 / 222

第55話 ふたりでしか

しおりを挟む


「少し待ってて」

 そう言われて、ん、と頷く。
 隣に座って、ものすごく近いもんだから、膝がぶつかるというか。なんか緊張するし。
 颯はスマホを見てるし、待ってと言われてるから、なんかちょっと話しかけにくいし。

 どうしようかな。
 でもちょっとだけ聞いてもいいかな。

「……颯? 聞いてもいい?」
「ん? 何?」

「スマホ、何してんの?」
「んー……株価見てる」
「か……株価??」

 予想外の回答に、ほえーと変な声が漏れる。
 何だよ、もうカッコつけて、株価って、もう! と、前なら言ってただろうと思うのだけど。ちょっとスマホを覗いてみる。ふむ。……全然分からない。首を傾げたオレに気づいたのか、ん? と颯がオレを覗き込んで、ちょっと笑った。

「じいちゃんに、世の中知るのに株はいいとか言われて、結構昔から無理矢理やらされてたんだよな。ガキの頃はオレが売り買い決めて手続きはしてもらってたけど。損した時とかは、すげー長い講義が開かれてさ。マジ最悪だったけど」
「へー……」
「まあおかげで、結構今は良い感じ」
「へー……」
「あと少しで終わるから」
「うん」

 今度こそちゃんと黙って待ってるけど。スマホを見てる颯をなんとなく見つめる。

 えーと。すごいというのか、なんなのか。
 とにかく、スマホゲームとか、元カノと連絡とかいって、すみませんでした。
 という気分でいると。少しして、颯が顔を上げてオレを見た。

「ん、終わり」
「もういいの?」
「ん」

 スマホをオレと反対側に置いて、颯がオレを見つめる。

「……慧」
「ん?」
「こういう時、お前、何すんの?」
「え?」

「ちょっと休憩、とかそういう時。何してた?」
「――――……」

 同じこと、考えてる。
 思うと、また胸がトク、と速くなる。嬉しいと心臓というか胸というか、とにかくそこらへんって、きゅうとなって、速く動くんだなーと。なんだか不思議な実感。


「テレビ見たり……スマホ触ってたり……?」
「ふうん……本読んだりする?」
「うん」
「何読むの?……ていうのは、また今度聞くか」
「?」

 ふ、と笑う颯が、オレの頬に触れた。

「二人でしかできないこと、する?」
「……? 何?」

 ふと見上げると、颯はまた微笑んで、その綺麗な唇を、オレの唇に重ねさせてきた。


「――――……」

 もうなんか。どくどくする。心臓。
 

「慧」

 引き寄せられて、腕の中から颯を見上げる。


「顔、赤い……」

 くす、と笑われて。
 でも、何か言い返す前に、キスされる。すこし。深く。


 二人でしかできない、時間の潰し方。
 ……っっっっ颯って。気障っていうか! なんかカッコよすぎて、しれっとされると、ついていけないだけど、オレ!!

 ゆっくりなキスが離れて、ふ、と瞳を開けると、至近距離で視線が絡む。


「そういえばさ……なーんか、お前の周りって、今更だけど、α多いな?」

 じっと見つめられて、からかうみたいな口調の言葉を、ん?なんて? と自分の中で、繰り返す。



しおりを挟む
感想 421

あなたにおすすめの小説

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~

一ノ瀬麻紀
BL
僕は、些細な喧嘩で事故にあい、恋人を失ってしまった。 後を追うことも許されない中、偶然女の子を助け僕もこの世を去った。 目を覚ますとそこは、ファンタジーの物語に出てくるような部屋だった。 気付いたら僕は、前世の記憶を持ったまま、双子の兄に転生していた。 街で迷子になった僕たちは、とある少年に助けられた。 僕は、初めて会ったのに、初めてではない不思議な感覚に包まれていた。 そこから交流が始まり、前世の恋人に思いを馳せつつも、少年に心惹かれていく自分に戸惑う。 それでも、前世では味わえなかった平和な日々に、幸せを感じていた。 けれど、その幸せは長くは続かなかった。 前世でオメガだった僕は、転生後の世界でも、オメガだと判明した。 そこから、僕の人生は大きく変化していく。 オメガという性に振り回されながらも、前を向いて懸命に人生を歩んでいく。転生後も、再会を信じる僕たちの物語。 ✤✤✤ ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。 11/23(土)19:30に完結しました。 番外編も追加しました。 第12回BL大賞 参加作品です。 よろしくお願いします。

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...