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第52話 好きって。
しおりを挟む昴とは。
ずっと一緒に居た。
オレが颯とバトルしてる間ずっと。中高六年間、ほぼ同じクラスだったし。部活も軟式テニス部で一緒。で、大学も学部一緒だから、一緒。
颯はサッカー部だったから、テニス部のコートからも見えてて、オレはガキんちょだったから、そこからも、なんかちょっかい出してて。
その横にずっと居たのが、昴。
……そりゃ納得いかないよねと思う。
「あのさあ、誠」
「ん?」
「お前、オレがαん時、好きだった?」
「んん? まあ。好きだったけど」
「オレがΩになったら? 好き、変わる?」
「……変わんねえけど?」
「昴も絶対一緒だから、変なこと言うなよな?」
「……ま、分かった」
頷いた誠に、ん、と笑って、二階の教室に上がる階段を上り始める。
「つかさ、オレをそういう風に見る奴、居ないと思うし」
「そう?」
誠は上っていた階段をぽん、と最後勢いをつけて上に立って、オレを振り返った。
「慧は、αん時から、なんか可愛かったけど?」
「げ」
とっさに漏れた一言に、誠は、可笑しそうに笑い出した。
「なんか、颯に負けるかー!って、頑張ってるとこ、面白くて、なんか可愛くて、よかったよね……ああ、そうか、颯は、そういうのが気に入ってたのかな?」
クスクス笑いながら、ドアを開けて、教室に入る。
「自分に必死で向かってくる奴、なんか可愛く見えるのも分かるね」
「分かる?…… ていうか、あの頃の颯が、オレを可愛く見てた雰囲気は、全くないけど」
「ははっ。でも、言ってたじゃん、αでも慧が良かったって」
「言ってたけど……」
席に二人で座って、ペンとノートを出して、まだ先生が来ないので、ちょっと机に肘をついて、誠を見つめた。
「……誠って、好きな子に、好きって言えるの?」
「当たり前じゃん。ていうか、女の子皆好きだけど」
「後ろから刺されないでね?」
言うと誠は苦笑いして、それから、ああ、と微笑む。
「颯に好きって言ってないの?」
「え、すご、何で分かるの??」
「……分かんない奴居たら変って位、誰でもわかる……」
誠も肘をついた状態で、オレを見つめてニヤニヤしながら、そう言う誠に、そう? と首を傾げてしまう。
「……オレ、まだ何もちゃんと言えてない。なんか、颯が言ってくれてる時、自分の中でずっと返事してるのに、口から出ないんだよね……」
「あらら。……意地張っちゃってる感じ?」
「意地?」
「負けたくないって頑張ってきたわけじゃん、ずっとさ。好きって言ったら、負けーみたいな?」
「……颯は、言ってくれてるから。負け、とか思ってはないんだけどなぁ」
んー……。ちょっと困るんだよな。誠みたいに、ほいほい言えたらいいのに。
「……ていうかさ。慧は、颯を好きなの?」
「……っ」
ぼっ。一気に熱い。
「――――……」
オレの顔をマジマジと見つめていた誠は、ははっ、と笑った。
「なんか、慧は言えてなくても大丈夫な気がする」
「え……え? そう?」
「うん。大丈夫きっと」
「……? でもちゃんと答えた方が、いいよね?」
「大丈夫、絶対」
何だかすごく自信をもって、そんな風に言われてしまい、大丈夫なのかな、とまた首を傾げたところで、教授が入ってきた。
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