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第50話 誠と。
しおりを挟む「じゃな」
食堂の前で皆と別れて、誠と次の教室に向かって歩き出した。
「なんか、面白いランチタイムだったよなー?」
「面白くないし」
ムクれてそう言うと、誠はクスクス笑い出した。
「オレは納得したけど。颯のあれで、お前らの結婚」
「……やっと?」
むむ、と言うと、やっと、と誠が笑う。
「まあでも分かれよ。ずーっとお前ら見てたオレ達から見たら、どう考えても信じられないし、どーやって一緒に居るのかも分かんなかったし」
「……まあ、分かるから、別に本気で怒ってないよ」
「それも知ってる」
クスクス笑う誠と、見つめ合って肩を竦める。
「でも、あれだなぁ」
「ん?」
「昴は、慧とずっとクラス一緒だったもんな」
「まあ、同じクラスになること、多かったね」
「納得いってなさそう」
「え、まだ?」
「うん。そんな気がする。もしかして、慧のこと、好きなのかなあ?」
「好きって?」
「恋愛で。……それはないか」
とんでもないこと、言ってるぞ、誠。
この人、ほんとに恋愛脳というか。なんでもそれに結びつけんの、やめて。
「そんなの昴に言わないでよ? 怒られるよ」
「そうかな? ……まあ自覚しても今更キツイから言わない方がいいか」
「そういうんじゃなくてさ。絶対違うもん」
「何で分かんの」
じっと見つめられて、えー?と見つめ返す。ふと、誠のつけてる青い石のピアスが、日に当たってキラキラして見えた。
「そのピアス、初めて見た」
「ん? ああ、青いやつ?」
いくつもついてるので、そんな確認。うん、と頷くと。
「昨日会った子にもらった。可愛いよね」
「うん、綺麗。昨日会った子……恋人、じゃなくて?」
「うん、まだ違う」
「今恋人居るっけ?」
「居ないよ」
ああ、遊び相手は何人か、かな。
まあいいけど。って何の話だっけ。
「あ、そうだ。昴は違うよ。だって、色々付き合ってたし」
「だからそれはさ、慧がαだったからで。さっき、颯だって言ってたじゃん、αのままなら諦めたって。……つうか、何それって感じ。あいつ、そう言う感じなんだなって思っちゃった」
「何が?」
「恋愛とか、興味無さそうだったじゃん。モテるし、恋人の噂は流れてきてたけど、熱くなったりしなそうっていうか、颯が好きになるってより相手が熱上げてる感じに見えたし。オレ正直、こんな感じの奴、何でモテるんだろ。顔か? それかベッドですごいとか? って、思ってた」
はははーと笑って、誠はオレを見る。
「だから、さっきいくつか話した颯の言葉さ。ちょっと感動。慧に対してはあれなんだ、と思ったら、なんかお前が、Ωになっても嫌じゃないーとかすげーこと言ってんのも、なんか意味分かったし」
「…………」
あんな僅かな言葉から、そこまで言う誠は、やっぱりなんかすごいなぁと思いつつ。何と答えていいのか良く分からなくて、誠をじっと見ていると。
誠は、ふ、と笑った。
「なんか番んなってから、慧はそのことでめっちゃ話しかけられてたじゃん? 色々手続きの書類書いてたり、事務課行ったり忙しそうで、あんまりゆっくり話せなかったしさ、なんかオレらも、変性とかのことは触れない方がいいのかなと思って、あんまり詳しくは聞いてなかったけど……」
「え、そうなの?」
「そうだよ、これでも、オレら、慧にどう接するか悩んでたからね」
「そうなの?」
「落ち込んでたら困るじゃん?」
「そうなんだ……」
記憶では、結構、イジられたような。あ、そっか、颯との結婚の話をイジられてたのか。たしかに、Ωのこととか、色々詳しいことは、全然聞かれてなかった気がする。そういえば、今日初めてΩの話ちゃんとしたような気もするような……。
そうだったのか、と感謝していると。
「まあでも、なんか、引っ越しも済ませたみたいだし、結婚生活も、颯があんな感じみたいだし。これから詳しく掘り返すことにしよっと」
「え、それは大丈夫」
やめて、恥ずかしいから。
感謝も吹き飛んで、そう思って即答すると、ははっと、誠が笑った。
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